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第2話 白黒彼女は休日も白黒つけたい

「ぐっすり眠れたよ…じゃなくてなんでいるの!?」


あまりにもスムーズな朝の会話すぎて思わずぐっすり眠れたと答えてしまったことが恥ずかしい。キッチンに立つ母さんの後ろ姿はやけに上機嫌だし、状況が全く読めない。


(もしかしてまだ夢の中なのか?まったく変な夢を見たな。さぁ、目覚めの時だ僕よ。)


夢から覚める方法をご存知だろうか。それは頬をつねることである。もちろん僕も目を瞑り頬をつねった。


「痛てて…」


目を開けるとそこは――――茉白黒奈がいる光景、何も変わっていなかった。

もう一度試してみるが結果は変わらない。

ただ頬が赤くなり痛いだけだった。


「ねぇ、灰原くんはさっきから何をしてるの?」


不思議そうな顔でこちらを見つめる茉白さん。もちろん朝食を食べているから左手にはお茶碗、右手には箸を持っている。


「夢から覚める方法を試してた。でも何も変わらなかったよ」


「ふふっ。朝から笑わかさないでよ~。現実だよ灰原くん」


茉白さんは素敵な笑顔を僕に向ける。まるで天使に出会ったかのような気持ち。ここはエデンの園だろうかと錯覚してしまう。


本当に昨日ニンニクマシマシのガーリックピザを食べてた人だろうか。

昨日の出来事がむしろ夢だったのでは。


(やばい、確かめたい…)


寝起きだから判断が鈍っていた僕は禁断の質問をした。


「そういえば昨日のピザは――」


「ゴホンッ」


言い終わる前にすごい睨まれた。彼女の背後に般若の仮面を被った死神が幻視できるほど怒っている。


「ピザ?あんたまたニンニクマシマシのガーリックピザ食べたの?茉白ちゃん、ニンニク臭かったら言ってね。千尋、あなたも朝ごはん食べちゃいなさい」


母さんのひとことでなんとか場の空気は丸く収まった。犠牲者は僕一人だ。


(母さん、その人も同じやつ食べてるんだけどなぁ)


席に着くと、母さんがご飯とお味噌汁を用意してくれた。今日の献立は、鮭の塩焼き、卵焼き、ほうれん草のおひたしだ。よくある朝食のメニュー。でもこういうのでいいと思えるメニューだ。


鮭は身がふっくらとしていて適度な塩味がご飯をすすめる。卵焼きは甘く仕上がっていて万人受けする味だ。箸休めにおひたしを食べると旨みが濃縮されているのがわかる。そしてお味噌汁。味噌だけでなくしっかり出汁の味も感じられておいしい。


お味噌汁を飲んでふぅと一息ついていると目の前の席に座る女の子、茉白さんから話しかけられた。


「休日の朝からごめんね灰原くん。実は少し付き合って欲しいことがあるの。私まだ引っ越してきて日が浅いから色々買いたいものとかあって、もし良かったらお店とか案内してもらいたいなって思って。ダメかな?」


「えーと、今日は…」


僕は少し言い淀む。

僕は基本的に休日は家でゆっくりゲームをしたりして過ごしたい派の人間だ。それに美少女転校生と休日に街中を歩いていたら変な噂を立てられる可能性もある。それはお互い困ることになりそうだ。


(茉白さんには悪いけどここは丁重にお断りさせてもらおうか)


そう思い断ろうと思ったら、茉白さんの援軍が現れた。


「もちろん大丈夫よ茉白ちゃん!千尋はゲームしかすることないから。好きなだけ使ってあげて」


それは母さんだ。

やけに茉白さんに入れ込むあたり何か勘違いをしていないだろうか。

茉白さんは嬉しそうに笑った。


「ありがとうございます!灰原くん、今日はよろしくお願いします」


急にかしこまって頭を下げるから僕もかしこまってしまい頭を下げた。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


それから3人で世間話をしつつ朝食を食べた。

どうやら母さんは茉白さんが隣に引っ越してきていたのには気づいてたみたいだが、自分の息子のクラスメイトであるとは思っていなかったようだ。そしてまさか息子を訪ねてくるとも思っていなかったみたいだ。

そこで色々と話しているうちに、朝食を食べる流れになったらしい。


母さんはテキパキと食べ終わった食器を片付けていく。茉白さんも手伝おうとしたが、「茉白ちゃんはお客さんだからいいのよ~」と母さんに断られていた。

僕はもちろん手伝わされたけどね。


「それじゃあ灰原くん、そろそろ出かけよっか」


茉白さんに言われ僕も出かける準備をする。

すると母さんが肘で小突いてきて小声で話しかけてきた。


「頑張んなさいよ千尋。あんたを尋ねてくる子なんて凛ちゃん以外いなかったのに。やるようになったわね~」


案の定なんか勘違いしてるっぽい。

これは面倒なことになりそうだなぁ。


「あ、ちなみに凛ちゃんと茉白ちゃんどっち狙いなの?まさか……両方!?バレないようにしなさいよ~」


母さんはそれだけ告げるとささっとキッチンへと帰っていった。


(女性が言っていいセリフじゃないし、母親が息子にいうセリフでもないだろ)


準備を済ませた僕は茉白さんと近くのショッピングモールへと向かうことにした。


家具から電化製品、服から雑貨まで大抵のものはこのショッピングモールで手に入れることが出来る。

フロアを歩いていると茉白さんが話しかけてきた。


「楽しいお母さんだね。いつでも来ていいって言われちゃった」


「僕としては恥ずかしいけどね」


なぜ友達とかの前だと母親とか父親とかが恥ずかしく感じてしまうのだろうか。人類の永遠の謎だと思う。


改めて隣を歩く茉白さんをチラリと見る。


(何を着ても様になるなぁ。似合わない服とか無さそう。素直にずるい。)


彼女はフィット感のある白いトップスに、淡い緑色のフレアスカートを着ていて清楚な服装をしている。


本当に昨日ニンニクマシマシのガーリックピザを食べた人と同一人物なのか疑いたくなるレベルで別人だ。


一方僕はラフなパーカーにジーンズという彼女の隣を歩くには不釣り合いな格好だ。

なんだか少し恥ずかしくなってくる。


しばらく歩いていると目的のお店にたどり着いた。雑貨屋さんで色々と買いたいものがあるらしい。


「これとこれならどっちがいいと思う?」


彼女が手にしているのは青い花柄の入った食器と赤い花柄の入った食器だ。


「あー、どっちもいいと思うよ」


僕がそう答えると茉白さんの顔がグイッと近づいてきた。


「ねーえ!どっちがいいと思うか聞いてるの!さぁ、どっち?白黒はっきりしなよ」


すごいプレッシャーだ。どっちか決めるまで逃がさないって圧を感じる。だが僕は違うことで焦っていた。


(この人自分が美少女だって気づいていないのか?僕も男だから普通にドキドキするわ。距離感バグってるだろ。)


「えーと、青い方!」


僕が咄嗟にそう答えると彼女は満足気に頷いた。


「ありがと、じゃあ赤い方にするね!」


「いや、そこは青い方じゃないんかい」


なんか勢いで思わずツッコんでしまった。

彼女はふふっと笑いながらもこう言った。


「だって私が使うものだし当たり前じゃん」


僕は今完全に理解した。

彼女の白黒は白多めということに。

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