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怖い部屋 ー見慣れた空間に潜む恐怖と謎の短編集ー  作者: 深水 紗夜


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22/29

402号室

チェックインカウンターで鍵を受け取った時、フロント係の女性は一瞬、目を伏せた。

「402号室でございます。何かございましたら、遠慮なくお呼びください」

彼女の声には、妙な含みがあった。

エレベーターで4階に上がる。廊下は薄暗く、古い絨毯が足音を吸い込む。402、403、404…部屋番号を確認しながら進むと、ふと気づいた。401号室がない。400の次が、いきなり402なのだ。

部屋に入ると、清潔ではあるが、どこか湿った空気が漂っていた。窓の外は隣のビルの壁。光はほとんど入らない。

シャワーを浴びてベッドに横になったのは、午後11時過ぎだった。

コン、コン。

壁を叩く音がした。右側の壁、つまり403号室の方からだ。隣人が何かをぶつけたのだろう。気にせず目を閉じる。

コン、コン、コン。

今度は3回。リズミカルに。まるで返事を求めているような。

イライラしながら起き上がり、壁を一度、強く叩き返した。

「静かにしてください」

その瞬間、部屋の空気が変わった。

コンコンコンコンコンコン――

狂ったように、壁を叩く音が連続する。しかも、音源が移動している。右の壁から、奥の壁へ、そして左の壁へ。まるで何かが部屋の周りを這い回っているように。

「やめろ!」

叫んだ瞬間、すべての音が止まった。

静寂。耳鳴りがするほどの静寂。

震える手でスマホを掴み、フロントに電話をかけようとした時、ふと気づいた。

左側の壁。そこは廊下に面しているはずだ。隣の部屋などない。

では、あの叩く音は――

ゆっくりと左の壁に近づく。耳を当てる。

壁の向こうから、呼吸音が聞こえた。

荒い、湿った呼吸。それが、壁一枚隔てた向こうで、じっとこちらの様子を窺っている。

「誰が、いるんですか」

声を絞り出した。

返ってきたのは、呼吸音ではなく、かすれた囁き声だった。

「401号室には、誰も入れない」

翌朝、フロントで事情を説明すると、あの女性係員は困惑した表情を浮かべた。

「402号室の左隣は、非常階段でございますが」

「じゃあ、401号室は?」

「そのような部屋は…」彼女は言葉を濁した。「この階には、ございません」

チェックアウトして外に出た時、ふと振り返って4階を見上げた。

窓が並んでいる。一つ、二つ、三つ…数えていくと、明らかに窓が一つ、足りない。

その黒く塗りつぶされたような空白の向こうで、今も誰かが、壁を叩き続けているのかもしれない。

次の客が来るのを、じっと待ちながら。

読んでいただき、本当にありがとうございます。

もしこの物語が心に残ったなら、どうかブックマークや高評価をお願いします。

感想ひとことでもいただけたら嬉しいです。

あなたの声は、この恐怖を次へと繋ぐ鍵になります。

そして覚えていてくださいーー

あなたが今いるその部屋も、いつか物語の舞台になるかもしれないことを。

気づかないうちに、誰かがすでにあなたの部屋に潜んでいるかもしれません。


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