迷惑な客
「あのねぇ…困ったら訪ねてきてって言ったよね?」
私は機嫌悪く言う。
「ごめんごめん!でもさ冒険者ギルドって一人で行くの
躊躇するじゃん?」
ロディーは悪気なく言う。
「はぁ。まぁそんな用事で来たのは許すけど
暫く待って、それであーちゃんが来たら帰って。」
「あーちゃんってだれ?ちょっと記憶見てみるわ。」
そういうとロディーは記憶を読む画面を出す。
「あー!!やめて!!やめて!!ちょっと恥ずかしいから
その記憶を覗くのはやめて!!」
私は顔を真っ赤にして止める。
「なんで?……ハハーン。お前の好きな子だったりするのか?」
ジト目で私を見てくるロディー。
「違うわッ!なんというか親子とか姉妹みたいな関係。
変な詮索するなら、一緒に行ってやらないぞ!」
こいつと話してると生前の自分が少し出てくる。
それはたぶん仕方のない事なんだろう。
「OKOK!ちょっとからかってみただけだ、悪かったよ。」
ロディーから悪気が感じられない。だからこそ質が悪い。
(時間経過)
「まぁこれだけ待てば今日はもう来ないと思う。
君の為に冒険者ギルドへ行こうかロディー。」
「おっ名前呼んでくれたな!行こうぜアリシア!」
こいつガッツリ懐に入りくるんだよな。
タイプ的には苦手なタイプだ。
しかし連れとなった今は、そのくらいは我慢しなければならないのだろう。
私達は連れ立って冒険者ギルドへ向かった。
道すがら、冒険者掲示板がある。
「これは依頼が張り出されている掲示板ね。
ここで、これと決めた依頼を剥がしてギルドの中へ持っていく感じね。」
「へぇーそうなんだ。」
ロディーは掲示板を眺めている。
「まぁ冒険者になってからだからね、君はまだ冒険者じゃないから。
協会へ行くよ。」
「はいよ。」
私達は冒険者ギルドに併設されている協会へ向かった。
「アリシアもさぁ協会で適性受けたの?」
「いえ、私は取り合えず金稼ぎ、まぁロディーも考えたことだよね
で、やはりそこそこ金が稼げるのはダンジョンの宝箱を開けて
マジックアイテムを売る。これが効率良さそうだと考えたので
適性は受けず初めからスカウトという職業でギルド登録したよ。」
「へぇー考えてるなぁ。」
「ロディーは生前MMORPGしたことなかった?」
「あーやってたよ。」
「クエストこなしたり色々金稼ぎの方法はあったけど。
宝箱開けてマジックアイテム売るのが金策で一番効率よかったんだよね。」
「なるほどなー、アリシアは前世の知識フル活用してるな。
俺もそういう癖付けた方がいいかもなぁ。」
「まぁ何れにしても得意な向いてる職業に就くのが
色々応用が利くと思うんだよね。
私も初期の金稼ぎの為にアサシン選んでよかったと思ってるけど
適性を調べてないから、その点だけは後悔してるよ。」
「そっか、まぁ色々だよな。」
「あそこが受け付けだから行ってくるといいよ。」
「えっ一緒に言ってくれないの?」
「それぐらい一人で行ってきなさいよ…私は君の保護者じゃないよ?
こんな事で怖気づいてたら、冒険者なんかできないよ?」
「まぁそれもそうか、でも待っててはくれるんだろ?」
「あぁ、ここで待ってるよ、さっさと済ませてきて。」
「わかった!行ってくるぜ!」
そういうとロディーは受付に走っていった。
(時間経過)
2時間ほど経っただろうか。
「おーいアリシアー!」
大声で私の名前を呼びかけながら走ってきた。
「ちょっと!あのね!大声で名前呼ばないでくれる!
ほら周囲見てみなよ、みんなこっち向いてるでしょ!」
「ごめんごめん。結果伝えるよ。魔力はキャパはそこそこあるらしい。
勧められた職業は賢者。バフ・デバフをかけながら回復する職業だってさ。
賢者って言うと前世のMMOは攻撃魔法と回復魔法の職業だったのにな。
この世界では、ちょっと違うみたいだな。」
「いいじゃん。PTでは必須の職業だよそれ。
どう?それにする?」
「そうだなーシェフのお奨めとか外れがないじゃん
やっぱりお奨めに大人しく従った方がいいと思うんだよなー。」
「じゃあ早速登録に行こう。
登録が済むと私の胸にかかっているような冒険者カードが発行されるから。」
私は胸にかかっている冒険者カードを見せた。
そう言うと私たちは冒険者ギルドへ行った。
受付嬢にロディーの冒険者登録を願い出た。
受付嬢は書類を用意しながら
「貴方のチームへの登録はしなくても宜しいのですか?」
「えぇ冒険者登録だけで。」私が言うと
「えっ?チームって何?」
「うーん、よく組むPTメンバー登録みたいなものです。」
「えっ!じゃあ俺も入れて…」
「ダメです。このチームは私とあーちゃんだけのチームなので
君を入れる予定はない。」
私は被せるように発言する。
「なんだよケチだなぁ。」
「まぁチームに入れなくてもPTを組むことは多くなるんだから。
それでいいでしょ?」
「ふーん二人の世界に割り込まないでくれって感じ?」
シシシと笑いながら私に言う。
「あのね、そういうこと言うなら手伝いしないよ?いいの?」
私は少しムッとしながら言う。
「冗談だよ冗談。冗談アリシア真に受けすぎーw」
カラカラと笑っている。
一々神経に触るやつだな。本当に連れにしてよかったのか?
今更ながらに頭をよぎる。
「依頼によって名声値は上がる。それで値によって冒険者ランクが上がる。
あと試験によってランクが上がるよ初めは誰もがFランク。
ランクを上げるためには日々是精進。励むんだよ。」
「えっアリシアが手伝ってくれてパーッとランク上げてくれるんじゃないの?」
まぁ確かにMMOでのレベリングとかはよくある話だ。
「あのねぇランクだけあげても強敵依頼に当たったらどうするつもりなの?
全部おんぶに抱っこでいるつもり?君がBランクになるまでは自分で実力つけてね。
一緒に行動するのはその後から。
私だってここ来てから1からアサシンAランクまで来たんだからね?
因みにアサシンは上級職でクラスチェンジ職。かなり苦労したからね。
幸い本屋もあって、サルでもわかるシリーズみたいなもんもあるから
それで先ずは勉強するといいよ。
金貨10枚あれば当分生きて行けるから。」
「マジかー。俺さぁ勉強嫌いなんだよな。」
明らかにテンションが下がってる。
「勉強嫌いって事は学生でこっちに来たの?」
大体社会に出ると、もっと学んでおけばよかった学びが恋しいと思うのが世の常だ
勉強が嫌いなのは学生と相場が決まっている。
「あぁ大学3年の時にトラックに轢かれて
転移した感じ。」
「なんかベタだね。なろう系でよくあるやつ。」
「まぁね。」
「まぁ学校の勉強と違って、実際に実利に適った勉強だから
多分面白くなっていくよ。無駄じゃなく、絶対必要なものだからね。」
「そっかー。わかった。ところでアリシアはいくつで転移したん?」
「50歳だよ。」
「?!マ…本当ですか。なんかすみません…ため口聞いてしまって。」
急に鹽らしくなるロディー、そういう上下関係はちゃんと気にするタイプなんだな
「気にしなくていいよ、私は相手が尊敬できる相手なら
ため口使ってもらっても構わないし今まで通りでいいよ。
急に改まれても気持ち悪いし。」
「そ…そっか、じゃあそうする。」
「ちなみに依頼は朝と夜が多いね今時分昼頃になると
厄介な依頼ばっかり所謂残った依頼だからやめておいた方がいい。
早速本屋へ行って本を購入して勉強するのがいい。
君も魂が肉体に入ったタイプだよね?
以前のロディーの記憶も引き出せるはずだから
本も読めるはず。」
「OK!色々教えてくれてサンキュッ!
早速本屋行って本買って勉強するよ
早く追いつけるように頑張るよ。」
軽口叩くだけの奴かと思ったら意外と真面目な面もあるんだな。
「じゃあ解散だね。私は何時も通り夕方までダンジョンでトレハンしてるよ。」
「わかった!気をつけてな!」
「勿論。」
そして私はダンジョン。ロディーは本屋へ向かった。




