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女神さまの他人事

菜月は、その場に尻もちを突くようにして座り天井を見上げた。

「大丈夫ですか?」

サラスが心配そうに菜月の顔を除きこんだ。

大丈夫かと聞かれれば、大丈夫ではない。と思う。でも、なぜか平気だ。

「それで、ここは?」

「ここは、『ラデイウム』。あなたの世界、次元宇宙とは別の世界――


サラスは、窓辺に凭れるようにして説明を始めた。

菜月には、それを知る権利がある、と。

何よりもこの理不尽に対して時間が必要だと感じたからだ。

掻い摘んで言えばと前置きをしてから…

世界には幾つかの分類が存在している。

ひとつの世界には、13の平行宇宙が存在している。それは、時の分岐点によるパラレルワールド。

派生のタイミングにより、13に満たない宇宙で構成されることもある

それとは別に、ひとつの世界には隣接するように関わり合う千の世界、異界が存在する。

正直なところその数は把握できていない。

その異界の接点に『ときの狭間』が存在し、神々はそこに存在している。

主に管理する世界の神が次元の扉を管理していて、この神の許諾なしに世界を行き来することはできない。ただ仲の良い神同士は時折そこで語り合っていたりすることがあるし、接点が重なり合うことで複数の神が管理する世界も存在している。

ラデイウムは、菜月の住んでいた世界と設置する異界であり、女神サラスの管轄する異世界だ。

菜月のイメージに合わせると、現代文明が崩壊した後の未来的な時間枠。科学が認知されていない剣と魔法の世界ではあるが、ダンジョンと呼ばれる場所には崩壊した文明の痕跡をみることもある。


――という事なんだけど」

「うん、ありがとう」

菜月は、そのまま大の字になって寝ころんだ。

「簡単に言えば」

「うん」

「あなたは事故に合う予定もなかった」

「うん」

「ポポを助けようとして巻き込まれたお人好し」

「うん」

「ポポが異界召喚に巻き込まれて飛ばされた結果だから、イレギュラーもイレギュラー」

「うん」

「でも、そのおかげでポポはケガしなかったから」

「うん…(あれ)」

菜月は勢いよく上半身を起こしサラスをみた。

「どうしたの?」

「ケガって言った」

「はい」

「つまり…」

「あ、気付いちゃいました」

セレスは、肩をすくめてクスッと笑った。

「それ巻き込まれに行って失敗したパターン?」

「そうでもないですけど」

「えっ」

「私が悲しい思いをしなくて済みましたから」

「…慰めになっていない」

「過ぎたときは戻らないので諦めてください」

セレスは、菜月の横に、およそ女神さまらしからぬ感じで寝ころんだ。

同じ天井を見詰めながら、「ありがとうございます。助けてくださって」と。

「まぁ意味があるならいいですけど」

「意味は…あなたが見出してください」

「…神さまなのに他人事」

「そうでもないですよ。まずあなたに『ラデイウム』での肉体を与えます。そこに魂を融合させます」

「うん」

「これ凄く異例で、私疲れるんです」

「えっ?」

「少し神通力がラデイウムに流れません」

サラスは天井を見詰めながらクスクスと笑った。

きっと大変なことを言っている。それなのに何処か楽しそうだ。

「それどれくらい?」

「1年ほどは自分たちの力で頑張ってもらうほどに」

「わたしが?」

「世界が」

特別なことではないですよ…と言うかのようにサラスは呟く。

神通力の内、神聖力と言われる守護の力が潤沢に回らないという。

その間に魔力というものが、魔族や魔物を生み出すので世界には少し混乱が生じるだけらしい。

「それ、私が何かさせられるの?」

「ううん。あなたは、ポポを助けてくれて自分の世界に戻れないだけ、だから、それまでの間こっちで過ごしてもらおうかな?と」

「…本当に役目なし?」

「はい」

「ただの事故?」

「はい」

「でもすぐに戻れない?」

「はい。あなたの体はいわゆる魂の器としては修復中ですね」

「それよく解らないんだけど」

「そうですね」

サラスは、そうでしょうねという風に何度か頷きながら「簡単に言うと」と話し出した。


世界には命の器が存在している、と。

器は、その世界の粒子で構成され、魄という魂が宿る。

そこに魂が結合することで命は稼働する。

菜月の事故は軽微なものだったけどポポを抱いていたことで魄が傷つき、魂を繋ぎ留めておくことができなくなったらしい。その為、肉体は意識不明な状態で治療中。原因不明でちょっと大変な状態。

その魄が治るまでの自然治癒な時間、魂は、世界に留まると、いわゆる怪物化するために一時的にセレスが保護してくれた、というのが真相のようだ。

「で、ここからが本題。生きるのに必要な能力をもって転生するか、ここ狭間に留まるか」

「何が違うの?」

「命の危険と暇」

「どっちも選択したくないんだけど」

「降りるなら、特別に能力をつけれれるだけつけるという大判振る舞いで」

セレスはニヤリとしたり顔をみせた。

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