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やんちゃな猫を助けたら、巻き込まれて異世界に来たけど、帰る条件が"恋"ってどういうことですか!?(まきこい!)  作者: 麒麟
第2章 勇者は召喚後がいそがしい

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身を守るは、攻めることから…

鍛錬場に響く、乾いた木の音。

菜月の腕から木剣がすっぽ抜けて、地面を跳ねた。

「カンッ!」と乾いた音を立てて、ジーンの足元まで転がってくる。

シーナの動きから、さっきまでの余裕が消えている。

一瞬でも気を抜けば、菜月の攻撃が容赦なく彼女を捉えるだろう。

正直、狩人でもしていた?というレベルに動きがよい。

ジーンは、猫のふりをして欠伸をするポポの頭をなでながら二人の様子を眺めていた。

魔法を使わせるよりも安心してみていられる。

問題はこの後だ。付与魔法が使えるとしたら…

生活魔法で確認できる範囲では、聖と邪まで使いこなしている。

全属性の魔法使いは珍しいだけではなく、真逆に左右する聖と邪をマナとして共存させていることが特に頭痛のタネになっていた。

いままでの常識が通じていない。どうすればいいのだろうか。

とそこまで考えて、ジーンは考えるのを再び止めた。無駄という言葉がむなしく思えたからだ。

これもクリエイトのスキルの一種かもしれない。

どこまで思料深いイメージを持てば確固たる魔法として錬成できるのだろうか。

少なくともジーンの常識の範疇にはいない。


「もう痛いんですけど」

菜月は両手をブラブラと振りながらシーナに言う。

「組み手を言い出したのはあなたでしょう」

「だからって、加減なさすぎ」

(加減なんて……したら、こっちが危ないでしょ)

「何よ」

「まず、“握る”の意味を教え直すべきね」

ジーンは呆れを通り越して、半ば感心したように腕を組んだ。

どの武器を使っても構わない。武具を使う基本は握りにある。

武器は手の延長、手は心の延長に過ぎない。そのことを理解さえしていればおのずから武器を自在に操ることができる。それこそ武器を選ばずとも。もっとも得手不得手はついて回るが…

最初、ジーンは、夏樹が短剣を選んだことに戸惑っていた。

普通、相手が長剣を選べば、自分も同じ長剣を選ぶものだろう。

だからと言って否定したり、考え直したりを促す気はない。

ナイフやダガーを含む剣の分類の中でも、中間の長さに位置する短剣。

それは、女子供でも扱いやすく、なおかつ殺傷力を失わない――そんなバランスの取れた武器だった。

ただ女性剣士であっても短剣を主要な武器にするものは少ない。長剣が使えなくなったときの予備に使われることがほとんどだ。

王族騎士団に至っては女であっても両手剣を使うのが普通だった。

それを知らないにしても、菜月の身のこなしからすれば、短剣と何かだと思ったのだが…

「でも、いまの――けっこうそれっぽかったでしょ!?」

「あ、うん…って、えっ?」

「何?」

「それぽくって?」

「うん。それぽかったでしょう」

菜月は新しい木剣を手に、再び構えてみせた。

見た目だけなら、まさに絵になる女剣士。正直、隙という隙が見当たらない。

それだけにシーナは頭が痛かった。

「構えてただけじゃ、切れない。斬るつもりがなきゃ、木も倒せないわ」


菜月は小声で「倒すつもりなんてなかったけど…」と呟いたが、ジーンは聞かなかったふりをした。

シーナが聞いていたら怒りそうな一言だった。

訓練前の確認とはいえ、自分のために取られている時間を…何様のつもりだろうか。


菜月は、その場で軽くステップを踏むように、トントーントンと何度かはねた。

菜月の雰囲気が変わった。

もともと身体を動かすのは好きだった。

だから格闘系クラブの助っ人もしていた。

ただ、本気で打ち込めるほど“性に合う”ものがなかった。それだけのことだ。

でも、相手が真剣なら、真剣に手を合わせるのは菜月の流儀だった。


「おら、場所あけろ!」

乱暴に鍛錬場に入ってきた白い鎧に身を包んだ一団が入ってきた。

右肩にある家紋は王家のもの。つまり、王家騎士団の一つ。

ルシアナが選抜した自身の警護のための騎士団だ。

菜月は、シーナの横までいき「あの武器はどれを使ってもいいの?」と模造刀を指さした。


「ごめん、菜月、時間を置きましょう」

「ん? 相手してくれるみたいだから、少し見ておいて。必要なら武器投げてね」

菜月はシーナにウインクした。

ルシアナに言われてきたのだろう。それだけは何となくわかる。

勇者の予備の市民を適度に痛めつけようという意図が見え隠れしている。

場所を開けたところでおとなしく引くようにも感じられない。

こういう徒党を組んで大声で威圧する輩はどこの世界にもいる。自分が強くなったと勘違いして。

「え、木剣よりはマシなだけで、こいつら」

「王家騎士団。つまり死んじゃうのはダメなんでしょ?」

「それはそうだけど」

「でも、今後のためにも、少しだけ胸を借りていい? それに」

「それに?」

「嫌いなんだ。相手を知ろうともせずに事を構えて見下す人は」

「……ケガしないでよ。レオン様に怒られるから」

「はぁ~い」


シーナは菜月の返事に余計に心配になる。

でも、それ以上に、菜月がどう戦うのかを見届けたくなった。」

ジーンの横にシーナが座るとポポは迷うことなく、シーナの足の上で丸くなった。

「うれしそうね」とジーンはつぶやく。

「別に」

菜月は、短剣とタガーの模擬刀を手にした。

タガーはアサシン職がよく使う短剣だ。逆手持ちをする関係でナックルガードがついている片刃のタイプをチョイスした。短剣は、刀身30センチ程度の諸刃。ただどちらもバスターソードといわれる太帯両刃の直刀の両手剣とは相性が悪い。

「……二刀流?」

シーナはジーンを見た。

見られても何も答えられないわよ、とジーンは苦笑で返した。

シーナが自然にジーンの手を握った。


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