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第4話 白黒彼女はゲームを買いたい

玄関の扉を開けた先にいたのはら不機嫌そうな茉白さんだった。


「えーと、Youは何しに我が家へ?」


「なにそれ。テレビ番組かなにか?あー……もしかして寝てた?起こしたのならごめんね。居留守は許さないけど」


僕の方こそ寝ぼけて変な言い方して申し訳ない気持ちになる。一見優しくされたと勘違いしそうになったが、多分違う。


これは『こいつ何言ってんの?寝ぼけてんの?』という意味が込められている。

そして居留守してる件は許されてないようだ。あまり怒らせないようにしないと。


「ところでさ、今時間ある?ちょっと付き合って欲しくてさ」


「あー、えーと…」


僕は少し考える。暇と言えば暇だが、忙しいと言えば忙しい。特にやることは無いけど忙しいってやつだ。どうしようか悩ましい。


「どっちなの?はやく白黒つけてよ」


突然彼女がスっと近づいてきて上目遣いで見てくる。いつもと違って不機嫌そうな顔をしているがそんな表情ですら可愛く見えるのはずるい。


僕だって思春期の男の子だ。美少女の急接近はドキドキするに決まっている。

そんな男心なんて何も知らず、茉白さんは僕の顔をまじまじと見て話し出す。


「うん、その顔は暇だね。じゃあ行こっか」


結局茉白さんが白黒つけた。


茉白さんに連れられて出かけたのはゲームなども取り扱うレンタルビデオ店だ。

レンタルできるのはビデオだけでなくマンガや、最近ではゲーム機もレンタルしているらしい。すごい時代になったものだ。


「何を買いにきたの?」


「そんなのゲームに決まってるでしょ!見て見てこれ、第二次世界大戦をモチーフにしたゲームだよ!それにこっちはキメハンの新作じゃん!」


目をキラキラさせながら熱く語る茉白さん。

クラスの連中がみたら驚くこと間違いなしだ。


「ふふっ、ゲーム好きなんだね」


僕がそう言うと彼女は今の自分の状態に気がついたのか少し恥ずかしそうに顔を赤くする。


「わ、悪い!?好きなんだから別にいいでしょ!」


ここだけ切り取って聞けばツンデレ感がある。まるでギャルゲーの告白のセリフみたいだ。まぁ現実はそんな空気なんて微塵もないけど。


「いや、別に悪くないよ。キメハン面白いよな。僕も前作結構やり込んだし買おうかな」


僕はキメハンのソフトケースを1つ手に取った。裏面を見るとゲームの紹介がのっていて、見るだけでハンターとしての血が騒ぐ。


(こういうの見ると欲しくなるんだよなぁ。この際買うか。高校生のお小遣いとしては痛い出費だが必要経費だ、うんうん。)


買う決心をしたとき、隣からスっと茉白さんも手を伸ばし1つ手に取った。


「私もこれ買うからさ、よかったら一緒に進めない?私も前作結構好きだったんだ」


そういう彼女は少し恥ずかしそうにモジモジしている。普段の(といっても僕と2人の時は清楚系キャラではないが)茉白さんらしくなくない。


(そんなにゲームを僕に語ったのが恥ずかしかったのか?)


考えてもすぐに答えは出ない。

僕としては協力すればスムーズに素材やクエストを進めることができるしありがたい。

答えはもちろん決まっている。


「いいよ。むしろ助かる」


僕の答えを聞いた彼女は「やった!」といいながら小さくガッツポーズをしていた。

そんな姿ですら絵になるなんて美少女はやっぱりすごい。


必要な周辺機器を購入して帰路につく。

茉白さんはゲームソフトだけでなく、ゲーム機本体も購入してかなりの金額を使っていたが大丈夫だろうか。少し心配になり聞いてみる。


「そんなに一度にお金使って大丈夫か?僕がそんなに使ったら家に帰ると母さんに絶対怒られるよ」


間違いなく怒られる。『無駄遣いしないの!ゲームする暇あるなら勉強しなさい!』って。

僕の思いとは裏腹に、彼女はふふっと笑い出した。


「大丈夫だよ、怒る人いないし。私一人暮らしだからさ。両親は仕事で海外にいるから」


そういう彼女は少し寂しそうな横顔をしていた。

だいたい予想はついていた。今日の買い物だって、生活必需品が多すぎた。親がいる家庭ならありえないだろう。

僕の視線に気づいたのか、茉白さんは僕を見て笑う。


「ふふっ、なに気を使った顔してんの。夜ご飯食べたらゲームしよ?……ってそうだ!連絡先まだ交換してなかったね」


そういうと彼女はスマホを取り出してLINEのQRコードを僕に差し出してくる。

僕もスマホを取りだしてQRコードを読み取り友達に追加した。


「これでいつでも連絡とれるね!私と連絡先交換できたことを光栄に思いなさいよ?まだクラスの誰とも交換してないんだから」


「クラスの誰とも?クラスのグループに追加されてなかったか?」


僕はグループLINEのメンバーから『茉白』という名前のメンバーを見つけて彼女に見せる。それは白い子犬をプロフィール画像にしていた。


「それは外用のやつだよ。今交換したのはプライベート用。ほら、名前とプロフィール画像違うでしょ?」


たしかに確認すると名前は『黒奈』、プロフィール画像は黒猫になっている。


「ずっとお淑やかな女の子をするのも疲れるのよ。だから知ってる人はそっちにしてるの。あんたの前だと気を使わなくてもいいし」


「僕の前でもお淑やかでいいんだぞ?」


軽口を叩いたらすごい睨まれた。

まぁ睨む顔も美少女だったら絵になる。

しばらくすると家に着いた。


「準備できたらLINEするから。それじゃあまたね」


そういって彼女と別れ、別々の家に入っていくのだった。





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