種からペット?!
夜が明ける。
朝というのは基本的には嫌いだ。
一日の始まり人々が目覚め動き出す。
でも今は朝起きて鉢の様子を見るのが楽しみだ。
盆栽育てている、おじいさんみたいだなと思ったが忘れることにした。
銀の種の方の植物は葉から滲み出て零れ落ちた液体が
どの瓶も溢れそうになっていた。
慌てながら且つ慎重に、新品の瓶に移し替える。
注ぎ終わると瓶の蓋を閉め3本のポーションが出来上がった。
何故ポーションの瓶の空きがあったのか?
ソロでトレハンしている時負傷してしまった場合
ポーションを使っていた。
その時に使い終わった空瓶を洗って取ってあるのだ。
多分この変な拘りの強さは例のアレの症状ではないかと思っている。
閑話休題。
金の種の繭を見ると時々ごそごそ動いている。
私はそれを、じっと眺めていた。
中にいるものが安全だとは限らない。
私は急いで防具に着替えカタールを装着し繭を凝視した。
見つめる事数時間。
朝食も忘れ、ひたすら見ていると繭のてっぺんが湿ったように変化する。
回り込んで見てみると動物のマズルっぽいものがぎゅっと出ようと
もがいているのが見えた。頑張れ!私は応援する。
体の半分まで出てきている。あと少し!
ズルっと出てきたのは。
ウサギと猫を混ぜたような生物
この世のかわいい!を凝縮したような生き物だった。
多少湿っているが乾燥すればモフモフでふさふさ確定だ!
私が手を伸ばすと警戒しているのか縮こまる。
生まれたてで動けないのか、それ以上の動きは見せない。
私はタオルで包み毛並みに沿って拭いてあげる。
拭いてあげている時は大人しかったが
拭き終わりモフモフふさふさのその子を覗き込むと
ぷいっと横を向く。まぁしゃーなしだな。
この子からは霊性を感じる。妖精?動物?ハーフ?
というか種から生まれているんだよね。
取り合えず名前を付けよう。ペットにはな前を付けないとね。
うさにゃ。これにしよう。
安直だけれど変に考えると中二心が疼いて
キラキラネームっぽいのが完成してしまう恐れがある。
シンプルイズザベストってやつだ。
何か食べるのなら食べさせないと死んでしまうかもしれない。
私は急いで市場へ向かった。
柔らかい生肉と人参の様な野菜を購入。宿屋へ戻る。
いない!さっきまで居た場所に、うさにゃがいない!
私は焦りながら必死に探した。どこ?どこ?
目に付くところにはいない。どうすんの……。
まさか……!足の付いた棚の下を覗いてみると。
いた!こういうことなんよ!
前世子犬を飼う事になった初日
足付き家具の下でプルプル震えていたのを思い出す。
「本能なんだろうなぁ。」私は安堵する。
私が手を伸ばすと逃げた。短時間で随分と動けるようになったようだ。
野生の生物ってそうだよね。
部屋の隅でじっとこちらを見つめている。
私は少し離れた場所に買って来た肉と野菜を置いてみた。
勿論うさにゃの一口サイズに千切ってある。
私はそのままベッドに向かいバフッと俯せになる。
横目でちらっと観察しながら、そのまま寝転ぶ。
うさにゃは少しずつ食べ物に近づき
鼻をヒクヒクさせ両方の匂いを嗅いでいる。
齧ったのは野菜の方だった。
タベター!私は心の中で叫んだ。
菜食なのか。
ガリガリと音を立てながら人参のような野菜を食べている。
かわいすぎじゃない?
全て食べ終わると隅に戻ってコテンと横になった。
近くへ寄ってみる反応はないが胸は動いている。呼吸はしてるっぽい。
寝てるのかな?ドカ食い気絶部みたいなものかな?
私は肉の方を処分し、うさにゃにタオルを優しくかけてあげた。
夏とはいえお腹丸出しでは体調を崩してしまうかもしれない。
私はベッドに戻り再び様子をじっと眺めた。
昼食の時間も過ぎていたが扉を開けると起こしてしまうかもしれない。
せめて夕食まで我慢だ。
退屈はしなかった。
ペットを飼ったことがある人なら分かると思う
ペットの寝顔は何時までも見ていられる。飽きないのだ。
この世界にスマホがあれば100%写メしてる自信がある。
窓からオレンジ色の光が差し込む頃
うさにゃはタオルを押しのけ、ゴソゴソ起き出した。
そして押しのけたタオルを隅に寄せ
その上に鎮座した。なんか存在感がある!
私は銀の種ポーションを一瓶手に優しくドアを開閉し外へ出た。
そのまま道具屋へ向かう。
ポーションを鑑定してもらうのだ。
「ほほぅ!」
道具屋のおばあさんは目を凝らし一通り液体を眺めた後。
匂いを嗅ぎ、私の許可を得て一滴手に垂らし舐める。
私が使うのは魔法鑑定だけれど
このおばあさんは、きっとスキルによる鑑定だ。
「うん。これは最高級ポーションだねぇ。
致命的な傷を治癒する上に状態異常も直してくれる代物だねぇ。
あんた錬金術師かね?ポーションメイカー?」
「いえ、違いますが偶々入手したものです。」
「売る気はあるのかい?」
「いかほどになりましょうか?」
「金貨5枚で買い取るよ。これかなり希少だからねぇ。」
えぇぇぇ?!ひょっとして、あの植物この世界でFIRE出来ちゃうやつ?
まぁでもお金には困ってないし地産地消でいいかもね。
ただ鑑定してもらったお礼というか、それでは持って帰りますでは
何となく申し訳ない。
「はい、では買い取りお願いします。」
「はいどうぞ。また何かあったらおいで。」
私は金貨5枚を受け取り道具屋を出た。
その足で人参もどきの野菜を10本ほど買った。
バックパックにしまうと宿へ戻り
1Fの食堂でちょっと多めに食事をとった。
今日は朝から何も食べてなかったからね。
二階の部屋へ戻る。扉をそーっと開け
「ただいまーうさにゃー」小声で言いながら部屋に入る。
うさにゃは相変わらず壁の隅でタオルの上に乗っていた。
お気に入りになったのかな?
じっとこちらを見ていたが数秒すると頭を床にベターッとつけ寝そべる。
これは警戒が薄れたと思っていいのかな?
警戒してたらずっと見続けるもんね。
恐怖を感じていたなら床に寝そべるなんてことはないだろうし。
ランタンに火を灯し夜のルーティーンを行う。
シュミーズに着替え寝床に入る頃には
うさにゃも寝息を立てていた。
またお腹を出して寝ていたのでタオルを巻くように優しく掛け
床に入った。




