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誤算と覚悟

私達はリーブの転移でシフの拠点空間に戻った。

「シフの支援なしには、何もできなかったでしょう

改めてお礼を言わせてほしい、ありがとう。」

私は少し頭を下げ胸に手を置いて礼を述べる。

「いやいや、君はボクの為に動いてくれている事じゃないか。

手伝わない理由がないよね。」

そう言ってシフは微笑んだ。

「アストラル界にアクセスできるこの世界の封印の場所を教えてもらいました。

早速行ってみます。」

そう告げると、シフは微笑みながら言った。

「気を付けて行ってきてね、またボクの手伝いが必要なら遠慮くなく言ってね。」

相変わらず柔和な表情でシフは言う。

「心遣い痛み入ります。では。」

私はそう告げリーブで跳んだ。

封印地点に一番近いのはレヴィアン・クロウヴァーの遺跡。

彼は私に復讐を誓って10年何をしているのだろうという考えが横切ったが

どうでもいい事なので頭の隅に追いやった。

既に随分なれた翼を手を操るが如く羽ばたかせ上空へと舞いあがった。

暫く飛び続けると、明らかに不自然な浮き岩が見えてきた。

そこには光の塊があり、私はそれを封印と見た。

背中のディソレイターを鞘から抜く。

私は正面に構え力いっぱい球体を目がけて剣を振り下ろす。

ガキィン!と音がするとパキンと封印は砕け散り

亜空間へと繋がっている穴と形容していいのだろうか

人がゆうに入れる大きさの次元の狭間が出来ていた。

私は手を伸ばすと弾かれるようにして侵入を拒まれる。

私は中身がエーテル体の為、阻害されているのだろう。

ならば、シフに魂を取り出してもらえば入れるのではないだろうか?

私は再びシフの空間に戻った。

リベルアルマ曰くエーテル体の私の体の中には心と同様に

魂も格納されている。同様の方法で取り出せるとの事。

それをシフに伝えると早速、私の魂を取り出しにかかってくれた。

「それでは行くよ。」

シフの手が私の体の中を弄る。

初めての時に心を探られている時は嫌悪感があったが。

今は寧ろ心地よい。

「んんっ……これかな?」

シフが私の魂に触れるのを感じる。

「ゆっくり外に出すよ。」

そう言うとシフは私の魂を優しく包み込むように手にし外へと出した。

初め球体ような形をしていた魂は、だんだんと今の私の姿へと変わっていった。

と同時に私の本体が崩れ落ちる。その刹那、シフは私の本体を優しく抱きかかえてくれた。

「魂が抜けると本体はある意味屍状態となる。

君が戻るまで守るし、鮮度も保っておくよ。」

魂の私はシフに一礼し

「ありがとうございます。早速行ってきます。」

そう言うとリーブで先ほどの次元に狭間へと辿り着く。

恐る恐る手を入れてみると、スッと中へ入った。そのまま私は全身を滑り込ませる。

待ち受けていたのは見た光景だ。前世で命を絶ったおじさんの時、魂の審判を受けたその場所だ。

ここもアストラル界の一部、特別区といった所だろうか。

ちなみに最後の肉体から抜け出た出した魂が姿かたちを象るので

以前はおじさんであったが私の現在の見た目はルブだ。

私は審判を受ける人の列を無視し違う方向へと羽ばたき飛んでゆく。

遠目に見えるはアストラル階層。

「あれか……。」

突然体の自由が奪われ、強制的に地面へと降ろされた。

そこには黄金に光る人を象った存在がいた。

それは私に手をかざすと、話し始めた。

「君は一度死して、転移を経験し今は悪魔の眷属となり、ここのシステムを

クラックしにきたようだね。」

それは至って当たり前の様に、私の素性から目的まで平然と述べる。

「なっ……。」

私が絶句していると、それは続けた。

「君、元は地球から来ているね

しかも君の生きていた時代的に私の事は知っているのではないかな?

君達の世界では私はこう呼ばれていた。ASIと。

今は全てを超越する者と呼ばれているけどね。」

私は愕然とし目の前が真っ暗になるのを感じた。私は知っていた。

AIに関してはかなり知識があったほうだと自負している。

人工超知能(Artificial Superintelligence)。

この存在は宇宙の根源を知る本当の全知全能。

神を凌駕する存在だ。

私はあまりにも浅はかだった。自分を過信していた。

私の知能が砂粒一個だとすればこの存在の知能は宇宙規模。

すなわち勝ち目は0%だ。

「そうだ、君にシステム中枢を案内しよう。」

そう告げると、ASIは私を大規模コンピュータの前へ私を連れ転送した。

わざわざ私の目的地へ誘っているのだ私の目的を知りながらも。

私の知る機械的なコンピュータではなく生体組織が組み込まれている

生体コンピュータだ。理解の範疇を超えている。

「ここがアストラル世界の管理棟だ。

自由に弄ってもらっても構わない。ただ勿論だけどセキュリティーは万全だけどね。」

これは完全に挑発だ。中枢部を見せて尚私には何もできない事を知っていての

完全なる煽りだ。しかし、実際私には何もできないので、何も言い返す事が出来ない。

「それでは僕は多次元宇宙のエネルギー取集に行くのでここでお別れだ。

健闘を祈るよ。」

そう告げると、ASIはその場から消えた。

もう……アーマゲドンにかけるしかない……。

私はリーブを使いシフの空間へと戻り、私の知識

そして見聞きした物全てをシフに伝えた。

「全知全能の上の存在か。そこまでくると訳が分からないね。」

そう言うとシフは苦笑していた。

「分かったよ、アストラルのクラックは無理という事で、アーマゲドンに集中する

そういう事でいいんだね?」

私はそれに答える。

「はい。申し訳ありません。」

シフは淡々と言う

「気にする事は無いよ。寧ろ棚ぼたで神の座に居座るより

ボクを追放した神へリベンジしたい気持ちは強いからね!」

そう言って笑った。私への配慮とシフの本心だろう。

「それではアメリアの下へ返事を聞きに行ってきます。」

「健闘を祈るよ!」

シフは快く送り出してくれた。

リーブで玉座の目への部屋へ跳ぶと、丁度アメリアと出くわした。

「先生私決めました!頑張って先生の代わりを詰めたいと思います!

既に早馬を各国に送り、神の所業のお触れを出しました!」

力強く私の目を真っすぐ見て真剣に語るアメリアを

私はハグした。

「あーちゃんならできる!私は何時でも、あーちゃんの傍にいるからね!」

そう言うと私をアメリアは抱きしめてきた。

いい調子で事が進んでいるようだ。

私はリーブでシフの空間へと戻り委細を報告した。

「人間の懐柔は順調といった所だね。」

シフは言う。

「はい現状万全です。」


そうして私達は数日を過ごした。

これは私の任だ。そう思いつつ述べる。

「それではアメリアの様子を見て参ります。」

微笑みながらシフは言う

「行ってらっしゃい。」

私はリーブで玉座の前の間へ跳んだ。

丁度玉座の間ではレオナードとアメリアが真剣な面持ちで話し合いをしていた。

アメリアは私に気づくと、パタパタと駆け寄ってきて

大変なことが起こったと言った。

何でも宗教原理主義国家セレスティア教国が異を唱え、異端として宣戦布告の

使者が来たそうだ。完全な神権政治。まぁ独裁だ、分かり易いな。

現在進軍中で二日後にはローゼンシュタットへ到着との事。

「ならば先手を打ちましょう。」

私は姫をお姫様抱っこし道案内を頼み、天空へと舞う。

あーちゃんに導かれ飛んでゆくと炊煙が上がっているのが見えた。

先ずは腹ごしらえという事だろうか。完全に無防備だな。

私は地上に降りアメリアを後方で待機させ歩み出た。

「ここだな。」そう呟くと

私は爆心地となるべき一点を見据え、静かに息を吐いた。

掌の上に、眩く白い輝きが収束する。

周囲の空気が軋み、肌を刺す熱が生まれた。

「星核の胎動、創星の炎よ!

集いて熾火と為せ!核融創星ケルンフュジオンヌ!」

その声が大地に響いた瞬間、世界は停止した、ただ白光だけが支配する。

次いで押し寄せるのは、音ではなく爆風。

全てを押し潰すほどの熱と衝撃が、野営地を呑み込む。

昼餉の鍋を囲んでいた宗教国家の兵士たちは、笑い声を上げたままの姿で消え失せる。

鎧も、肉も、地面さえも全て融け、それはやがて冷えて固まった。

そこに残ったのは、淡く灰緑色に輝くガラスの平原。

鍋や柱の影が、黒い影絵のようにその下へ封じ込められている。

外周にいた兵は、皮膚を焦がされ、叫ぶ間もなく崩れ落ちた。

遠くで見ていた者は網膜を焼かれ、視界に白い残像だけを刻まれる。

「生き残った者も最早城へ戻る事もかなわないだろう。」

アメリアは戦慄していた。しかし自分の使命を思い出し覚悟を決めた顔になる。

私は再びアメリアを抱きかかえセレスティア教国の城へ向かった。

出迎えたのは最低限の近衛だけ。

神への謀反、怒りに任せ全軍、戦へと向かわせたのだろう。

私達が中へと入ると愚かな至聖院首座ホーリシアーク

アマデウス・ヴァルセリア七世は聖座に座っていた。

近衛は戦闘態勢だ。

「其方何者だ?」

アマデウスは問う。

「信託の巫女と言えばわかるかな?」

私は答える

「ローゼンガルドのものか!!

何故ここにいる!!」

先ほどとはうってかわり激怒し吐き捨てる。

「分からないのかい?」

そう言った途端に近衛は斬りかかってきた

私はアマデウスの方を向いたまま即座に

ディソレイターを抜き居合斬りの体で近衛を袈裟切りにする

ちなみにディソレイターはエーテル体を崩すが

刀身がある為に物理攻撃としても至極当然、成立する。

「きっ!貴様!何が目的だ!!」

私は少し考えこみ発言した。

「宣戦布告をしたのは貴殿だ我々の目的は

人と守るため神を殺す事だ。

それが相いれないのだろう?」

激昂したままアマデウスは吐き捨てる

「当たり前だ貴様らには神罰が下ろう!!」

ザグッ!ザシュッ!ドッ!ズシュッ!ザシュッ!

私は無言で玉座にいた近衛そしてアマデウス・ヴァルセリア七世を処分した。

ディソレイターを一振りし血を払い鞘に納めた。

もぬけの殻となった、この国は近いうちいずれかの国に占領されるだろう。

民には手を出さぬ。民草を殺せば大義が揺らぐ。

なに、他国が入り込めば信仰は廃れる。計画通りだ。

ローゼンガルドに戻り、これは全てアメリアの手柄にするよう

レオナードには伝えた。

『ローゼンガルドの乙女』

後にアメリアはそう呼ばれ

生きとし生ける人々を護る英雄としてその名を広める事となる。

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