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あーちゃんの内情とお姉様

私は城門の前…というか城への往来の邪魔にならないように

道の横で待機していた。

暫くすると、城門から見慣れた質素な冒険者服を身に纏った少女が出てきた。

何やら城兵に詰め寄っている。

会話の内容は何となく察しが付く。私は城門に歩み寄り声をかける。

「姫様。」私はそう言うと姫様は

「先生!」姫様の注目がこちらに向くと城兵はほっとした表情を見せる。

「先生はいつ来たの?」姫様は私に問いかける。

「えっとですね、実は拠点をこの街に移すことにしまして

既に二日ほど宿屋に滞在しています。」私が答えると

「えっ?何で?!私たちは先生に追い抜かれてないし

そんなに早く戻れるってどういうことなの?」

最もな質問、しかしここは往来のある城門前だ。

「私の宿屋へ案内します、そこで色々話しましょう。」

私が提案すると

「わかりました!」姫様は了承してくれたので私の宿屋へ向かった。

部屋へ入るなり、姫様はベッドにダイブした。

「なんかちょっと硬いですね、もっといい部屋に住めばいいのに。」

私は苦笑いしつつ、先ほどの話の続きをした。

「私はリーブという書を持っていて、過去行ったことある場所なら

大体移動が可能なのです。」私が説明すると姫様は

「えーじゃあ私たちが徒歩で帰って来たの無駄な苦労じゃないですか?

何で送ってくれなかったの?」それは御尤も。

「でも王様直属の騎士2人いましたよね?

これはかなり有用な古のマジックアイテム

つまりアーティファクトだと思われるので

情報がどこから漏れて、狙われるのは嫌なのですよ。

この情報は私の両親と姫さまだけしか知りません。

正直な所、私は騎士殿をあまり信用してはいませんので。」

そう言うと姫はこの上ない笑顔で

「私たちの秘密ですね♪」と言って上機嫌で両の手を握ってくる。

先ほどまでの疑問はどこへやらだ。

「さて先ほどもお話ししましたが私はここを拠点としますので

緊急の用事があった場合はこちらへお越しください。」

私の言葉に姫様は

「うんうん♪」上機嫌で頷いている。

「あと提案があるのですが、もう私は先生ではないので

他の呼び方で読んでもらった方がいいと思うのですよね

姫様に何かいい案はありますか?」

私は姫様に聞いてみる

「お姉様!」即答だった。

「なんか、こそばゆいですね。」私は柄にもなく照れた。

まぁでも先生よりはましなのかもしれない。

「それでは私が姫様を呼ぶ時の呼び名も考えないとですね

街中で姫様と言っていたら、素性がバレる危険性があります。」

うーんと少し悩んだ後に

「じゃあ、あーちゃんって呼んで!」と姫様は言う。

とても恐れ多い事なのだが、姉妹という設定で

世間の目を欺くには妙案かもしれない。

「分かりました私とあーちゃんは姉妹という設定で

これからお付き合いしていきましょう。」

「はーい!」姫様は元気よく返事をした。

「ところで疑問だったのですが、あーちゃんは

どんな職業を目指しているの?

剣技に鍵開け罠解除、少し不思議な組み合わせですね?」

私は尋ねてみる。

「あーそれはギルドでは職業別に分けられているのよね?

それで職業と似たような意味でクラスというものがあるの。

先生はクラスアサシンとも言い換えられるわ。

実は私のクラスは特別で、職業にはないの。

私のクラス名はずばりプリンセス!これは血筋の寄るもので

王家の者にのみ与えられるクラスで男はプリンス・女はプリンセス。

私は姫なのでプリンセス。

普通は職業に沿ったスキルしか覚えられないのですけど

私は全てのスキルを覚える事が出来る性質があるんですって!」

あーちゃんはドヤ顔をしている。

「なんと!それは凄いですね!」

「これから沢山学んで、お姉様を沢山サポートしますから!」

姫様が言う

「頼りにしてますよ、あーちゃん♪」

私がそう言うとあーちゃんは自分で見栄を切ったのに

照れ臭そうにしていた。こういう所がかわいいんだよな。

私は微笑む。

「さて今日はどうしますか?」私が問うと姫様は

冒険者ギルドに登録したいといった。

何でも私と色々冒険したいとの事

あーちゃんの学んだことの腕試しになるし

何より面白そうだから。それが理由らしい。

登録もフルネームでなければ問題ないだろう

アメリアという名前は一般的でどこにでもいる女性の名前だ。

「登録時は剣士か戦士辺りで登録されてはいかがですか

馬鹿正直にプリンセスで登録すれば大ごとになりますからね。」

「そうですね!そうします!

それでは早速冒険者ギルドへ登録に!」

あーちゃんは思い立ったら行動の典型なんだよな。

「分かりました、善は急げと言いますし行きましょうか?」

2人は横並びで街中を抜け冒険者ギルドへと向かった。

ギルド受付に、私があーちゃんの冒険者登録をお願いすると

受付嬢は書類を持参して私に手渡す。

あーちゃんはカウンターに、ちょっと背が届かないので

カウンターの側面に紙を押し付け記入している。

記入を終え私に

「はい。お姉様!」そう言って渡してきたので

私は受付嬢に提出した。受付嬢は処理をし、あーちゃんの冒険者証が発行された

Fランク剣士とある。それを姫様に渡す。

「わぁ!」初めての冒険者証に目をキラキラさせている。

可愛いなぁ!

姫様の剣術の実力はAランク相当と聞いているので

基本職は協会の試験を受ければAランク発行してもらえるのではないかと思い

あーちゃんに聞いてみると。

直ぐ試験を受けたいとの事だったので、試験を受ける事となった。

そしてあーちゃんの胸に輝く冒険者証にはAランク剣士の文字が。

あーちゃんはとても満足そうだ。

あーちゃんはこの勢いで依頼を請けたいと言ったのだけれど

もう時刻は昼下がり、今からではよい依頼は残ってない事を説明し

再び私の宿へ戻った。

さーて何を話そうかな?私がそう思っていると

姫様が口を開いた。

「お姉様に私の家庭事情を少し話しておきたいのですがいいですか?」

あーちゃんから申し出があった、私は二つ返事で話を聞く事にした。

「現在私の家族は長兄長女次男末娘の私の4人兄弟です

因みに母は私の出産で命を落としました…。なので4人兄弟です。

父上が基本的に過保護なのは4人の子供たちを何が何でも守りたいから

だと思うのです。

お姉様に失礼な仕打ちをするのも、恐らくその思いの延長なんだと思います。

お姉様には不便をかけますけど、本当に会いに来てくれて嬉しいです♪」

あーちゃんは心の内を打ち明けてくれた。

なるほど、辻褄があう。特に王様のあーちゃんへの過保護と頭が上がらないのは

女王の忘れ形見であると同時に末っ子である事が強く作用しているのだ多分。

「何かご家族に相談できない事や困りごとがあったら、私はここに滞在するので

いつでも会いに来てくださいね♪」私が笑顔で言うと

あーちゃんは無言で抱き付き私の胸に顔を埋めてきた。

私は片手であーちゃんの背中を優しくなで

もう片手は、髪の毛を優しくなでた。

そのまま暫く時が経ち私はあーちゃんに質問をした。

「これからは、何を学ばれる予定ですか?」私が聞くとあーちゃんは上を向き私の顔を見て

「神術を学ぼうと思ってるの!

そうすればお姉様とダンジョン行く時に役に立つでしょ!」

「それは頼もしいですね。楽しみにしていますからね。」

私がそう言うとあーちゃんは

「うん!」と言い再び私の胸に顔を埋める。

まぁこれは私の生前の知識なんだけれど

王族というのは、内部で派閥による権力争い等で

とてもギスギスしているという知識がある。所謂お世継ぎ問題というやつだね。

その過程で身内にすら命を狙われる事もよくある。

そんな中で育ってきたのなら母親は早逝しているし

甘える事が出来ない環境で育ってきただろうし

想像以上の困難の中生きてきたのだろう。

私も生前は愛情を受ける事なく育ったので

何となくその気持ちは理解していると思う。

子供の頃愛情を注がれなかった者というのは

将来において愛情を理解できず。

受け取る事も出来ないようになり

与える事も出来ない愛とは無縁の存在となってしまう。

前世の私がそうだったように。

あーちゃんは私の母性本能を擽ってくる。

私で良ければ、あーちゃんの愛情を満たしてあげたい。

私は撫でていた手をあーちゃんの背中に回しぎゅっと抱きしめた。

暫くするとスースーという寝息が聞こえてきた。

あーちゃんは私の胸に抱かれて安心したのだろうか。

赤ん坊の場合になるけれど、左胸に頭をつけ抱っこすると

心音に安心して眠りにつくのは常識だ。

赤ん坊ではないけれど張りつめているであろう姫様の日常。

少しでも安らげたのだろうか、それなら私は嬉しい限りだ。

私はあーちゃんをお姫様抱っこしてベッドに運ぶ。

私は横に椅子を持って行き、あーちゃんの寝顔を眺めていた。

日も傾き薄いオレンジの光が差し込む頃

「んー…あっ…」起きたあーちゃんと私の目が合う

「おはようあーちゃん♪」私が言うと

「あの…ごめんなさい…」あーちゃんは謝る

「何で謝るの?私はあーちゃんの寝顔を堪能出来てハッピーでしたよ♪」

私が言うと

「むー…」恥ずかしそうにあーちゃんは顔を逸らしながら

「折角お姉様との時間なのに…勿体ない…」そう呟く

「これからはいつでも会えるんですから

甘えたい時は甘えてもいいんですよ

私もあーちゃんから甘えられるのは好きですから。」

私がそう言うと

「うん…」あーちゃんは顔を紅潮させて頷く。

「さて、それではそろそろお城へ戻りましょうか

あまり遅くなると次回から門限とかつけられるかもしれませんよ?」

私が言うと

「それは大変!帰る!」そう言ってベッドから出ると

あーちゃんはふらついたので私が支えた。

「あ…ありがとう…お姉様…」また恥ずかしそうにしている。

そして二人は城門まで行き

「それではまた」と挨拶をして別れた。

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