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久方ぶりのロディー

コンコンコン!来訪者の正体は大体予想がついている。

「開いてるよ。」

私はぶっきらぼうに言い放つ。ドアが開く。

「よっす!ひっさしぶりぃ~アリシアちゃん!」

ロディーだ。

「久しぶりだね、何してたの?」

「ふふーん!よくぞ聞いてくれました!

これを見てくれ。」

胸元にぶら下がっている冒険者証にはビショップとある。

「俺も上位職になっちゃったぜ!一人で頑張ってさ!

アリシアが構ってくれないからさぁ。」軽口をたたいてくる。

「いや、あんたが来なかっただけでしょ?」

ロディーは絶対、前世陽キャだろ。

「それ!それよ!一か月姫様と休暇満喫したろ?」

「あっ!!」

「察してくれたかい?邪魔にならないよう配慮したんだぜ?

ここに来る前は一応記憶を読んで、邪魔にならないようなタイミングで

来てるつもりだ。」

「そっか、感謝するよ。で、今日は何の用?」

「おいおい何の用も何も

一緒に依頼行こうぜって言ってたろ?忘れたのか?」

「いや忘れてないよ、うーんじゃあ今日は特に予定もないから

何かの依頼受けようか。」

「マジか!やったぜ!やっと相棒らしい事してくれるじゃねーか!

いやさ、愚痴なんだけど聞いてくれるか?

自分にブレスかけてさ、一人でひたすらターンアンデッドの毎日よ……

ほんときつかったぜ、お前の恵んでくれたお金も段々減ってくるしさ。

というわけで今日はよろしくな!」

うん。陽キャの笑顔だな。まぁこいつ悪い奴じゃないんだよな。

寧ろ良い奴だし好きか嫌いかなら好きに分類される。

でも陰の者と陽の者は決して交わる事は無い。

根本的に違うのだ!

「見たところ普通に冒険者の服だけど装備とかあるの?」

「ないぜ!」爽やかな風が吹き抜けそうな、いい笑顔でサムズアップしている。

そこは誇るところではないぞロディーよ。

はぁ……しょうがないにゃあ……。

「いいよ。」

「え……?何が……?」

「装備買ってあげるってコト。」

「いやいやいやいや!そこまでしてもらうのは申し訳ないだろ!」

こいつ、チャラいくせに意外とこういう所お堅いんだよなぁ。

「なんていうかさ、ある程度装備がないと足手纏いなわけ、わかる?」

「……まぁ……それはそうだな……ぐう正論だ。」

「そもそもが何でずっとソロでターンアンデッドしてたの?

臨時PT組めばよかったじゃん。私だって以前はそうしてたよ?」

「だって相棒はお前だろ!浮気とかできねーじゃん!」

こいつ……。言いたいことは色々あるが、変に義理堅くもあるんだよな……。

絶対生前モテてただろ。

「はぁ……。まぁいいわ、あーちゃんが来ない日はなるべく付き合ってあげるよ。

だから装備は買ってあげる。目の前で死なれても困るし。」

「そこは!こう!アリシアちゃんがロディー!!!って言いながら

両手バッと開いて敵から護ってくれるんだろ!」

「緑の異星人おじさんじゃねーんだから。

護るにも限界ってものがあるからね。過度な期待はやめてよね。」

私は貯金棚から金貨を数百枚取り出しバックパックに入れる。

「はい。軍資金は持ったから行くよ!」

「承知いたしやした!アリシア姉御!」

こいつリーマンだと出世しそうなタイプでもあるよな……。

私達はマジックアイテム屋に行く。

店に入ると、ビショップコーナーへと足を運ぶ。

「ふむふむ。何か欲しいものある?」

「買ってもらう立場だしさ……お母さんが決めてよ……。」

「誰がおかーさんだ!!ほんとにお前……。まぁいいわ。

じゃあ適当に見繕うよ。これとこれとこれとこれ。」

男の買い物は早いのだ。あーちゃんとの買い物は別だけど。

全部Sランクのローブ・杖・ペンダント・指輪。

揃えとかは考えない。全部適当に選んだ。

会計へ持ってゆく。

「ありがとうございます。締めて金貨40枚になります。」

随分と安く済ませてしまったかな……。

「き↑ん↓か↑40↑ま↓い↑!!!!」

ロディーは変なアクセントで大声で叫ぶ。

私は慌ててロディーの口を塞ぐ。

「おい!ロディー!店の中だぞ!」私は耳元で強めにいう。

案の定周囲の客の目線を引いてしまうし

店員もびっくりしている。私は苦笑いをしながら

「ハハハ……すみませんお騒がせしまして……。」

バックパックから10枚分金貨4枚を取り出し

テーブルに乗せた。

「確かに。毎度ありがとうございます。」

「こちらこそありがとうございます。」

店員は紙袋に入れてくれた。杖は受け取ったので

そのままロディーに渡す。

ロディーは杖を受け取り、しょぼくれた犬の様に私の後についてくる。

外に出ると私は袋に入った他の装備もロディーに渡す。

「はい。これ装備するんだよ。」

「ありがとう。ほんとにありがとう。すまねぇ。俺ヒモみたいだよな……。」

「うん。実質今ヒモだよね。」

「何も言い返せねぇ……。」

すごくショックを受けて地面にロディーはへたり込む。

「冗談だって!ほら私と依頼受けて金稼ぐんでしょ?」

「?!……そうだよな!これからだよな!出世払いって事で頼むよ!」

食いついてきたw

スイッチング・ウィンバックが、はえーな!

この前向きさは見習いたい。私は引きずるタイプだからね。

「早速依頼受けに行こうぜ!」ロディーは言う。

「んーでも昼前だからねぇ多分残ったどうしようもない依頼ばっかりだよ?」

「じゃあどうするよー?」

「まぁ昼ごはん食べたら私の金稼ぎ場に連れて行ってあげるよ。」

「マジか?!ありがてぇ……。」

という事で二人は昼食を取り、ロディーは着替えた後

鍵開け師の聖地、七鍵の石廊へとリーブで跳んだ。

「明かりの魔法はある?」

「勿論あるぜ!」

「じゃあ行こう。」

私が率先して中へ入る。

「聖なる光よ、その輝きをもって暗闇を退けよ!ホーリー・ルクス!」

ロディーが唱えると頭上に小さな光の球体が現れた。

「やるじゃん!でも多分君も詠唱要らないよ頭で考えれば魔法使えるはず。」

「そうなの?」ロディーはそう言うと。

頭上に小さな光の球体がもう一つ現れた。

「すげぇ!無詠唱ってやつじゃね?」

「まぁ私もできるからね。あっちの世界から来た人物は多分皆、使えるよ。」

「へぇー便利だなぁ。でもさ詠唱したほうがカッコよくね?」

それは……正直ある。私も生前の漫画の詠唱をいくつか未だに諳んじる事が出来る。

「一理あるね。よし!行こうか

私が罠解除と鍵開けするから敵と遭遇したら補助頼むよ。」

私は前を向きながら、後ろのロディーに話しかける。が、

ズザー!!

と石床を派手に滑る音が聞こえる。

振り向くとロディーが俯せに、スッ転んでいる。

「ブフッ!何してんの?w」無様なロディーに、つい吹いてしまう。

顔を上げながら地面に突っ伏したロディーは顔真っ赤で言う。

「いやこんなヒラヒラしたの着た事ねーし!

なんなら、これの丈あってねーからな!」

「そっかーwそういえば寸法あわせてなかったね……ごめんごめん……

裾ふんじゃったのか……プププッ。」

ダメだ笑いがこらえられない。

ロディーは立ち上がると不服そうな顔をしながら

中世ヨーロッパの女性がドレスをたくし上げるように

ローブをたくし上げてついてこようとする。この姿がぎこちなく情けない。

「アーッハッハッハ!無理!無理!ロディー!アーッハッハッハ!」

ツボに嵌った。人は良くわからない時によくわからない事でツボに入る。

そしてそれは大体が不謹慎な時だ。私は笑い転げた。

「おまえーっ!……くそっ……。」

ロディーは、いじけてしまった。

「ごめんごめん!私のミスだよねププッ……レシート持ってるから

後で裾上げしてもらおうね。」

「そうしてくれ!」

「ふぅ~。」一笑いしたら落ち着いた。ツボから外れるのも一瞬だったりする。

「それじゃあ、行こうか。」

「あぁ。」

まだ若干ふてくされているようだ。

私は何時もの様に罠を外し宝箱の鍵を開け

宝箱の中身をバックパックに入れていく。

「へぇ慣れたもんだなぁ。」

ロディーは感心している。

「まぁね一年以上この作業やってるからね。」

そして敵が出たらロディーはブレスをかけ

私が戦う。これを夕方ごろまで繰り返した。

私達は街へ戻り、マジックアイテム屋へ戻る。

ロディーが裾上げしてもらっている間に

私はA~Sランクの宝箱からの戦利品を売り払った。

私はロディーの元へ戻り金貨8枚を渡した。

「合計16枚だったからこれが君の取り分ね。」

「マジか!半日でこんなに儲かるのか……エグいな……。

っていうか半分も貰っていいのか?俺完全に金魚の糞だったろ?」

「いや明かりとか助かるしブレスも前衛としては

かなり戦いやすくなるからね報酬は当然だし、PT報酬は山分けだ。

MMOの常識だろ?」

「まぁ……そうだな!ありがとな!」

「じゃ、先に帰るね、ロディーおつかれ!」

「おうアリシアもお疲れ!またな!」

共に挨拶を交わし互いの宿へと戻っていった。

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