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殲滅

私は目が覚めると直ぐに支度をした。

今日は大事を成さねばならぬ日だ。

失敗は許されない。

私は鏡の中の自分に『私ならできる!』と暗示を数回かける。

私は姫様と騎士団第5部隊と共に街城壁の配置場所に移動する。

王子・王女と各部隊参謀は街城壁中央エドワルト陛下の元へと集まっていた。

「さて…アリシアよ。腹案があると申したが、申してみよ。

本日の戦、其方の双肩にかかっていると言っても過言ではないぞ?」

陛下は覚悟8割、疑心2割の表情で私に問う。

「はっ!私は街を一つ消し飛ばす威力を持つマジックアイテムを

陛下よりお預かりした金貨にて入手致しました。

敵が集結次第、消し飛ばして御覧に入れます。」

予定通り上手くいくといいのだが。

「頼もしい、其方に作戦は一任する。しかと頼んだぞ!」

「はっ御意に!僭越ながら詳細について申し上げます。

兵器マジックアイテムを使用した際、直ちに爆音が参ります

耳をお塞ぎ頂き、衝撃波も襲って参ります故

耐衝撃姿勢も、お願い申し上げます。」

「相分かった!伝令兵よ、今のアリシアの注意事項

全ての兵に伝えて参れ!」

「はっ!」伝令兵はすぐに、持ち場の隊に伝令を伝えに行った。

敵軍は、いよいよ支度を整え、敵各隊は陣形を整える。

散開型の布陣ではなく密集型の陣形のようだ。

願ってもない。私にとっては好都合だ。

騎馬を中心に左右に弓兵部隊が中核は歩兵隊にて

後詰に魔術師隊と神官部隊の構成。

弓兵にて、こちらの騎馬隊を狙い騎兵で中央突破

こちらが打って出なければ、そのまま城門城壁攻略だろう。

分かりやすい基本戦術だな。

まぁその戦術の出番はないと思うが。

「それでは私がイグニッションと声をかけますので

そうしましたら、手筈通りお願い致します。」

「相分かった。」

行くか。

クロノコントロール、スタティック!

私は心で唱え時間を止める。

バックパックからとあるAFアーティファクトを取り出す

トワイライトネクロポリスダンジョンのB2Fの宝箱産の飛空石だ。

最高速度に制限はあるが、念じれば超速での飛行が可能な石だ。

私は石を手に念じる。

私の体は城壁から離れ、徐々に空高く速度を増して行く。

あっという間に敵陣営上空1500メートルに到達した。

やや息苦しいうえに。とてつもなく寒い。気温は確実に氷点下だろう。

何か防寒具を用意しておけばよかった。

少し考えれば分かっていた事だが、こういうミスが私にはよくある。

しかし、この作戦に大きなミスは許されない

しかも風が強く吹いているため体感温度はもっと低い。

「手早く…済ませるか…」私は体を震わせ歯をガチガチさせながら言った。

バックパックから緋色のクリスタルを取り出す。

手も震えているため、手早く済まさなければ。

「その秘めたる力をもち全てを解き放て、深紅の焰!」

クリスタルに紅蓮の光が収束する。トリガーは引かれた。

私はすぐにクリスタルをその場で手放す。

するとクリスタルの色は褪せ時が止まり、その場に制止する。

「よし上手くいった。」

(説明回想)

クリスタルの暴走による爆発はとてつもない威力である事は前述した。

前世で言う所の核爆弾のようなものだと考えてもらえばよい

純粋なエネルギーの暴走の為、人体に有害なレディエーションは発生しない。

ちなみに、この形態の爆発は地上で起これば被害は小さい。

何故ならば衝撃波の半分は地下に逃げるか又は吸収される為

全体の破壊力が落ちる。

爆風も上方向に逃げてしまう為、地表にいる敵には届きにくくなる。

ただ構造物の破壊は逆だ。

建物の破片などが混じった所謂、汚い爆風となり

範囲は狭いが局所的な破壊力が高くなるのだ。

今回は軍隊つまり人間が相手なので空中爆発が効果的なのだ。

空中爆発に関しては

高度500メートル前後の爆発では範囲が狭くなるため

効率的とは言えない。

また高度1500メートル以上となれば

エネルギーが拡散しすぎて、地上への影響が薄れる。

従って導き出される最も効果的な高度は1000メートル前後

爆風と熱波は、数キロメートルに亘る範囲に影響を与え

爆風が広がり過ぎる事なく、最大の破壊範囲を誇る。

ダメージの範囲が広すぎて、精密なターゲティングが難しくなるものの

敵の陣形は密集型の為、この高さでの爆発が最も効果的だ。

次は、この作戦の要

どうやってピンポイントに高度は1000メートル前後でエネルギー爆発させるかだ

自由落下の法則に従うと高度1500mで落下させれば

10秒後には高度1000m付近でエネルギーが解放される計算となる。

(説明回想END)

閑話休題

私は街城壁元居た位置に戻る。

よし、やるか。計画通り成功してくれ…

リリース!

時間は動き出す。

「9・8・7・6・5・4・3・2・1・イグニッション!」

私の掛け声とともに全軍耳を塞ぎ耐衝撃姿勢をとる。

敵軍は空から舞い降りる紅き死の天使の存在を未だ知らない。

エネルギーの揺らぎにより輝きを変化させながら

異形の魔核たる深紅のクリスタルは刻々と落下しながら、その臨界に近づく。

高度1000メートル。

沈黙が一帯を包む。

急激に瞬いた光は太陽を凌ぎ

視界を奪い

大地はひずみ悲鳴を上げる。

爆心地を中心に、空間が膨張し

燃え上がる紅蓮の衝撃が周囲数キロを飲み込んだ。

膨れ上がるエネルギー塊は敵軍の頭上で弾け

風は逆巻き熱が押し寄せ

瞬時にして装備も肉体も、陣形も消失した。

人為的なものではあるが

その光景は宛ら天罰としか呼べぬ災厄に相応しい。

上空には、うねる炎と灰によって形作られた

巨大なキノコ雲がそびえ立ち

その根元には、もはや敵軍勢だったものは僅か一部しか残らず

広く焼け焦げた地面が剥き出しになっていた。

惨劇から3分

空の半分を覆うような赤黒い雲が

風に押され、ゆっくり流れ始める。

雷が落ち、空気は焦げた金属のような臭いを帯びた。

惨劇から10分

炎はようやく鎮まり始めるが、焦土となった平原の中心は未だ燻り続け

赤黒いキノコ雲は、尚も空には『()()』が存在していた証として漂っていた。

私達は15分ほどは棒立ちしていたであろう。

ローゼンガルド王国軍は総員絶句していた。

やっとの事で陛下が言葉を発する。

「なんと…これほどとは…。」

敵9割5分が消失し残っていた敵兵はクモの子を散らすように四散した。

何が起こったのか理解できず這う這うの体で逃げ出したのだろう。

最早戦争を他国に吹きかけるような余力は残っていないだろう。

下手すると国家存続も危ういかもな。

陛下は気持ちを瞬時に切り替え全軍に告ぐ。

「見よ、天は我らに味方した!あの紅の焰、まさしく神託の業!

天より遣わされた信託の聖女、アリシアの手により奇跡は成された!

今こそ勝鬨を上げよ、我が軍の栄光のために!!」

「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

陛下の言葉に呼応するように兵士達は絶句状態から一転

城壁を揺るがすような咆哮とも呼べる歓声を上げた。

え?信託の聖女ですか?何か私、とんでもない立場に持ち上げられてない?

ただ…理屈は分からなくもない。人知を超えたような光景を目の当たりにした時。

理論で解くよりも、神の御力による奇跡とした方が、分かり易く効果的だ。

それにしても、その立役者が私にされてしまうとは…トホホ…

私は周囲の歓声とは逆に一人だけ戸惑っていた。

そして姫様は、どさくさに紛れて私に抱きついてきていた。

「やっぱり先生は凄いっ!」

そして顔面蒼白な王子が一人レオナード。

私の約束を違えると、とんでもない事になるのを

再び実感したのだろう。

斯くして一息ついた後、戦勝の宴は催された。

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