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第7話 白黒彼女はゲームをしたい

茉白さんからゲームのお誘いがきた。

断る理由もあるわけもなくもちろん了承する。


すると喜んでいる黒猫のスタンプがすぐにま送られてきた。こういう時なんて返すべきなのだろうかと毎回考える。


スルーかあるいはこちらもスタンプかなにか出返すべきか。迷ったあげく喜んでるおおかわ(最近流行りのなんかおおきくてかわいそうなやつ)スタンプを返しておいた。既読スルーされた。なるほど、次からは僕もそうしようと思った。


どうせならボイスチャットしながらしようということになり、ゲームを起動してグループを作成する。ゲーム機でもフレンド登録をしてグループへ招待した。ヘッドフォンとマイクを着けて接続を確認する。


「あー、てすてす。聞こえてる?」


「ふふっ、聞こえてるよー」


可愛らしい笑い声がヘッドフォンを通じて聞こえてくる。ヘッドフォンによって耳に直接聞こえてくる声は、まるで耳元で囁かれてるようで少しドキッとする。


「ん?もしかして聞こえてない?もしもーし」


「だ、大丈夫!聞こえてる!」


僕は慌てて返事をした。このドキドキが向こうに伝わらないことを祈りたい。


僕たちがこれからやるゲームは大ヒットゲーム『キメラハンター』、通称『キメハン』の最新作『キメラハンター ワイルズ』。


ゲームシステムは簡単で、キメラモンスターをハント、つまり狩ればクリアだ。ワイルズと名がつくように、今作は野生のキメラモンスターを狩っていくゲームとなっている。野生のキメラモンスターってなんだよと思うかもしれないが、そういうものだ。諦めてくれ。


まず初めにキャラクリエイトから始まる。言わば自分のアバター、分身を作るということだ。こだわりのない人は数分で、こだわりのある人は数時間かかる。


僕は既に出来上がっているプリセットを少し弄るだけで完成したが、茉白さんはそうではなかった。

待つこと1時間ちょっと。

完成したキャラクターは茉白さんにそっくりだった。


「え、すご!めちゃくちゃ似てる!」


思わず感嘆の声を上げる。ここまで本人に似せられるなんてすごすぎる。

僕に褒められて茉白さんは少し恥ずかしそうにしていた。


「えへへ。結構妥協したんだけどね、そう言われると嬉しい。ありがと」


とりあえず慣れようということで、簡単な低級キメラモンスターを数体倒して、操作方法の確認を行った。


その結果、茉白さんは近接武器の太刀を扱うことにした。ちなみに僕は遠距離から攻撃出来る弓だ。

中級のキメラモンスター討伐のクエストを受けていざ出陣する。

それぞれ手分けしてモンスターを探すことに。


「あ、見つけたよー。エリア11の研究所にいた」


茉白さんが先に見つけたようだ。僕は言われた地点へと急行する。

茉白さんと合流してから狩猟を開始した。


茉白さんが「うりゃぁぁ」と声を出しながら攻撃していき、敵の攻撃を食らう度に「いたっ!」と声を上げる。

学校での茉白さんとのギャップに思わず笑ってしまった。


「ちょっと何笑ってんの?笑う暇あるなら攻撃してよー」


「ごめんごめん。いや、茉白さんも攻撃食らったら『いたっ!』とか言うんだと思って」


「なっ……べ、別にいいでしょ!キャラクターも私に似てるから私が攻撃されてるようなものだから!」


「すごい理論でてきたな!まぁ親しみを感じれて嬉しいよ」


ゲームをする人なら誰もが攻撃を食らう度に「いたっ!」と言ってしまう。そんなよくあることを茉白さんもすることで、他の人と何も変わらないんだなと改めて感じた。


この後も寝るまでゲームは続いた。茉白さんの「今の避けたでしょ!」とか「あーもうっ!」などの声を聞く度に笑ってしまい怒られた。


学校でのお淑やかな清楚な女の子とは思えない口の悪さだ。でも怒られたけど、とても心地のいい楽しい時間を過ごすことが出来た。同じ趣味、好きなことを共有できるのはこんなにも幸せなことなんだと身に染みた。


そして翌日、「いつまで寝てるの!早く起きなさい!」と母さんに起こされ、眠気まなこを擦りながら起床しリビングに向かうと当たり前のように茉白さんがご飯を食べていた。


「おはよう灰原くん」


僕はまた頬をつねる。結果は変わらず痛みだけが残った。


「えーと、なんでいるの?」


僕の問いかけに茉白さんは優しく微笑む。


「いつでも来ていいって言われてるからね。ほら、早くご飯食べて出かけよ?」


そのとき僕は悟った。

あ、これ毎日来るやつだと。


「どうしたの?ご飯冷めちゃうよ?」


茉白さんは不思議そうに僕を見つめる。


「えーと、ちなみに出かけるのは選択肢あります?」

「当たり前じゃない。無理強いなんてしないよ、ひどいなー。それとも……行きたくない?」


急に茉白さんはしゅんと肩をすぼめ寂しそうな雰囲気を醸し出した。

キッチンからの母さんの視線も鋭さを増す。


「いや、そういうわけじゃないけど」


とりあえず当たり障りのないありふれた答えをいう。

僕の答えが不服なのか、不満げに茉白さんは僕に問う。


「じゃあどっち?白黒つけよ?はいかYESで答えて!321はいっ」


「それってどっちも同じ意味じゃ…」


「返事は?」


「はいっ!」


「うん、よろしい」


無理強いしないとはなんだったんだ。

はなから白黒つけるより白白だったじゃないか。


僕の抗議の視線をものともせず、美味しそうに茉白さんはご飯を食べている。

僕の普通の生活は普通ではなくなりそうな予感がした。

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