黄金のタロット
黄金のタロット。それは占いの範疇を超えた因果律を捻じ曲げ
本来違う未来を歩む予定を、その力で捻じ曲げる力がある
従って的中率は100%だ。持ち主は星詠みのモルガリス。
自分の欲望のために使用し、巨万の富と権力を手に入れた人物だ。
貴族や王族とのコネクションがあり主な顧客となっている。
今回の依頼主は異端査問官の正統派だ。
異端査問官の組織も一枚岩ではなく
過激派はタロットを利用して正常なる世界を構築するのが目的だ。
そして異端査問官の皮を被った内部異端者。
彼らの望む世界をタロットの力を利用して叶えようとしている。
私が手を貸すのは正統派だ。
他の二宗派は、自己の欲望が絡んだ独裁者みたいなものだ。
私はギルドに紹介され、正統派異端査問官に元を訪れた。
「よくぞお越しくださいました、私はアレクシウス・ヴァルデス
冒険者ギルドで委細は聞かれていると思いますが、何卒この世界の秩序の為
助力願いたい。我々が動くと権力者に目をつけられた時面倒な事になるので
裏の稼業の方にお願いしたく依頼の運び、何かご質問があれば。」
「初めまして冒険者ギルドからの紹介で罷り越しました
Aランクアサシンのアリシアと申します。
単刀直入にお聞きしますが、標的の居場所は御存じですか?」私は聞く。
はい、星詠みのモルガリスと言いまして店を構えております
地図をお渡しします故、任務の方お願いします
あとこれは、因果律を一瞬歪めるアイテムです。
一瞬なので危険な時にお使い下さい。」
そう言うと地図と因果律を曲げるとされる魔法石を渡された。
私は早速、地図を頼りに店に向かう。
店には意外と簡単につけた…しかし…
何だ…この長蛇の列、大盛況といっていいのだろうか
これは長時間かかりそうだ。私は人が途切れるまで只管待った。
最後の客が中へ入って行く。私は並んでいる振りをして待った。
最後の客が出て行き私は擦れ違いで店の中へを入った。
椅子に座るよう促される。私は言われた通り椅子に座る。
「ようこそ星詠みのモルガリスへ。
早速悩み事を聞かせて頂戴。」
テーブルにはタロットカードが無造作に置かれている。
星詠みのモルガリスはタロットを両手で混ぜ合わせ
纏めて手にした、なるほどよく見るとタロットカードの裏表紙は
黄金の装飾がされている、名前の由来だろうか?
「悩み事は他でもありません、そのタロットカードを
渡していただけますか?」
私は真面目な面持ちで語りかける。
「ふふふ、なるほど客を装った、強盗といった所かしら。
曲者を始末して頂戴!」
そう言うと奥から傭兵らしき人物が二人出てきた。
私は席を立つとカタールを抜き臨戦態勢に入った。
男たちは一斉に襲い掛かってきた。
まぁ時代劇と違って一人ずつって訳にはいかないよね。
2人の傭兵は同時に剣を打ち付けてくる。キィン!ガキィン!
私は両手のカタールで片方ずつの剣を弾く。
男達は意外と手応えがなさそうだ。
私は2人の傭兵の手の腱を切りつけた、二人は剣を落とす。
そして急所を外して刺突する。
血は飛び散り呻き声と共に床に転がっている。
「意外と手応えがありませんね。
それでは黄金のタロットを渡してもらいましょうか。」
私が言うと
「ふふふ、なかなか腕が立つわね。
私と戦って勝てるかしら。」星詠みのモルガリスは言う。
どう考えても相手は不利な状況なのに、なぜ余裕なのだ?
星詠みのモルガリスは黄金のタロットをテーブルに表向きに並べる。
「正位THE HUNGD MAN。」モルガリスが言うと私は天井から伸びた
どこからともなく現れたロープで足を縛られ宙吊りになる。
なるほどタロットカードによって因果律捻じ曲げ事象を具現化させる能力か。
私はタロットの種類を知らない厄介だな。
「正位置THE HIGUH PRIESTESS。」
モルガリスの魔力が増強されるのを感じる。
時を止めないとヤバそうだ。
「正位置THE MAGICAN。」
火・氷・雷・土の魔法が現界する
それぞれ火と雷は球状に大きさを増し
氷と土は槍状に数が増えていく。
私に向かって解き放たれる瞬間を狙い時を止める
クロノコントロール、スタティック!
先ずロープをカタールで切断
そのまま魔法を迂回しモルガリスの心臓をカタールで貫く。
リリース!
時は動き出しモルガリスは胸から血を噴出す。
「正位置THE HIEROPHANT。」
一瞬にして出血が止まり傷が癒える。
クッ!こいつ思ったより厄介だ…。
ならば首を刎ねるか。
「逆位置STRENGTH。」
私の全身から力が抜ける。デバフか!
驚きで判断が遅れる。
「逆位置WHEEL of FORTUNE。」
何だこれ…体が重い、立っていられない…。
「正位置JUSTICE。」
モルガリスの手に剣が現れ剣の柄を握り構え振りかぶる。
「逆位置JUDGEMENT。
さぁ遊びは終わりよ、強盗は強盗らしく
私の裁きを受けるがいいわ。」
クロノコントロール、スタティック!
時を止め倒れ込んだ状態で力なくバックパックをあさる
あった。異端査問官から受け取った因果律を一瞬歪める魔法石。
ようやっとの体でバックパックから取り出した魔法石を
握った瞬間体の自由が戻る。
ザシュッ!私はモルガリスの首を刎ね
ゴトリ!首が地面に落ちる。
念の為タロットを回収しバックパックに入れた後
リリース!時間を動かす。
モルガリスの転がった頭は驚愕の表情で何かを喋ろうとしていたが
当然呼吸はできないので音にはならなかった。
数秒で事切れた。私は帰還の書を取り出し
「リターン!」協会の異端審問官の建物の前に飛んだ。
建物へ入り異端査問官アレクシウス・ヴァルデス氏の部屋をノックする
コンコンコン!
「依頼を請けたアリシア戻りました。」
「開いている入りなさい。」
ガチャリ扉を開けバタン閉める。
「約束の品お持ちしました。
こちらになります。」
私はバックパックから黄金のタロットを手渡しする。
「どうだったかね?」
「はい図らずとも戦闘になりまして、危険性を身をもって実感しました。
大掛かりに使われたらかなり危険な代物かと。」
「そうか…危険な目に合わせてすまなかった。
こちらで必ず封印しておく。
謝礼は冒険者ギルドに預けてある。
そちらで受け取ってくれ。」
そう言うと印の押された依頼達成書を渡された。
「それではこれにて失礼します。」
「助かったよ。ありがとう。」
「いいえ、どういたしまして。」
私は一礼して部屋から去り冒険者ギルドへ報酬を貰いに行く。
道すがら考えていた。
時間停止能力は万能だと思っていたけれど
先手を取られると成す術もなく
敗北する可能性が極めて高いことが分かった。
早めのバブロンならぬ早めのスタティック。
ギルドに着き達成書を渡すと報酬が貰えた。
私は宿屋へと戻る。
明日辺り姫様に顔を出してみましょうか。
お待たせするとまた村まで行きませんからね。
ただ、王様がどう考えているかだよねぇ。
姫様と会えるのは楽しみだけれど
その点で気が重い。そもそも会わせてもらえるのか?
明日になればわかるか…。私は宿屋の部屋へ戻った。




