休暇と朝食グルメと出発
コンコンコン!ドアのノックと共に外から声がする
「せんせーおはようございますー!」
あーちゃんだ!
私はドアに駆け寄りドアを開け
「はい、あーちゃんおはようございます。」ウキウキしているが冷静を装う。
そう言い終わる前に、あーちゃんは抱きついてきた。
モーニングハグだ。そんな言葉あるのかな?しらんけど。
私はターンしてドアを後ろ手に閉める。
「どうしたの?」私は聞く
あーちゃんは顔を上げながら言う
「えっとね!一か月お休みー!」
「うん?あーちゃん、どういうこと?」
「お父様が一か月ね、勉学休んでいいって!
毎日、先生の所へ来れるよー!」
ギュッとあーちゃんの抱きつく腕に力がこもる。
「あーちゃんと暫く一緒にいられるのですね
それは楽しみです。」
私はあーちゃんの頭と髪を優しく撫でながら言う。
「えへへ」とあーちゃんは笑う。
一か月か…毎日となると色々と大変な事はあるかもしれないけれど
この笑顔が毎日見れるのなら、そんなのはチャラだ。
「あーちゃんは朝食、済ませてきた?」
「んーん、先生と食べようと思って…」大丈夫かな?という表情をしている
「もちろん、一緒に食べましょう、準備するので少し待ってくださいね。」
「はーい♪」またとびきりの笑顔になる。
あーちゃんは私といるとクルクルと表情が変わる
それがまたとても愛らしい♪
私は用意をして、あーちゃんを連れ立って1Fへ降りる。
ランチ時間はそこそこの客入り、夜は満席になる食堂兼酒場
朝は少ない、何故なら殆どが宿屋に宿泊の客だけだからだ。
外部からの少々の常連さんはいるものの、ほとんどいない。
私達は空いている席に着く。向かい合ってではない横並びに座る。
知っている人は知っているだろうが対面に座るのは対決姿勢の表れなのだ。
横に座るのが一番親密度が高い証拠となる。
妙齢のお姉さん(50くらい)が注文を取りに来る。
「えーと私は黒麦パン草木のバター付と野獣ハムエッグでお願いします。
あーちゃんはどうする?」
「私も同じのがいいです!」
「分かりました、では2つお願いします」
「あいよ、暫く待っててね。」そう言うと妙齢のお姉さんはキッチンへ入って行く。
「注文したのはどんな料理なの?」
「うん、黒麦を石臼で挽いて焼いたパンに香草牛の乳で作った
草の香り漂うバターを塗って食べるんですよ。
そして野山で狩られた小獣
シラホロウサギやクルナリ(リスっぽいやつ)のハムと
コトリドリの卵と一緒に焼いたものですね。
ハムはストックのある肉から選ばれるので
日替わりみたいになってて動物次第で味は固定していません。
その辺も楽しみの一つですね
今日は何でしょうねー、ふふ。」私は微笑む
「わぁ!楽しみ!」
あーちゃんはニコニコしながら椅子が高く床につかない足を
前後にプラプラさせている。
「あーちゃんのお口に合うといいですね。」
「はい!」
しばらく雑談していると料理が運ばれてくる。
コトリ。とテーブルに料理が次々置かれる。
「黒麦パン草木のバター付と野獣ハムエッグ二人前ね
お待たせ!」
「あのすみません。今日のハムは何のお肉ですか?」私は尋ねる
「今日のハムはシラホロウサギだよ、クセが無いから食べやすいさね!」
そう言うと妙齢のお姉さんはキッチンに戻っていった。
「はい。それではあーちゃん、神の恵みに感謝を。」
2人は目を閉じそれぞれ頭の中で神から賜った食への感謝を述べる。
私が目を開ける頃あーちゃんは片眼を閉じ片目は薄眼で私を見ていた。
私が目を開けたのを見ると慌てて目を閉じる。かわいいな♪
「ではそろそろ頂きましょうか。」
「はい!」あーちゃんは目を開け
早速、黒パンに草木のバターを塗る。
焼きたてなので草木のバターは直ぐ溶けパンに染みこむ。
ハグッ!と齧り付くと、まだ熱い生地にハフハフしながら
冷ます様に食べている。何とか食べ終わるとあーちゃんは
「黒パンが、あっついよ!」私に向かって言う
「うんそれはそうだよ、焼きたてだから口の中
火傷しないように気を付けて食べてね。
フーフーして少し冷まして食べるといいよ。」
私は黒パンに草木のバターを塗りながら言う。
王宮での食事は恐らく口に合った温度で運ばれてくるのだろう。
「うん。」
そう言いながらあーちゃんは次の黒パンに草木のバターを塗っている。
「フーフーフー。」息を吹きかける。
ハグッ!むぐむぐ。
「おいしー!」笑顔で私に感想を述べる。
「ここの黒パンは外がカリカリで中がモチモチしていて
それが人気なんですよ。私も好きなんです。」私は説明をする。
「わかるー!」
「あーちゃんシラホロウサギのハムエッグも食ベてみてね。」
あーちゃんは器用にというかとても上手になれた手つきでフォークとナイフを扱って
切り分けている。流石王族マナー!こういうのを一流って言うんだろうね。
「そちらも焼きたてなのでフーフーして食べてね。」一応注意しておく
「はーい!」
先ず切り分けたハムをフーフーした後、口に運ぶ。もぐもぐ。
「おいしー!」あーちゃんは、また笑顔になる。
「ねー、シラホロウサギはクセがないし、ハーブと香辛料の調合が
うまみを引き立てるんだよねー。」
私も黒パンを食べつつ切り分けた肉を頬張り口の中を空にすると。
「これ料理も美味しいけどね、一人で食べるより
あーちゃんと一緒に食べた方が何倍も美味しく感じるんだよね。」
私はそう言うとあーちゃんは
「えへへ。」と満面の笑顔で照れ頭に手をおいたため少し食事の手が止まる。
「この黒パンね、千切って半熟のコトリドリの卵の黄身をすくって食べても
美味しいよー。」
あーちゃんは黒パンを小分けにナイフで切って
フォークで刺しコトリドリの卵の黄身をすくって食べる。
手でちぎって食べる私と違って上品だ。
「なんか、バターと違って濃厚な味で美味しい!」驚きの表情で言う。
「そうでしょう、残りは好きなバリエーションで食べてね。」
「はーい♪」
2人は食事を終え
レジで会計を済ました。
王宮料理は基本少ないので
あーちゃんは食堂で食べるとお腹がいっぱいになってしまう。
直ぐ動くのも何なので、部屋に戻って雑談をした。
消化もされ、動けるようになったらまだ朝なので私は提案した。
「今日も冒険者ギルドの依頼受ける?」
「うける!」あーちゃんは乗り気だ。
腹ごしらえ十分な2人は
宿屋を出て冒険者ギルド掲示板へ向かう。
勿論私はローブ着用。
最悪姫様同行がバレてしまったら不味いですからね。
掲示板に到着する。
何時もならあーちゃんに依頼を選ばせてあげるのだけれど
今回は試したい事があったので、私に選ばさせてもらった。
ダンジョンお知らせ
ダンジョン礫魂の鉱霊域
このダンジョンは、核によって
魂を鉱物や宝石に宿すという呪いによって形成され続ける異常領域です。
一定周期ごとに呪われた魂の核が自然発生
それが周囲の鉱石や宝石と融合する事により様々な鉱石や宝石ゴーレムが誕生します。
ダンジョン内大地そのものが魂の受胎装置と言ってもいいでしょう。
報酬は、それぞれ倒したゴーレムの鉱石や宝石となります。
発生数が多くなると危険なので一定期間で間引きする必要があるため。
腕に自信のある冒険者は奮ってご参加ください。
そんな感じで報酬は現地調達。依頼としてはゴーレムの間引きそんな所だろう。
私はあーちゃんに報告する
「こんなのどう?」
「えっ!でも私達の武器では不利なのでは?」
うん姫様はちゃんと理解している。
「実はですね私に秘策があるんです!ただぶっつけ本番なので
失敗したら即退却でいいかな?」
「わかりました!先生に秘策があるなら安心です!お供します!」
よし決まりだね、これは依頼書へのサインは必要なさそうだから
早速出発しましょうか。」
「はい!」
そうして私達はゴーレムの待ち受ける
礫魂の鉱霊域へ向かった。




