第2章: モンスターの処理は簡単ではない
初めまして。
アクションと冒険を中心とした物語です。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
魔物の解析――一見すると簡単な作業に思える。
だが実際は、かなりの知識が必要だ。
動物とは違う。
皮を剥ぎ、装備や衣服に加工する――そんな単純な話ではない。
狩人は、自分で処理を行うこともできる。
そうすれば、ギルドに支払う加工費を節約できるからだ。
「さて……変異イノシシか」
「デカくて力が強いだけだろ。これくらいなら、俺一人で十分だ」
――そう考える狩人は多い。
魔物を丸ごとギルドに持ち込むと、処理に時間がかかる。
それに、加工を担当する職人――なめし師の取り分も引かれる。
肉、骨、牙。
それらは装備の素材にもなり、ギルド内で売買もされる。
ギルドの中には、狩人が「狩ることだけ」に集中できるよう、
ひとつの生態系が出来上がっている。
――便利すぎる、ということは。
当然、裏がある。
「じゃあ……まずは皮の厚さを見てみるか」
短剣を当てる。
「――チッ!」
「……冗談だろ」
刃は、ほとんど通らなかった。
魔物の解析や加工ができる狩人は、実は少ない。
多くは、その方法を知らない。
「ハハハハ!」
「やっぱり素人だな、ロイ」
嘲笑したのは、ギルドのなめし師――ハイグだった。
狩人は討伐と狩りで生計を立てている。
だからこそ、こうした作業を学ぼうとしない者も多い。
結果として、なめし師は必ず報酬を得る。
「短剣一本で魔物を処理しようなんてな」
「どれだけ厄介な作業か、分かってない証拠だ」
「うるさいな、ハイグ!」
「死んでるのに、皮がさらに硬くなるなんて知るかよ!」
「意味わからなすぎだろ!」
ハイグは、ロイの言葉を気にも留めず、
カウンターの奥で道具を探し続けていた。
やがて、一本の大きな、光沢のある包丁を手に取る。
そして――
魔物の側面に、立方体の形で正確な切り込みを入れた。
「ほら、見ろ」
「少し皮を傷つけちまったな。だが、短剣じゃ絶対に貫通しない」
指五本分ほどの皮と脂肪の塊。
切り口は驚くほど滑らかで、白い脂が鈍く光っていた。
「……すげえ」
「理解したなら、それでいい」
「俺は仕事が山積みだ。次の依頼でも探してこい」
「報酬は、後で渡す」
ロイはカウンター前のベンチに腰を下ろし、
これから始まる本当の作業を、黙って見つめた。
ハイグは、処理を本格的に始める。
全長およそ三メートル。
三十センチはある赤い牙。
皮膚は赤く、毛は黒い。
腹部は毛が少なく、尻尾には暗い深紅の毛が生えている。
最初の立方体の切り口が示していた。
この皮は、斬撃にも刺突にも強い。
――頭部を除いては。
脳を貫く一撃さえ入れば、すべては終わる。
「いい一撃だ、坊主」
「不意を突いたな?」
「……だが、脚がやられてるな」
「崖から落としたんだ」
「そのまま頭に短剣を突き立てた」
「まだ脚が痛い……」
長い時間をかけて、
ようやく加工は終わった。
「ほら」
「レッドボアの牙が二本」
「紅皮、それと針毛だ」
「全部で、金貨五枚と銀貨三枚だ」
「よし!」
「これで、まともな剣が買える――」
「……って、ちょっと待て」
「俺の手間賃、忘れてないか?」
「当然だろ」
「なめし師は、必ず取り分をもらう」
「ギルドの規則だ」
なめし師はギルドに属してはいるが、
加工と買取は、あくまで個人事業だ。
「……ちょっと待――」
――パァン!
「良い一日をな」
「……は?」
「金貨四枚だけかよ!」
「あのジジイ……絶対いつか覚えてろ」
自分で加工できるようになったら、
あいつのカモは一人減る――そう心に誓いながら。
読んでいただきありがとうございます。
次話も近いうちに投稿予定です。
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