鍵開け中級アンデッドコリドー
さて、そろそろ初心者の試練の洞窟での宝箱ピッキングは
100発100中になっていた。
このままここで続けても腕は上がらないだろう
そろそろ次のダンジョンに目星を付ける頃合いかもしれない。
次の宝箱ランクで考えると…
アンデッドコリドー辺りがいいかもしれない。
名前の通り不死者の回廊ダンジョンだ。
初心者の試練の洞窟の敵は非アクティブ
つまりこちらから攻撃をしなければ敵も攻撃してこない
これを敵と呼んでもいいのだろうか?
しかしアンデッドコリドーに出現するスケルトンやゾンビは
こちらを見つけ次第攻撃をしてくる。
なので多少面倒くさいのだが。鍵開けの技術を磨くには
避けて通れない道だ。
下級アンデッドは視認により目標を確認するので
インビジブルローブを駆使すれば戦闘無しでも鍵開け修行に打ち込めるだろう。
アンデッドコリドーに到着。
このダンジョンでは松明を使わない。
何故なら使用すればインビジブルローブの意味がなくなるから。
ダンジョンの入り口で待機し目が慣れるまで待った。
目が慣れてくれば暗闇でも、ある程度見えるようになるからだ。
待っている間に入り口から中へ入っていくPTを数組見た。
鍵開けも中級への登竜門だが、戦闘系PTの登竜門でもある。
まぁ当然という事だ。
中にはこちらを心配していくPTもいたが
「目が慣れるまで待機しているだけですのでお気遣いなく。」
と対応した。
そろそろ目が慣れてきたかな。
このダンジョンは言葉通りコリドー、つまり回廊型ダンジョンで
中心部を囲うように、ぐるっと一本の道で構成されている。
その回廊には各々部屋に繋がっており、宝箱のスポーン地点となっているそうだ。
B5Fまであるとされ、下層に従って高レベルのアンデットが出るらしい。
当然そんな下層まで行くつもりは毛頭ない。
さて始めますか。暗闇に目も慣れてきたころコリドーを徘徊し始める。
いつも通りの手順でピッキングを開始する。
ボンッ!宝箱が爆ぜる。
時間を解除し当然離れた位置からそれを観察している。
また失敗か…体感的に成功率は40%ぐらいだ。
まだ初日、焦る事はない。失敗が多いのは当然だ。そう言い聞かせながら
コリドーを徘徊して宝箱を見付けては鍵を開ける。それを繰り返した。
アンデットに出会わなかったのは浅い階層だったからなのか
冒険者が倒して回っているのか、戦闘がない楽な事は良い事だ。
さて、そろそろ帰ろうかな。バックパックから帰還のスクロールを出し
「リターン!」と唱えた。
グリムハルトの宿屋前に戻った。
まだ昼下がり頃だろうか。少し早かったかな?
罠開けの失敗が多いと、心理的にストレスが大きいのかもしれない
無意識に早く切り上げてしまったらしい
「まぁこんな日があってもいいよね。」そう口にして宿の部屋へ戻った
さーて、お宝鑑定の時間。
いつものようにエンチャントリーディング(魔読)を使って
収穫品の鑑定を始める。
先ずはイヤリングから「エンチャントリーディング!」と唱え
指先でイヤリングをなぞり、魔力の流れを感じ取る。
今までより、強い魔力の流れ!
これは体力強化Cランクレベルだと思う。
初心者ダンジョンで取れていたマジックアイテムは軒並み
Gランクレベルのゴミだらけだったから
脳内に報酬系のドーパミンがドバァしてる感覚。
明日からの鍵開けのモチベに繋がりそう!
と浮かれている場合ではない。次々とマジックアイテムを鑑定していった。
今日の収穫の結果から言うとCランクからFランクまでの
マジックアイテムが出るようだ。続けていかなければ何とも言えないけれど
確実にトラップも難しくなっているぶん収穫もよくなっていると考えていいかもしれない。
器用さCランクの指輪が出たので人差し指に通してみる。
うーん若干ダブついてる。中指にはめてみると、丁度良かった。
次からはこの指輪をはめてピッキングしよう!
成功率上がるかなぁ、うきうきした。
さて、自分に関係なさそうなマジックアイテムを
いつも通り売りに行こう。いつもの道具屋に売りに行く。
店主は当たり前のように何時もと同じような金額で買い取ろうとする。
いやいや、Cランク品をGランク価格で買い取りって…
鑑定スキルがないのか、ぼったくろうとしているのか。
「すみません少し考えますね。」
そう言うとマジックアイテムをバックパックにしまい
道具屋を出た。
餅は餅屋というし…
マジックアイテム専門店で売ったほうがいいかもしれない
俺はマジックアイテム取扱店で同じ物を鑑定してもらった。
掲示された金額は…銀貨10枚!思ったより多い!普通ならこんな感じなのか。
今後はここの贔屓になろう。
「ありがとうございました、またのご来店をお待ちしております。」
ここの店員さんは言葉も丁寧。
「こちらこそありがとうございます。今後ともお世話になります。」
そう言って頭を下げてマジックアイテム屋を出る
昼下がりの街の通りを歩く。
なんか充実してるな。
普通の人というのは毎日をこんな感じで過ごしているのだろうか?
生前の苦難に満ちた日々を思い出しかけたけれど、急いでかき消した。
今の俺はアリシアちゃんなのだ!
それ以上でもないしそれ以下でもない。
そう思うと両の腕をぐーっと上に伸ばした
夕食までにはまだ少し時間がある
宿へ戻る前に寄り道しよう
そういえば冒険者になってからまだ一度も
冒険者ギルドの依頼掲示板を見たことが無かった
何となく物見遊山でギルド前の掲示板へと向かう
人だかりもなく、掲示板を見ているのは2・3人
ギルド掲示板に依頼が溢れるのは、朝と夜なので
この時間帯は人も依頼も疎ら。
せっかく冒険者になったのだから
たまには気晴らしで依頼を請けてみるのもいいかもしれない。
生前もそうだったけれど一つの事をやりだすと
視野が狭くなってしまう癖がある。
残ってるのは、厄介な依頼とめんどくさい依頼と無茶な依頼だけ
一通り目を通してそう感じた。
余りものには福が…ない!
時間も潰せたことだし、空の色もぼちぼち変わり始めている。
かえろっかな。
宿に戻り夕食をとり、部屋に戻りシャワーを浴びて
ローブを着て椅子に座る。
髪を自然乾燥させながら明日は何をしようかな?
色々な候補が頭を駆け巡る。
色々考えているうちに眠気が来たので、ベッドに横になった。