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引き籠りの旅立ちとそれから

あれから数日が経過した。もう俺は限界に来ていた。

先ず前世の体験で人が信用できない。常に礼儀正しく振舞うのも苦痛だ。

あと堅苦しい生活も過度なストレスが溜まる。

アリシアは引き籠りだったが、本を読むのが趣味だったようで

博識の部類だ。

俺はアリシアの父に相談することにした。

「私、冒険者になろうと思います。」

父エルマーは即座に反対した。

危険な冒険生活より、この村で安楽に過ごして貰いたい。

そう思うのは親心だろう。

「私は一人で生きて行けるかどうか試してみたいのです。」

その言葉に、一度も我がままを言ったことのない子だ。

意見を尊重してやるべきだろうか…エルマーは悩んだ。

一度自立を覚悟したのだ、ここで拒否してしまえば

私たちが生きているうちはいいが

私たちがこの世を去ってしまった時、この子はどうなるのだろうか?

父エルマー悩みは一瞬で解決した。

「わかった、やりたいようにやってみなさい。だが一つだけ条件がある。

無理をして命を落とさない事。」

「分かりました、父上・母上を悲しませるようなことは致しません。」

俺は答えた。

そう言うとエルマーは奥の宝箱から宝物をいくつか出してきた。

「家宝短剣は先日渡したな?

これはインビジブルローブ魔力を込めれば周囲と同化して不可視になるローブ。

不審者がいる時も役に立つ。姿を消したい時はこれを使いなさい。

ただ、消えるだけでお前はそこにいる、攻撃を受ければ攻撃は当たる

気をつけなさい。

そして帰還のスクロール。これは何度でも使えるが

一度行った場所にしか行けないので注意が必要。

重ねて言うが命は大事にしておくれ。私たちの生きがいはお前だけなんだ。」

そう言うと銀貨20枚を渡してくれた

村長とはいえ、銀貨20枚はかなりの金額、それを旅支度として用意してくれた。

たまには顔を見せておくれよ。」

「はいお父様、色々とありがとうございます、色々な冒険譚を父上に語れるよう

頑張って生き抜いていきたいと思います。」

「うんうん、お前はしっかりしているから、念は押したがそこまで心配はしていない

楽しく良い冒険生活をな、母さんには上手くいっておくよ。」

「父上感謝しています御息災で!」

俺は家を出た。

エルマーは思っていた。アリシアは変わったな…正直将来が心配だった。

でも目標を見付けて自ら動きだしたのだ。応援しない道理はない。

俺は早速村を出て街道を進む。うっすらと林に囲まれた、未舗装の道を歩いて行った。

辺境の村とはいえ、数十分に一度人とすれ違う。

村ではなく、規模の大きな街へ行きたいな。そう考えながら街道を進む。

何時間歩いただろうか。12歳の女の子に長丁場の徒歩はきつい。

お誂え向きに、木の切り株があった。俺はそこに座り休憩をとった。

林の間から見える空は蒼く白い雲が棚引いていた。

喉が渇いていたが、生憎水筒の用意をしていなかったので水はお預けだ。

初めての冒険では学ぶ事が多い、アリシアの記憶にある本に書いてあったのは

壮大なスケールの物語ばかりで、実践的な冒険者としての説明は無かった。

体力が回復したので、切り株から腰を上げ、歩みを進める。

ちなみに立ち上がる時「どっこいしょ。」と呟いた。

中身はおっさんだからな。

街道は一本道だ、辺境の俺の居た村への専門ルートと思われる。

半日歩き日が暮れる頃、村が見えてきた。

拠点にはできないな。ただ夜の帳が下りる前に宿泊をしたい。

俺は村の中へ入り、宿屋を見付けた。

カラン!カラン!ドアを開けると扉のベルが鳴った

「いらっしゃいませ!」元気のいいおばちゃんの声が聞こえてきた

「宿泊かい?」

「はい宿泊希望です。」

「一泊二食付きで銅貨五枚だけど手持ちはあるかい?」

「はい。大きいのしかないですが宜しいですか?」

そう言って私はバックパックから一枚の銀貨を出した。

「勿論かまわないよ!」

そう言うと500銅貨と100銅貨4枚で95枚分の銅貨を渡された。

「夕飯時だし、ご飯食べていくかい?」

「そうですねお願いします。」

食事後俺は部屋へ案内された。

俺は暇だった。前世ではネットがあり、ゲームもアニメもあった。

それだけで永久に時間を潰せたのだ。しかしこの世界にはない。

ぼやいても仕方がない。まぁこの先の展望でも考えるか。

俺の持っている能力というか魔法は時間操作だ。

つまり俺にも魔力はあるという事だ。

ここで予想してみよう、魔力切れを起こした時リリースしなくても

勝手に魔力が切れるのか。俺は早速試してみることにした。

「クロノコントロール、スタティック!」俺は唱えてほっといた。

うん体感30分もすると魔力に限界が来て、リリースする事なく解除された。

まぁチートみたいな能力だし万能ではないよな。

本格的に冒険者を目指すのなら

とにかく魔力量を増やすトレーニングをしないといけないな。

そんな事を考えているうちに俺は眠りについた。

翌朝朝食をとると宿のおばさんに礼を言い

再び街道を歩き始めた。確か一日ぐらいかけて歩けば

割と大きな都市グリムハルトがあるはずだ。

相変わらず休みながら街道を歩いて行くと

夕方ごろに、とても明るく大きい街が見えた。

「あれがグリムハルト!」俺はいつの間にか早足になっていた。

グリムハルトに着くと街中の賑やかさと人の多さに圧倒される。

まぁ個人的には人は嫌いなんだが。便利さには勝てない。

早速宿屋へ行く。受け付け嬢が話しかけてくる。

「お泊りですか?一泊二食付き銅貨十枚になります。」

まぁ街だから滞在費が高いのも納得だ。

「それではこちらで。」俺はバックパックから銅貨を10枚カウンターに出した。

「それでは部屋へご案内しますごゆっくり♪」

俺は部屋に入る。明日あたり冒険者ギルドに登録だな。

人と組むのは苦手だ。俺の能力は時間停止、完全にアサシン系向けの能力だ。

インビジブルローブもある天職だろうな。ギルドはアサシンで登録しよう。

さて、後は魔力の高め方だな、色々な方法あるとは思うが

アリシアの知識にも見当たらない。じっくり調べていくとしよう。

夕食を取り、部屋でシャワーを浴び眠りについた。

翌日俺は冒険者ギルドにいた。

「あの冒険者登録をしたいのですが?」受付に聞く。

「どのような職業で登録されますか?」受付嬢が問う

「スカウトでお願いします。」

「分かりましたスカウトで登録しますね。

冒険証を発行するので少しお待ちください。」

「分かりました。お名前をお伺いしても?」

「アリシアと申します。」

「それでは少々お待ちくださいね。」冒険証を作ってくれるようだ

いきなりアサシンで登録したいところだけれど

スカウトや盗賊で修練を積んでからじゃないとクラスチェンジできないらしい。

「はい、アリシアさん、それではスカウトFランク冒険証です。」

「ありがとうございます。」俺は冒険証を受け取った。

その瞬間思った、ん?俺って鍵開けの技能もトラップ回避の技能もないよな。

そこからかー、急がば回れという言葉があるが回りすぎだろ…

エルマーさんのお陰で金銭的にはかなり余裕がある。

鍵開け専門書を購入し学び、 鍵開け用のピッキングツールを購入。

トライアルアンドエラーで実力をつけていくしかないか。

早速書店へ向かった一週間でマスター初心者鍵開け入門という本を購入

鍛冶屋でピッキングツールを作成してもらった。

そこから一週間俺は宿屋にこもって、猛勉強をした。

初心者レベルの知識は何とか詰め込んだ。

後は実践だな。初心者向けのダンジョン初心者試練の洞窟で

そこらじゅうで強度の低いマジックアイテム宝箱が沸いているとのこと。

まぁ売っても二束三文にしかならないだろうが、練習には持って来いだ。

俺は一人で初心者の試練の洞窟の前に立っていた。

松明に火をつける。早速ダンジョンに突入。

入って一つ目の部屋早速宝箱がある。

俺には考えがあった、施錠に失敗して罠が発動したり

そもそもがミミックだったりした時はヤバいので

あらかじめ時間を止めておく、そうすれば安全だ。

「クロノコントロール、スタティック!」

よし、施錠を開始する。ピッキングツールをカギ穴に差し込み

教科書通り進めてゆくカチリと箱が開く音がした。

「リリース!」そう言うと俺は宝箱の中身を確認する

イヤリング一対と銅貨5枚だ。ともにバックパックに入れる。

これを何度も繰り返した。

本に書いてあった。ミミックの時は手応えで分かる。

鍵穴にピックツールを差し込んだ瞬間鍵穴的な無機質な感じではなく

明らかに生物の感触がある。その時は離れた場所でリリースして

次の宝箱へ行く。

罠解除失敗の時もそうだ。失敗した時は感触で分かる。

その際は同様離れた場所へ行きリリース。

すると爆発したり矢が飛んできたり毒ガスが噴出したり。

この能力がある限り、安心して宝箱開け放題だ!

俺はこんな日々を続けた、しかしある時ふと思った。

俺はマジックアイテムを売る時に鑑定は道具屋の店主に

任せっぱなしだ。ひょっとしたら俺損してる可能性もあるよな…

実は強度が弱いなりに、いいマジックのついてるアイテムも

二束三文で買い取られてる可能性もある。

自分で鑑定方法を覚えた方がいいか…

取り合えず本屋へ行くか…しかし調べ物をするときのめんどくささよ。

前世のようにネットが存在しないのは本当に不便だ。

調べてみたところ鑑定方法には2種類あるらしい

スキルとしての鑑定と魔法による鑑定だ。

前者は経験に頼るもので熟練すれば超高確率でほぼ正しい鑑定が可能。

後者は初心者でも魔力の流れを読み取り高確率な鑑定が可能。

一長一短だが、駆け出しとしては後者を選んだほうがコスパがよさそうだ。

何故ならスキル鑑定となると

熟練の鑑定眼が必要となるからだ。

サルでもわかる鑑定魔法という本を購入し宿屋で読み進めた。

この世界にもサルが存在するのか?そんな事はどうでもいいか。

エンチャントリーディング(魔読)という魔法らしい

意外な事に魔法も熟練するほど精度が上がり熟練すれば超高精度での

マジックアイテム鑑定ができるそうだ。こちらにして正解だったな。

魔力の流れを読み取りどのような効果を纏っているのかが分かるようになるらしい。

魔力の流れ方を感知できるよう色々な効果を頭に叩き込まないとな。

そんなこんなで半年ほど経つ頃には鍵開けの腕も上がり

スカウト冒険者ランクはDとなっていた。


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