最下層に咲き乱れるは猛毒冥府の花
親孝行を終えた私は拠点をグリムハルトからローゼンシュタットへ移していた。
宿の料金も物価も高いが便利さの魅力には勝てなかった。
それに今後姫様との繋ぎとつけるには便利だと思ったからだ。
姫様が城に到着されるまでまだ日があるだろうという事で
私は冒険者ギルドのクエストをこなすこととした。
姫様の元家庭教師が上位職とは言えCランクでは
姫様の品位に傷がつくというものだ。
名声を獲得してランクを上げておかねば。
グリムハルトの冒険者掲示板のゆうに5倍はあるだろうか、流石首都だ。
どれどれ、一通り目を通して目に付いたのは
依頼人は王都の宮廷医師、千腕の修練窟の最下層に鍵付きの扉があり
その扉の向こう側は冥府の花壇と呼ばれており猛毒の冥府の花が咲いている。
扉の前にはルームガーターとして巨大な毒蛇ナイトヴァイパーが生息
これを倒すか引きつけて扉を開錠し中へ入り冥府の花を3つほど採取してきて欲しいとの事
巨人の討伐は余裕だろう。開錠は余裕と思う。問題は巨大な毒蛇ナイトヴァイパーか…
大きさによってはカタールでは歯が立たない可能性大だ。
まぁその時は時を止めて、開錠して冥府の花を採取すればいいだろう。
報酬は金貨15枚とある、そこそこ危険な依頼なのだろう。
推奨はBランク以上つまりソロで行けばA若しくはSランクという事だ。
名声も入るだろうし、私の得意分野なので時間停止魔法もあるしソロでも可能だろう。
私はその依頼書を掲示板から剥がし、冒険者ギルドの受付へ持ち込む。
受付に依頼書を提出すると受付嬢が、奥から箱とポーションと錠剤を持ってきた。
「この依頼は毒による注意が必要な依頼となります。
巨大な毒蛇ナイトヴァイパーにも冥府の花にも猛毒があります
まず直前に強毒に耐性のある錠剤トキサリスを服用ください
それでも毒を受けた場合こちらの最高級解毒ポーションを重ねて飲んでください。
これだけ安全策をとれば無事に収集できるはずです。
そしてこの箱は魔法防壁の張られた防毒の箱です
間違っても冥府の花を直接バックパックに入れないでください。
この箱に入れてから収納してくださいね。」
「分かりました。」私はもろもろを受け取りサインをした後
千腕の修練窟へ向かった。
先ずは入り口で暗闇に目を慣れさせる。
最早エティン・オーガ・サイクロプスは問題ではない。
物の数秒で倒せる。
私は、あっけなく最深部へ到着した。
遠巻きに見ると今までと違った巨人がいる。
タイタンだ。
体色はサイクロプスと同じ、種族的に関連があるのだろう。
しかし異なるのは古代ギリシャの鎧兜を付けていて
知能がは高いため魔法を駆使してくる厄介な敵だ。
しかし私には時止めの魔法があるのでタイタンに見つかる前に
心臓をカタールでめった刺しにすればいいだけだ。
計画通りタイタンは時間停止により無傷で切り抜けていった。
さぁいよいよ最深部だ、目を凝らすとズルズルと音を立て
巨体の蛇が蠢いている。
毒蛇ナイトヴァイパーか。
太さ直径1メートル全長15メートルといった所か。
私は錠剤トキサリスをガリガリと嚙み砕いてのみ込む
即効性の物なのか聞いていなかったので
少し時間をおいて挑む。
毒蛇ナイトヴァイパーに近づくと、こちらに気づき下をチロチロ出し
「シャー!シャー!」と威嚇してくる
ダッ!私は地面を蹴り素早く横に回りこみ
首を斬り落とそうと試みる。
カシュッ!カタールは空しく鱗にその刃をそらされる。
その瞬間ナイトヴァイパーは素早く私に嚙みつこうとする
キィン!私はもう片方のカタールで牙を弾いた。
これは無理だな。
クロノコントロール、スタティック!
私が心で唱えると時間は止まる、その隙に後ろへ回り込み
バックパックからピッキングツールを取り出し
扉の開錠をする。
ギィィ…扉を開け
ギィィ…扉を閉める。
まぁずるい気はするが私の特権だからな。
目の前には冥府の花畑がある。
白と紫の花弁を持つ美しい花が目の前に広がっている。
周囲を見回すと紫がかった霧で覆われている。
毒の霧か、毒耐性薬トキサリスはよく効いているようだ。
毒による状態変化は出ていない。
花畑へ踏み込む、途端に濃い紫色の花粉が舞う。
「クッ…」どうやらこの毒高濃度になるとトキサリスだけでは
対処できないらしい。
慌てて花壇から出ると痺れる手でバックパックを開け
最高級解毒ポーションを飲む。
痺れが取れる。
花粉が散らないように優しく花を手折る。
3つ収集したところで預かっている防毒の箱に入れた。
私はリターンの書を読む。
ローゼンシュタットの冒険者ギルドの前へ飛んだ。
早速ギルド受付嬢に箱を渡す。
受付嬢は離れそっと箱を開け花を確認するとすぐ箱を閉じた。
「アリシアさんお疲れさまでした。
それでは冒険者証を預からせてもらっても宜しいでしょうか?」
受付嬢が言うので渡した。
「しばらくお待ちくださいね。」
そう言って奥のカウンターへ行った。
戻ってくると冒険者証を返してもらった。
アサシンAランクと金貨15枚
恐らく飛び級でアサシンAクラスになれたのは
そもそも依頼の名声値が高かった事と
ソロで達成したことが評価されたのだろう。
「それではまた宜しくお願い致します。」
受付嬢が言う。
「こちらこそよろしくお願いします。」
そう言うと私はギルドを後にして
これから拠点としてお世話になる宿を探したのだった。




