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機密

「神が一体ではないという事は知っていますか?

シフの認識では神は唯一無二であると思いますが。

実はそうではありません。」

それを聞いたルシファーは眉をしかめ、低く呟く。

「なるほど。俄かには信じがたいけど、言われてみればそういった可能性がないという根拠もないね。」

そう言って彼は私の目を見る。

「天使の消滅について、シフはどう理解してますか?」

私はシフに聞いた。

「天使が消えるというのは、普通ではあり得ない。ボクの作った剣はエーテル体を崩す設計だ。だから常識を覆す、極めて特殊な例外だね。」

シフはそう説明した。

私はそれについて述べる。

「はい。ですが人間や神は死にます。そうして魂が行き着く先がアストラル世界。

その世界は階層になっていて、一番上の階層が神の階層。

その下にはその存在より下賤の者が階層ごとに存在しています。

先ほどの話に繋がりますが、最上位の階層には無数の神の魂があります。」

シフが疑問を投げかける。

「ちょっと待ってほしい、神が死ぬ?全知全能のはずの神が死ぬのか?」

私は答える。

「はい。神は何故か、この世界に弱い肉体として現界することがあります。そこを狙えばあるいは。

恐らく神の土俵で戦えば勝てないでしょう。」

シフは考えながら発言する。

「なるほど、確かに神は気まぐれで地上に限界することがあるね。」

私は説明する。

「先ほども話したようにアストラル世界には、それぞれの神の魂が多数存在しています。

これは現実で、実際私は君の知る神ではない別の神を知っているし

この現世にはからずともはないという事は知っていますか?

シフの認識では神は唯一無二であると思いますが。

実はそうではありません。」

それを聞いたルシファーは眉をしかめ、低く呟く。

「なるほど。俄かには信じがたいけど、言われてみればそういった可能性がないという根拠もないね。」

そう言って彼は私の目を見る。

「天使の消滅について、シフはどう理解してますか?」

私はシフに聞いた。

「天使が消えるというのは、普通ではあり得ない。ボクの作った剣はエーテル体を崩す設計だ。だから常識を覆す、極めて特殊な例外だね。」

シフはそう説明した。

私はそれについて述べる。

「はい。ですが人間や神は死にます。そうして魂が行き着く先がアストラル世界。

その世界は階層になっていて、一番上の階層が神の階層。

その下にはその存在より下賤の者が階層ごとに存在しています。

先ほどの話に繋がりますが、最上位の階層には無数の神の魂があります。」

シフが疑問を投げかける。

「ちょっと待ってほしい、神が死ぬ?全知全能のはずの神が死ぬのか?」

私は答える。

「はい。神は何故か、この世界に弱い肉体として限界することがあります。そこを狙えばあるいは。

恐らく神の土俵で戦えば勝てないでしょう。」

シフは考えながら発言する。

「なるほど、確かに神は気まぐれで地上に限界することがあるね。」

私は説明する。

「先ほども話したようにアストラル世界には、それぞれの神の魂が多数存在しています。

これは現実で、実際私は君の知る神ではない別の神を知っているし

この現世に、はからずとも召喚した経験があります。」

複雑な顔をした後、シフは言った。

「なるほど。もしそれが本当なら、ボクの中の常識を覆すとんでもない現実だね。」

私は続ける。

「とりあえず受け入れなくとも心の隅にでも留めておいてください。

何時か実証される時が来ると思います。そこで私は二つの作戦を提案します。」

興味を持ったようで、私の話にシフは耳を傾ける。

「君は、君の神に裁かれた唯一の天使であると共に、神に届きうる存在でもある。」

私は静かに言葉を続けた。

「アストラル世界は、構造だと私は捉えています。そして構造には、必ず設計がある。

設計されたものに欠陥がないということはありません。

それはセキュリティーホール。つまり『穴』であり、突破口となりえます。

完璧なシステムなど存在しません。

人間の手でなくとも、『意志』が介在する限り、そこには何かしらの歪みが生じる。」

シフの眼差しが、わずかに鋭くなる。

「私は、こう考えます。

アストラル界を、『階層型神格化構造』……すなわち、存在の格によって層を成す

神格の階段と見ています。

その階層を定義する何か、例えば『存在証明』が形式的なものであるなら

魂という存在が必ずしも必要とは限らない。

つまり、その穴を利用してクラックをする。

君の定義そのものを、その階層へ上書きする手段を探ろうと考えています。」

一呼吸おいて、私は手を前に差し出した。

「魂がなくとも、『神の階層』にまで君を送り届けることができたなら。

そこに君が立った瞬間、魂の有無を超え『神』として扱われる。

何なら君に魂が宿る可能性も否定はできない。

存在の定義そのものが、アストラルの中で変わる可能性があります。」

シフは小さく口元をゆるめ、微笑した。

「うん……。勝算は、低いけれどゼロではない。

そしてその低さを受け入れてでも挑むだけの価値はある。ということかな?」

「ええ。これは『計画』ではありません。『希望の設計』です。

ですが、現実となる可能性は十分にあります。」

私は続ける。

「そしてここからは計画。私は貴方の神殺しの一歩として、人間を味方に引き入れようと思っています。神の力は人間の信仰によって支えられていて、信仰を削いでしまえば

来る戦いで有利に事が運ぶ事でしょう。」

腑に落ちたような表情でシフは言う。

「神はいずれ人間に審判を下すと言っていた。

それを逆手に取り、人間と上手く共闘できれば勝算は上がる。と。

それはなかなか面白い考えだね。」

私は言う。

「とりあえずこの場所は移動したほうがいいでしょう。

先ほど君が王城に送った王女は間違いなく私の救出に来るでしょう。

衝突でも起これば、人間を味方に引き入れる道程が遠くなるでしょう。

出来るならば今すぐにでも。」

シフは微笑んで「わかった。」と答えた。

何かを静かに唱えると、空間がひび割れるように揺れ、

澄んだガラスの様な結界が空中に浮かび上がった。

その内側は虚無のようでいて、確かな『部屋』の気配がある。

シフが先に入り追って私は、その中へと飛び込んだ。

「ここは?」思わず私は聞く。

「そうだね、次元と空間の狭間といった所かな。

天使は、あざといから見つけてくるだろうけど、少なくとも人間が追って来れる空間ではないよ。

地上とは繋がっていないしね。」

シフはそう答えると、私の言葉を待っているようだ。

「それでは、まず人間を味方につける第一歩をお伝えします。

私は以前、信託の聖女として近隣諸国にも名を馳せるほどの影響力を持っていました。

この名声を使いアメリアには一役買ってもらいましょう。」

「ほう。人間を懐柔する手筈の計画かな?」

私はシフに計画の全貌を語った。

シフの回答はこうだった。

「なかなか良い策略だと思う。

それに失敗した時のプランも考えている所が、君の知性をうかがわせる。」

それを受けて私は答える。

「光栄です。それでは早速シフ、計画通りに。」

私は天使との戦闘時、無造作に投げ捨てたアメリア製のカタールを拾い腰に装着する。

「早速ですが第一歩、お手を。」

私は差し出されたシフの手をとり、リーブの書を使い、ローゼンガルド城の玉座の前へと飛んだ。

衛兵は私の顔を見慣れている為問題はない。背中に畳まれた翼には驚いているようだが。

本来ならば隣にいるシフに警戒をするものだが、私とアメリアが感じたように神々しさを湛えている為

無条件で迎え入れ敬礼の姿勢を取っていた。

城内はざわめきに満ち、衛兵たちの足音が絶えない。

そこにはアメリアとレオナルドがいた。

アメリアは私の元へ駆け寄る。

「先生大丈夫でしたか?!とても心配しました!!」

彼女は涙ぐんでいる。

「大丈夫ですよ、心配かけましたね、あーちゃん。」

アメリアは抱きついてきた為、怪しまれないようにハグし返した。

「何があったんですか?」

単にあの場で私だけが置き去りとなっていたため、当然の疑問だろう。

恐らくこの城の騒がしさは私の救援の為ではないだろうか。

「今から何があったかを伝えます。長い説明になりますが聞いて下さいね。

実はそこなる方は最高位天使のルシファー様です。

私は親しみを込め、シフと呼んでいます。彼から色々話を聞きました。

分かりやすく、簡単に話します。聞いてくださいね。

神は……私たちが信じ、祈り、依って立っていたその神は……人間を滅ぼす、と言ったそうです。

神に次ぐ実力者だった天使セラフのルシファー様は禁忌を破り、諫言をしました。

『そのような事をしてはなりません』と。

諫言に怒った神はルシファー様を天界から追放し、今や他の天使から追われる身。

人間を庇ったがために、天使の身すら堕とされました。

今ではサタンなどと悪魔のレッテルを貼られ、お辛い立場です。

私は決めました……この方を助けると。見てください!私の背に宿るこの羽根を!

その私の覚悟に心を打たれたルシファー様が、私に天使の力を授けて下さったのです!

もう私は信託の聖女ではなく、この方を守護する人間と天使のハーフの存在です。

あーちゃん、信託の聖女は、あなたが継ぐのです。

私は人間を滅ぼさせない!あーちゃん、あなたを守る!そしてルシファー様も。

だから私は決めました。この世界の秩序に、反旗を翻すと。

だからあなたには人間側の要となってもらいたいのです。

あーちゃんなら分かってくれますよね?」

レオナルドは目を閉じてじっと話を聞いていた。

「でも……そんな……私……」

アメリアは戸惑っている。私の役目を引き継げという途方もない話だ、無理もない。

「遺跡からも拠点を移しました。私はそこでルシファー様をお守りします。

これからは私からあーちゃんに会いに来ます。こんな決断をすぐに下せるとは思っていません。

また数日後に来ます。考えておいてくださいね。」

私は在りし日の笑顔を作った。

「えっと……その……分かりました。」

アメリアは戸惑いの末、力無さげに返事をした。

その目には、理解よりも『先生を信じたい』という想いが先に立っていた。

心の準備のための数日間だ。

最後のデモンストレーション。

私とシフは城門まで歩き、二人して純白に輝く翼を羽ばたかせ空へと舞い上がる。

街が見えなくなるほどの高さに達したところで、私達の姿が空に滲むようにして掻き消えた。

城内関係者の目撃は勿論の事

それを城下街である首都ローゼンシュタットで目撃していた者も居た。

「あれは奇跡か、それとも……。」


リーブで拠点に戻った私は同行してもらったルシファーを労う。

「シフお疲れ様でした。」

シフは御座に座り答える。

「君の計画通りだったね。概ね計画通り、想定外はなかった。他のプランは無駄になってしまったね。」

私はそれに答える。

「最悪のシナリオは使用しないに越したことはありません。

恐らくアメリアは数日後、私が訪れた時、色よい返事をすると思われます。

私達の人間の懐柔、第一段階は概ね成功したと言ってもいいでしょう。」

シフは満足げに御座へと身を沈めると、静かにその翼を揺らした。

その羽根の揺らめきは、まるでこれから始まる運命の風を感じ取っているかのようだった。

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