遺跡調査とガードモンスター
遺跡調査の鍵開け罠解除担当…ねぇ…。
スカウトAランク若しくはSランクか上位職で…
報酬は銀貨500枚っと。ちゃんと鍵開けもこなしておかないと
また腕がなまってしまう。渡りに船の依頼だ。
ギルド掲示板から張り紙を剥がすとギルド受付に提出に行く
「あらアサシンCランクのアリシアさんでしたね?
あちらにお見えの方が依頼主ボルドリン博士です。」
どうやら私は受付嬢に名前を憶えられたらしい
チラと目をやると、年老いた博士に4名の冒険者
戦闘系PTでスカウト系が足りませんってところかな?
団体行動は苦手なんだけどなぁ、依頼は提出してしまったし
受付嬢は笑顔で私のサインを待っている。
カリカリと手早くサインをして依頼主ボルドリン博士の元へ向かう
「初めまして、アサシンCランクのアリシアと申します。
この度は、罠解除・鍵開け担当としてお邪魔致します。」
私は自己紹介をし頭を下げた。
「これは…お若いのにアサシンCランクとは凄いですな
宜しくお願いしますよ。」
依頼主ボルドリン博士は白い髭を撫でながら言った。
博士は如何にも考古学者といった、いで立ち
好々爺といった感じで優しさが滲み出ている。
これは当たりを引いちゃったかな?と思っていると
「なんだ…子供か…お守りが増えたな。」
護衛PTの前衛らしき男が言う。
なんだァ?てめェ…
言っては何だが私の煽り耐性はそんなに高くない。
前世でもよくネットでレスバをしていたものだ。
しかしこんな所でレスバしても博士には、いい迷惑だろう。
博士の顔に免じて許してやる。
「ちょっと…あなた本当に口が悪いわね!ヴィクトール!
御免なさいね、アリシアちゃん…でよかったかしら?
私は ヒーラーのベアトリーチェよ、よろしくね♪」
優しいお姉さんという感じ。
「こちらこそ宜しくお願い致します。」私はぺこりと頭を下げる
ヴィクトールとかいうやつ以外に向けて挨拶をした。
「僕は魔術師バルタザールよろしくね。」
「私はスカウトのリリアンです。私が未熟なばかりに…
アリシアさんの、お力をお借りします。戦闘の方はそこそこ行けますので
罠と鍵開け宜しくお願いしますね!」
ヴィクトール以外みな頭を下げてくれた。
一事が万事というわけでもなさそうだ。
「自己紹介も終わったようですな、皆さん宜しくお願いしますよ。
目的地は遺跡『アアルの門』。では参りましょうか。 」
目的地まではボルドリン博士の借り上げた馬車で移動した。
半日もすると遺跡『アアルの門』に到着した。
皆で馬車を降り遺跡の中へ入っていった。
どうやら内部はピラミッド迷宮の様相を呈している。
先頭は私、次いで前衛ヴィクトール
その後ろにはボルドリン博士とリリアンさん
最後尾列は後衛の皆様の隊列で進む。
うん、この地形は罠がある。
「罠があります解除しますので少々お待ちを。」
私は石畳のそれっぽい所を押して回る
3つ目ほどで手ごたえがあった。
ゴトン!石畳の一部が沈み罠が解除された音がする。
「お待たせしました。進みましょう。」私は言う。
「来たことない所の罠も分かってしまうんですね!」とリリアンさん
「はい、地形や形状雰囲気で分かるようになります。」
「勉強させてもらいますね!」リリアンさんは答える
「お荷物同士で暢気なもんだな…」とヴィクトール
コイツほんまに……。
「ヴィクトール!! アリシアちゃん凄いわね!
罠の解除助かるわ♪」とベアトリーチェさん
ベアトリーチェさんはヴィクトールを窘める役目なんですね
存在が癒しです。
「その調子でお願いしますよ、アリシアさん。」ボルドリン博士が言う。
「はい。お任せ下さい。」
そう言うと私は先頭で進んでいった。
モンスターが出たら私は即後ろに下がる。
戦ってもいいけれど今回の私の仕事ではないし
ヴィクトールを手助けする気にはならない。
PTの連携はとてもこなれている。
そこそこの修羅場をくぐってきている感じだ。
マミーが10匹程度同時に攻撃してきても上手く連携して討伐している。
「アサシンって前衛だろ?戦わないのか?」ヴィクトールが言う。
「私が戦闘に加われば皆さんの連携の足手まといになりますしね。
それに私の今回の仕事は罠解除と鍵開けです。宜しいですか?」
若干煽り返してやった。大人気ないが気持ちいいからやめられない。
ヴィクトールはチッ!と聞こえるように舌打ちをしてくる。
効いてて草。PTメンバーは苦笑いしている。
そんなこんなで罠を外しつつ敵を撃退しつつ
一行は遺跡の中を進んで行く。
扉がある。鍵付きだ。
私の出番バックパックからピッキングツールを出し
「それでは開錠します。罠があるかもしれませんので
皆さんは離れたここで待機してください。」私が言うと
「ガキに鍵開けられんのかよー」半笑いでヴィクトールは私に言う。
「ヴィクトール!!」ベアトリーチェさんは、それを窘める
「クロノコントロール、スタティック。」私が唱えると全ての動きが止まる。
さーて開けますかー。ピッキングツールをカギ穴に差し込む。
カリカリ…カリカリ…流石扉にかかってるだけあって手強い。
カチリ!鍵は開いた罠もなかった。
「リリース!」と言った後
数秒間ピッキングツールを鍵穴で動かし鍵開けしてる風にして
「開錠できました。」私は博士に伝える。
「おぉそれでは中へ行きましょうか。」博士は言う。
ギ…ギギ…ギギギギ…私は力を込めて開ける
ヴィクトールと博士以外は
皆頑丈な扉を開けるのを手伝ってくれた。
「ブフォ…」モンスターの鼻息が聞こえる。
ガードモンスター…だと思う。私は後衛の位置に移動する。
「神の息吹を!ブレス!」ベアトリーチェさんが詠唱し両手を天に掲げると
身体機能の上昇を感じる
「暗き闇を照らせライト!」バルタザールさんが詠唱すると
明るく輝く光の玉が部屋内部の天井付近で部屋を照らし出す。
ガードモンスターの正体はミノタウロス
2足歩行をする牛型のモンスターで手にはダブルアクスが握られている。
リリアンさんは弓を番える!
「喰らえウィンドスラスト!」風をまとい空気を切り裂く矢が
ミノタウロスに放たれる!
カァン!ミノタウロスはダブルアクスで悠々と防ぐ
「そんな…」リリアンさんは明らかに表情が暗くなる
自信のあるスキルだったのだろう。
「つっかえねぇなぁ!」ヴィクトールは言う。
こいつ思ったことを口にださないと気が済まないアスペなのか?
疾風の弓を弾くぐらいだからミノタウロスは思ったよりも動きは鈍重ではなさそうだ。
「雷よ!ここにプラズマと化せ!ライトニングストライク!」
バルタザールさんの魔法が直撃するとダメージが入っているように見える。
「牛風情がっ!」ヴィクトールはミノタウロスに突っ込む。
お手並み拝見だ。
「オラッ!」剣をミノタウロスに振りかざす。
剣は軽々と弾かれ。
ミノタウロスのダブルアクスが振り下ろされる。
ガキィン!防いだ剣は折れ、「ヒィッ!」
肩から鎖骨の間にダブルアクスがめり込む。
「ぐあぁぁぁ!いてぇええ!!」
「神よ我らが哀れな子羊に恵みを与えたまえヒール!」
ベアトリーチェさんが詠唱し緑の光がヴィクトールの傷を癒す。
まぁ治癒したところで剣は折れてるし
お荷物になっちゃったねぇヴィクトールさんよぉ!
「どなたか、私の武器にバフをかけられる方はいますか?」私が言うと
「僕が可能です!この者の武器に極限の力を!フォースオーバードライブ!」
バルタザールさんが詠唱をするとカタールが光を帯びる。
ミノタウロスは無力化したヴィクトールを無視して
新たに弓を番えているリリアンさんに突進した。
私は地面を蹴りリリアンさんに振り下ろされる
ミノタウロスのダブルアクスをカタールで受け流す。キィン!
ターゲットは私に移る、激怒したミノタウロスは
重たいダブルアクスをプラスチックの棒を振り回すように
私に攻撃してくるキィン!カァン!数度打ち合う。
普段の私なら確実に力負けしているだろう、ブレスってすごい。
バカの様に振り回す斧を私は、まるで踊るかのように回避した。
キィン!カァン!偶に刃を交わしつつ、隙を窺う。
ミノタウロスが大振りをした瞬間を私は見逃さなかった
サッと懐に入り込みズシュッ!ズシュッ!ズシュッ!
ミノタウロスの心臓をカタールで刺突した。
「ブフォォ!!!」断末魔のような声を上げる。
私は跳躍し止めに眉間をカタールで刺突する。
ドズーン!とミノタウロスは倒れ動かなくなった。
暫し静寂が訪れる。
「すごーい!アリシアちゃん凄いじゃないの!」
「アリシアさんありがとございます!命の恩人です!」
「やりますねぇ…感服です!」
みな喜んでいるようだ。
ヴィクトールはへたり込んでいる。
私はヴィクトールに近づいた。
「自分の力を信じる事は大事です。が、過信してはいけません
貴方はその結果PTメンバーを危険にさらしました。分かりますね?」
ヴィクトールは力なく頷いた。
さぁ、祭壇に宝箱があります開錠しますので皆さん離れていてください。
私は時を止め鍵開けに成功した。
宝箱を開くと中には古代文字らしきものが描かれた石板が入っていた。
ボルドリン博士に手渡すと。
「これじゃよ!これ!皆有難う!」興奮気味に捲し立てた。
当に研究者って感じ。
「それでは帰途につきますか。」ボルドリン博士は言う。
私は帰還の書を持っていますので。
皆さん私に掴まってください。町まで一瞬です。
「それは便利ですな。お世話になりましょう。」ボルドリン博士は言った。
わたし達は無事グリムハルトのギルドに一瞬で移動する。
ボルドリン博士はギルドに報告して、私たちは予め
ギルドに預けてあった報酬を受け取り。
別れの挨拶をして立ち去ろうとした。
ボルドリン博士に呼び止められる。
「えっと、何かありましたでしょうか?」
「いいや、今回の君の活躍MVPじゃよ報酬は倍出させてもらう。」
そう言うと銀貨を500枚渡された。
「君はとても優秀だ、私の依頼が目に付いたらまたいつでも
参加して欲しい。報酬は弾ませてもらうよ。」
ボルドリン博士は言った。
「ありがとうございます、また機会がありましたら是非
参加させていただきたいと思います。
研究頑張ってください。」
「ありがとう、ありがとう、早速石板の解読が楽しみでウキウキじゃよ。」
ほっほっほと笑っている。
「それは何よりです!それではまたお会いしましょう。」
「そうですな、それでは失礼しますよ。」
そう言うとボルドリン博士はギルドから出て行った。
さぁ私も帰ろうかな。
宿屋への道を急いだ。