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最強最悪の魔王様が恋に目覚めただってぇぇぇ!?  作者: 二野 二条
《第1章》『ファーストラブ』
5/5

5.魔王のメイドは過去を思う

 レインは部屋を出た後、ある人物の所に訪れていた。


 「事情はいえませんが、魔王様と私は少しの間、この城を離れることとなりました。

魔王様が不在であることをカモフラージュするために分身体をおいておきますが、

一応、貴女も何時も以上に警戒しておいて下さいね」


「……かしこまりました」



 鋭い牙と肩の高さに綺麗に揃えられた黒い髪が特徴である、彼女の名はセリエ・アーリオット。


 この城において唯一のメイドである。


 さらに言えば、彼女、魔王、レインの三人以外に、この城常住している者は存在しない。


 それは魔王は個にして最強である故に、配下を必要とせず、代わりに魔族領の各地に分散させているからだ。


 なので、この城にはレイン以外の執事も、セリエ以外のメイドも誰一人としていないのである。


 レインは主に情報収集や、魔王の直接的なサポートなどを行っているが、

 一方セリエはそれ以外の料理や掃除、衣服の洗濯など、この城の家事を全てを担当し、

 そしてその全てを完璧にこなす。


 更には、彼女自身の戦闘能力も高く、城内の警備までも兼任しているという、まさにスーパーウーマンなのである。



 (はぁ、セリエがいないとなると、魔王様の身の回りの管理は私が行うのですか……)


彼女がこの城に来る前"惨状"を思い出し、レインは項垂れた。


 「……それではセリエ。私達が不在の間、この城のことは頼みましたよ」


 「お任せ下さい、レイン様」


 パチンッ


レインはそう言って転移魔術を発現させ、彼女の元を去っていったのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 (では、わたくしは魔王様の準備のお手伝いに行きましょうか。

……おそらく、一人で悪戦苦闘していることでしょうし)


 彼女はそのように考え、魔王の自室へと向うために部屋を出る。


そして誰もいない廊下を、慣れた足取りで進んでいく。


 

 (はぁ……

わたしくもレイン様のように魔術が使えれば良いのですがね。

無い物ねだりをしても仕方が無いでしょうが、不便なものですね)


……彼女が歩いて移動する理由。



それは彼女は生まれつき、魔術が使えない体質だからだ。


 

 魔族の世界において、力とは己の価値に直結する。

 おそらくそれは、元となった魔物の本能が影響しているからなのであろう。


 よって、彼女のように魔術を使うことができない魔族は『魔族の癌』と揶揄され、もはや同じ種族としてもみて貰えない。


 しかし、何故そんな彼女が、魔王のメイドとして働くこととなったのだろうか?



 (……あら?そういえば、今日は魔王様と初めて出会った日ではないですか)

 

 

 それは、158年前の今日この日に起きた、

魔王との"ある出会い"が切っ掛けであった……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~~165年前~~


 魔族は実力主義でもあり、個人主義だ。

なので、魔族の中には自身の子供を生んだとしても、育児などせずに放置するものも多い。


 ……しかし、セリエの母親はその例には当てはまらなかった。



「さぁ、やってみなさい」


 優しげな声で、母親は自身の娘に声をかける。


「うん!みてて、みてて!」


 それに対して、娘は満面の笑みで答えた。




そう、二人の間には

確かな家族の"愛情"が存在していたのだ。



……すると、狩りの帰りであろう猟師二人組が近くを通りかかる。

 

「おい見ろよ?癌の連中がなんかやってやがるぜ!!……邪魔してやろーかな?」


「止めろ、ちょっかいかけようとするな……オレ達にも移るだろ?」


それもそうだな、と笑いながら彼らは村の入り口へと続く道を歩いていった。



 「……本当にごめんなさい。貴女にこんな辛い思いをさせて。

お母さんも貴女には普通の暮らしをさせてあげたかった……」


「もう、突然どうしたの?

私は別に気にしてないよ。

………辛いのは、お母さんも一緒だしね」



 魔術を使えない子供は忌み嫌われる。

……それに加えて、その子供を生んだ母親、

更にはその家族も、忌み嫌われる対象なのだ。



「ごめんなさい……ごめんなさい……!!」


謝り続ける母親。



……そんな母親を、娘はそっと抱きしめた。



 「私、強くなるから。

いっぱい、いっぱい頑張るから。

……だからね、ほら?……泣かないで?」


 「……えぇ、そうね。お母さんが泣いちゃ、ダメだよね」


娘に涙は見せまいと、母親は涙を流すのをぐっ堪えた。




 「……それじゃあ、やってみせて?」 


 

 「うん!みてて!」



そう嬉しそうに答えると娘は……



 




 自身の"魔力濃度"を上昇させ始めた。



 




それから、その少し小さな手の平を、

大木に張り付けられた"あたし"に向ける。


 

『雷よ、どどろけ』


………そして、雷の魔術をあたしにはなった。


 


バチンッ!




避けることも出来ないあたしは、全身に鞭を打ったような痛みがはしる。




「ほらね?当たったでしょ?」


「やるじゃない!流石お母さんの子ね!」


「えへへ」

 

 

あたしの母親はそう言い、"姉"の頭をやさしく撫でた。


 姉は、嬉しそうに微笑んでいる…………






 (あたしには、愛してくれる家族はいない。

でも、それは当たり前のことでしょ?


……だってあたしは『魔族の癌』なのだから)


 

 まだ幼いセリエは無機質な目で、ただ二人を見つめていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~~7年後~~


 「おい!!そこ、休むな!!」


石に躓いて転んでしまったあたしに激しく鞭を打つ。


 「もうしわけ、ございません」


 「口聞いている暇が有るならさっさと働けや!このゴミが!」


……そういって、彼は再びあたしに鞭を打つ。


おそらくあたしが何も答えなくても、彼の行う結果は変わらなかったであろう。


 落としてしまった鉱物を拾い、あたしはまた運び始める。

 


 あれから姉は、魔術の才能を開花させて、強大な力を手に入れた。


 彼女は村の誰しもから認められ、そして優秀な魔族として扱われるようになった。


 しかし、自身の家族に"魔族の癌"である私がいることは変わらない。


……それがどうしても、耐えられなかったのだろう。


 そうして母親と姉は、あたしのことを"奴隷"として売り飛ばした。



もちろん、奴隷商売は魔族領でも違法である。


 しかし、実力主義の魔族である。


だから、それらが大々的に取り締まられることはなく、各地に存在するのが実態なのだ。


 ましてや、魔術も使えない弱者など奴隷にされても当然だ、と考える者がほとんどであった。




……作業員の終了時間を知らせる鐘がなる。


 あたしは今持っている分を既定の場所まで運ぶと、貧相な馬小屋に向かって行った。


 すると他にも、ぞろぞろとそこへ向かって行くのが見える。


その馬小屋はあたし達"奴隷"が日々寝泊まりしている場所だ。

 

この地域では年中寒冷である。


 特に冬になると寒さが厳しくなるので、ほとんど野宿のような馬小屋では、寒さに凍えて死んでしまう者も少なくはない。


よって、あたし達は一ヵ所に集まり、お互いに身を寄せあうことで暖をとり、寝ることにしていた。



 


 起きている時間は、ずっと労働。

 

 用意される食事は、水のようなスープにカビが生えたパン。


 そんな日々が、休み一つもなく、ただただ永遠と繰り返されていく




……それでもあたしはこの暮らしに満足していたのだ。


あたしは、生まれてからずっと、ずっと、孤独だった。


 だから、こうして似た境遇の者達と出会い、そしてお互いに苦楽を共にして過ごすこの生活は、機械のようであったあたしを、ほんのちょっぴりだけ"普通の少女"らしくしてくれた。





(……だけど、そんなあたしの生活も……もうおしまいみたい。)


 


「グガァァァァァ…………」


 辺りにパラパラと白い雪が降り注ぐ中、

あたしの5倍以上はあるであろう、大きな白い魔獣がゆっくりと、でも確実に追い込むように、こちらに向かって来ていた。


……あたしの後ろは崖。もう、逃げ場は無さそうだ。

 

 「はぁっ……はぁっ……」

 

 隣にはあたしの1歳年上のリリーもいる。


……しかし、二人で力を合わせたところで、あたし達の運命は変わらない。



乱れる呼吸を整え、

 

そして、あたしは覚悟を決めた。


 

 

 「あたしね、楽しかったの」


 「リリ姉みたいな、一緒に笑い合える人たちに出会えて……本当に楽しいかった」



 「……セリ、エ?」

 

 

 リリ姉が不安そうにあたしに問いかけるが、あたしは、気にせず続ける。



 「だから、あたしはもう十分満足したの」


 「あたしが魔獣の囮になる。

…………リリ姉は、その隙に逃げて」

 

  

 

 リリ姉の息を飲む音が聴こえる。



「セリエ!!そんなの絶対にダメだよ!!」


 

 リリ姉はあたしが囮になることを必死に止めたいようで、なかなか逃げてくれない。


……でも、こうやって話ている間も、魔獣との距離は着実に縮まって来ている。



このままだと、二人ともこの魔獣の餌になってしまうだろう。


 

 「リリ姉には夢があるんでしょ!!

だからいって!!……はやくっ!!」


 だから、あたしはそう言った。


 そしてあたしの震える足を叱咤し、前へと踏み出して行った。

 

 リリ姉は、そんなあたしを止めようと手を伸ばす。


しかし、あたしはその手を振り払った。



 「このままじゃ、二人ともやられる。

……だから、おねがい。逃げて?」


そう言って、あたしは再び進みだす。


 


 


「……わかったわ」


 少しして、リリ姉がそのように答えるのが聞こえた。


そして、後ろで去っていく気配を感じる。



 


(そう……それでいいの、リリ姉……)

 


 


「さぁ!!魔獣……来るならこい!!」


 あたしは、逃げるリリ姉に注目が移らないように、大きな声で魔獣を引き付けた。


 そして、魔獣はそれに応じるかのように、

スピードを上げてあたしに向かってくる。


 

 ……もう、あたしにはやり残したことはない。



 後はリリ姉が無事に逃げ切れることをただ願うだけである。



 そして、あたしはゆっくりと目を閉じた。




……地面を蹴る凄まじい轟音は、




 もうすぐそこまで来ているようだ。


 

 

「ふふ……リリ姉、またね……」



だから、あたしは最後に小さく別れをつげた。




  

 



       


       バサッッッ!!!









     一瞬、世界の時が止まる。






 




(……あれ、どうして?)


あたしは宙を舞っている。



(……あれ、どうして?)


あたしは強烈な浮遊感に襲われている。






『妹はね、姉さんに頼るものなのよ?』








あたしには愛してくれる家族などいない。



だからあたしは、

この音の波の意味は理解できないし、

そもそも、認識できないのである。




(……なのに、どうして?)


あたしは頭が真っ白になる。

 





(………あぁ、ほんとうに訳がわからない)







そして、全てが白に染まる。



































 とりあえず、おはようございます。ニ野二条です。そして、第5話目に目を通して頂き、ありがとうございます!!嬉しいですっ!

 

 今回は、有能メイドのセリエちゃんが、初登場いたしましたねー。

 彼女がいるからこそ、魔王は魔王らしく生活をすることができているといっても過言ではありません!!

 そんな彼女について、まず皆さんには、彼女がどのようにして魔王に仕えることになったのか、というところから話して行くことにいたしました。

 

 次回はその後編です。


 果たして、彼女はこの後どうなってしまうのでしょうかっ!?


 そして一体いつになったら、魔王は登場するのでしょうか!?


それではまた!

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