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晴れのち雨。

翌朝、私は目を覚ますと眠気まなこのまま

直ぐに、うさにゃを確認しようと視線を向ける。

いない?!どこに?!飛び起きようとしたが思いとどまった。

何故なら私の掛布団の上で丸くなっていたからだ。

どうした風の吹き回しだろうか……

一食の恩。そんな言葉が脳裏に浮かぶ。

昨日の様子が嘘のように安心しきった様子で

私の上で眠っている。

私は上半身だけそっと起こし

眠っているうさにゃの額を親指で優しく撫でた。

ん?よく見るとヒョウ柄が微かに浮かんでる?

昨日真っ白だった毛は少し黄色を帯びて

黒い斑点が微かに浮かんでいる。

目を凝らさないと斑点は認識できないぐらいだ。

へぇ~……生え変わるにしては早いけど

成長と共に毛の様相が一変するのは自然界ではよくある事だ。

鼻をヒクヒクさせ時々舌をだしペロペロと自分の鼻頭口周りを舐めている。

猫もこの仕草よくやるんだよね。かわいすぎんか?

夢で何かを飲んでいるのだろうか。私は自然とにんまりしてしまう。

「にへへ……。」頬は緩みっぱなしで言葉が勝手に出てしまう。

起こさないように私はジリジリとゆっくりゆっくり布団から下半身を抜き

床に立つ事が出来た、大丈夫起きてない。

私は早速人参もどきをカタールで一口サイズ小刻みに切り分ける。

そしてお気に入りだと思われる部屋の隅のタオルの前にバラバラと

優しく置く。

そして私はピンクのワンピースにライトグリーンのエプロンに着替えた。

街娘スタイルをするのは田舎のアリシアの家以来だ。

ライトグリーンは分かるとして何故ピンクなのか?

それは、先ず一つ目、補色関係にあるからだ。

このコーディネイトは相手に与える色彩的印象が良い。

二つ目はピンクというのは情熱の赤と純真な白を混ぜた色

世間では女性を象徴する色とみられているが

私はそんな事は無いと思っている。

だからこそのチョイスだ。

雑貨屋に行き、うさにゃの食用皿を選ぶ

外部から中間部までは動物の手形足型

外周は人参のような野菜の柄が

ぐるっとスタンプされている皿が目に留まる。

私はそれを購入し宿屋へ戻った。

うさにゃはまだベッドの上で寝ていた。

買って来た皿を洗い、直置きしていた野菜を

皿の上に乗せて置く。

ベッドの傍に行き椅子を持ってきて腰掛け

ベッドの上のうさにゃを撫でた。

モフモフふわふわで気持ちがいい。

当の本人、いや人じゃないか。も、気持ちよさそうに寝ている。

一時間ほどそうしていると

後ろ足でくしくしと体を掻きながら目が開く。

私はお構いなしに、ずっと撫でている。じっと私の目を見た後。

私の手をぺろぺろ舐め部屋の隅のタオルの上にねそべり

ポリポリもぐもぐ皿の上の人参っぽい野菜を食べ始める。

私は安心して朝食をとりに一階へ行った。

翌日にもなると私の掌に野菜をのせても

掌から食べるようになった。

食べ終わると、急かす様に手を舐めるのでくすぐったい。

そしてまた野菜を手に乗せると食べ始める。

翌日には起きていても膝の上や体によじ登ってくるようになった。

撫でると嬉しそうに眼を閉じるので

撫でて欲しいの催促なのかもしれない。

そして時々「なっ……なー……なっ!」みたいな声で鳴くようになった。

翌日の朝。

コンコンコン!

「おはようございます!」あーちゃんが来た。

実は私はあーちゃんが来るのを待っていた。

私はドアを開ける。

「わぁ!」私の服装でまず驚き、抱いていた小動物が

部屋の隅へ逃げていくことで二度びっくりしていた。

「先生のワンピース姿、初めて見ました!いいですね!

とても似合ってます♪」

「ありがとう♪」

「それと……」そう言うとあーちゃんは部屋の隅に視線を移す

「この子ね。」私はそう言うと隅に逃げ込んだうさにゃを

抱き上げて胸元で撫でる。

「うさにゃって言うの。親指で頭撫でてあげてみて?」

そう言うとあーちゃんはそーっと親指で額の辺りを撫で始めた。

うさにゃは最初こそ怖いようで私の胸に顔をぐっと埋め縮こまっていたものの

暫く撫でていると、あーちゃんの顔をじっと見るぐらいまで懐いた。

「どう?可愛いでしょう?」私が言うと

「なっ……なー……。」とうさにゃが鳴く。

「かーわーいいいーーーーーー!!」

あーちゃんも何かのタガが外れたようで

今まで見た事ないテンションになっている。

ひとしきり二人でうさにゃを堪能すると

ぴょいっと腕から飛び降りて壁の隅のタオルの上で

ぐてーっと横になる。目を閉じている所を見ると

寝たのかもしれない。撫でられるのも案外疲れると聞いたことがある。

私達は小声でうさにゃの生い立ちや仕草色々話した。

昼下がりには私が手から野菜を食べさせると

あーちゃんの手からも食べた。

私達は一日をキャイキャイ楽しく過ごした。

「いいなー先生私もペット欲しくなっちゃった!」

夕方になると、そんな事を話しながらあーちゃんを城へ送った。

ワンピース姿だとあーちゃんと一緒でも城内でちょくちょく止められた。

街娘が城内に入るという事は先ずない事なので仕方がない。

今度からは装備に着替えて見送りをしよう。

私は宿に戻ると、買っておいた猫じゃらしの様なおもちゃで

うさにゃと遊んだ。

猫パンチみたいなのをしたり、追いかけまわしたり

「なっ!なーっ!!」と威嚇したり

それはうさにゃが疲れて横になるまで続いた。

私は夜のルーティーンを済ませ

隅っこで、ぐでーっとなっている、うさにゃを布団に入れて

一緒に眠った。

獣の匂いがする……でも嫌な匂いじゃない。

愛おしく、そして暖かい。

安……らぎ……。

翌日ロディーが来た。

「うっす、かわいい服だなw」にやにやと笑う

「おっと説明はいらないぜ!記憶を読んでるからな。」

そういうと突然おもちゃを掴み、うさにゃに歩み寄る。

おもちゃを激しく振ると、うさにゃは凄い勢いで追っかける。

ロディーはもう、うさにゃの心を掴んでいる。

疲れてきた頃に手で野菜を与えるロディーそれを食べるうさにゃ。

いきなり懐いている。前知識があるとしても、これだけ懐かせるのは。

元々生き物に好かれる素養があるのだろう。

やはりロディーの根は良いやつと再確認する事となった。

ロディーはおもちゃで部屋中を駆け巡り、ねこにゃもそれを追いかける。

何か何時もより楽しそうで、ちょっとジェラシーが湧く。

「こいつ可愛いな!俺もペット検討するかな。」ロディーは言う。

うさにゃは疲れると、お気に入りの場所で寝そべって眠りにつく。

その間はロディーとの会話タイムだ。

ロディー的には冒険したいらしいが、こういうのもいいと言っている。

なんだろう、こういうのを幸せというのだろうか。

ロディーが帰ると私は御飯を食べナイトルーティーンをこなし

うさにゃとベッドの布団で寝る。

こんな感じで冒険には一切でかけず

うさにゃとの引き籠り生活が始まった。

一カ月私は引き籠ってずっと、うさにゃと遊んでいた。

うさにゃの毛並みも完全にベース黄色でヒョウ柄が浮き出ている。

こちらへ来て、こんなに長期何もしなかった事は無かった。

私の冒険者としての腕もさぞ鈍っている事だろう。

髀肉之嘆という故事成語があるが私は嘆きはしない。

そんな事はどうでもいい。

お金には困っていないので特に金策する必要も無いし

楽しければいいのだ、私にはその資格が与えられたのだ。

穴に落とされた……あの時から……。

数日後のとある日あーちゃんが部屋に駆け込んできた。

「先生!大変です!レヴィアン・クロウヴァーが遺跡から出てきて

城に向かいつつあると報告がありました!」

それはいけない。対処のしようがない。どうすればいい……。

私は親指を噛む。

どうしようもないが取り合えず行くしかない。

少なくともこの世界で私以外あいつと対峙できる人間はいない。

対峙は出来るが……どうにかできるかといえば……答えはNOだ……。

私が出向くといえば、あーちゃんも来るだろう。

しかし高確率で二人とも死ぬ。

「ちょっと色々考えます。あーちゃんはお城で待っていてください。

うさにゃを安全なあーちゃんの部屋に置いてきてもらってもいいですか?

一緒に討伐しましょう!」

「はい!」

うさにゃを託された、あーちゃんは城へ戻っていった。

私は不老ではあるが不死ではない。

レヴィアン・クロウヴァーの気持ち一つで私は死んでしまうだろう。

しかし私が逃げれば……

あーちゃんもロディーも王国の皆も生き続ける事は叶わないだろう。

腹を括るぞアリシア!!

私は装備を整え例の遺跡から城への街道を逆に進んで行く。

否が応でも接敵するだろう。当然道中は私一人だ。

ロディーは私の記憶を読んでいるだろう。

だから来ないはずだ。来たら殴ってやる。

街道を進んでいくと嫌な雰囲気が漂ってくる。

空気が淀むというか空間が捻じれている感じ。

間違いないレヴィアン・クロウヴァーだ。

周囲を確認するが誰もいない。好都合だ。私はついに接敵する。

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