托卵をした女の情夫の話
あれはテレビで托卵のドラマが流れたぐらいの時・・・
「そういえば、昔、人妻と付き合っていた時に子供ができてね。女は旦那の子として育てるよと言ってくれたのですよ。アハハハハ」
「ほお、モテるね・・・」
「「ハハハハハ・・」」
協力会社の職人さんたちの休憩中の一コマだ。
托卵の話をしているのは40代半ばのおっさん。ここで田中さんとしよう。田中さんは小太りで頭が少し剥げている。派遣かバイトかは分からない。
初めて、托卵をした人の話を聞いた。この場合は托卵した女の男の方だ。
このおっさん。
モテアピールがすごい。
「今、おっさんがモテるんですよ。女子は父性を求めている。ほら、これをご覧ください」
スマホを見せられた。
スナックの女性の動画で、『キャ、キャ田中さんヤダ』と言っている。
「店に『来い。来い』とうるさいんですよ」
そりゃ、うるさいだろう。
俺は山田、さえないサラリーマンだ。
俺の中では、スマホにスナックやキャバクラの女性を撮る奴は微妙だ。
既に数人知っている。皆、正直モテないだろうなという感じだ。
そもそもモテる奴はモテアピールしないだろうな。
しかし、この田中は少し違った。
愛想は良いのだ。
誰にも話しかける。
もしかして、モテるのでは?と思わせるが・・・・
「オラ!田中、ボケボケしてるんじゃねえ!」
「おっさん。無駄口はいいからよぉ仕事をしてくれよ」
「ヒィ、すみません」
あの托卵の話をしてから、田中さんはパワハラを受けるようになった。
無視?暴言、さすがに見逃せないと思ったら、田中さんは辞めた。
「おうよ。新しい名簿だ」
「ありがとうございます。田中さんは退職と・・理由は?」
「あれな。豆泥棒だ。そんな奴は雇うことは出来ないからやめさせた」
話を聞くと、この会社、長期で全国を回るから、奥さんが寝取られたら・・・と皆、自分の事として聞いたそうだ。
「兄ちゃんも、結婚したらわかるさ・・」
で親方は会話は打ち切った。
田中さんの話は嘘か本当かは分からない。
しかし、テレビで托卵のドラマなんて放送したから、田中さんは話しても良いものだと感じたのだろうな。
やっぱり、テレビやSNSに影響をされてはいけないと思う俺がいた。
最後までお読みいただき有難うございました。