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思わぬ来客

コンコンコン!

暫くするとドアが開く

ギィ…

「夜分にどちら様かな?」

見知った顔の男がドアを開ける。

「夜分にすみませんアリシアです。ただいま、お父様。」

私は小声で言った。

「アリシアじゃないか!」

父は驚いて声が大きくなる。

「しーっお父様、深夜です、お静かに…。」

と私は言ったものの、悪いのは私だよなぁと思っていた。

一年近く音沙汰のなかった10代前半の娘が突然深夜に

帰宅したのだ。驚かない父親がいるだろうか?

「す…すまない、さぁ、何はともあれ中に入りなさい。」

父に促され私は実家の中へ入る。

「変わりませんね。」私は居間を眺めながら言った。

「そうそうには、変わらんよ。」父は安堵した表情で言う。

「腹は減ってないか?飲み物でも飲むか?」

矢継ぎ早に父は私を気遣う。

「いえいえ大丈夫ですお父様。お休みになられていたでしょう?

起こしてしまい申し訳ありませんでした。

詳しい事は明日の朝お話したいと思います。

ですので、今日は互いに床に就きましょう。」

私がそう言うと

「そうかそうか、部屋は掃除もしてベッドメイクもして

あの日のままにしてある、お前がいつ帰ってきてもいいようにな。

だから自分の部屋で休みなさい。」

アリシアの家庭は良い親子関係なんだな、羨ましい。

「ありがとうございます、それではおやすみなさい

お父様。」

「おやすみ、アリシア。」

私は父と言葉を交わし二階のアリシアの部屋へと戻った。

部屋に入ると掃除は行き届いており以前よりも綺麗だ

ベッドメイクもしてある。

私はベッドにもぐりこみ横になり、そのまま眠りについた。

(時間経過)

翌朝、いい香りで目が覚める。

一階から階段を伝って登ってきた朝食の匂い。

私はベッドから起き上がり一階へ降りる。

「アリシアおはよう、よく眠れたかな?」

「アリシアお帰りなさい、もうすぐご飯が出来ますよ。」

父と母が私に声をかける

「お父様お母様、おはようございます。

お母様には挨拶がまだでしたね、ただいま。」

私は、『んーっ』と伸びをした後、食卓の席に着く。

朝食を家族で囲み父と母に、この一年何をしてきたのかを語った。

冒険者となり、鍵開けで生計を立てていた事

上位職のアサシンになった事

そして幾つかの冒険者ギルドの依頼と

昨日まで姫様の家庭教師をしていた事

勿論、父と母がショックを受けそうな所は伏せて。

初めから父も母も驚きっぱなしだったが

特に姫様の家庭教師の件には驚いていた

名誉な事だし立派な事だと褒めてもらった。

2人とも感慨深そうだ。

アリシアは良い家庭に生まれ育ったなと重ねて思った。

そして私の所持金を口にすると父は母腰を抜かすほど驚いた。

金貨250枚。出立の時に村長の父から貰った路銀が銀貨20枚

因みに銀貨1000枚で金貨一枚だ。

何か悪い事をしたのではないかと困惑されてしまった。

姫様の家庭教師半年の事を改めて伝えると得心してくれた。

何しろ王家姫様の家庭教師なのだ、王様の面子もあるため

高い給金を貰っていただろう事は、想像ついたのだろう。

そして土産話しか持ってこなかったので恩返しとして

都市グリムハルトへ行き数泊する案を提示した。

案の定断られたが、恩返しがしたい!と強く説き伏せると

2人とも笑顔で承諾してくれた。

勿論後押しとなったのは金貨250枚だ。

この村に居続けたなら使いきれない金額だ。

本当は王都ローゼンシュタットにしたい所だけれど

それを言ったら、強く断られていただろう事は想像に難くない。

食事が終わると居間で土産話の続きをした。

食事の時はザックリと大まかな話を

居間では多少詳しく嚙み砕き一年間の話をした。

夢中で話をしていたら、いつの間にか日は傾いていた。

家族で夕食を食べ、それぞれ就寝の為部屋へ行く。

私は昨日、検めなかったクローゼットを開ける。

出て行った日のまま服が並んでいる

装備を脱ぎオレンジのシュミーズに着替える。

丈が短い。

現在普段着用している装備と違い伸縮性がないため

体も成長しているんだなと実感をした。

そして、ベッドで横になり就寝。

(時間経過)

翌朝外が何やら騒がしく目が覚める。

シュミーズから普段着だったワンピースにエプロンをつける。

これも丈が短い。以前はロングだったのが今では膝丈程になっている。

下に降りると、食事の支度は途中のまま父母はいない。

私は騒がしい外の様子を見る為ドアを半分開けてみてみる。

父母は、少女になにやら捲し立てられ気圧されている。

周囲には村人が集まっている。

後ろには剣を携えた男が二人。

私はその少女が誰なのか分かった。

忘れもしない、この半年ずっと目にしていた冒険者の服。

フードを被っている姫様だ。間違いない。

後ろの二人の顔にも見覚えがある

騎士ガルヴァンと騎士ゼノン。間違いない。

私は玉座の間でヴァルデン村、村長エルマーの娘アリシアと

出自を語った事を思い出していた。

うん。わかる。姫様ならやりそうだ。追って来られたのだ。

数日かけてこんな辺境の村へ来られたのだ…私を探しに。

「姫様!」私は外へ出ると直ぐに姫様は私に気づく

「せ…!…コホン。アリシアか。」

先生と言いかけ我に返り姫様としてのスタンスになる。

父母は私の反応を見て即座に両膝を折り姫様に、こうべを深く垂れ

「姫様ご無礼をお許しください。」と言う

すると村民は皆ざわつき、次々と姫様!と言いながら

地面に平伏する。

それは宛ら

「其の方、欲に目がくらみ余の顔を見忘れたか?」カーン!

「?!う…上様っ?!」

あのシーンを彷彿とさせた。

前世では祖父とよく見ていたあの時代劇だ。

閑話休題。

「皆、騒がず待つがよい。」

姫様はそう言うと私の手を掴み

「アリシア、お前に問いたきことがある。共に参れ。」

と言い私の家の裏へ連れて行かれた。

騎士ガルヴァンと騎士ゼノンは

困惑した表情で俯きため息をついていた。

あー姫様の、この言い回しは父も母も

心中穏やかではないだろう。そんな事を私は思った。

瞬間。

姫様は私にガバッと抱きつき

「せんせー…何で何も言わずいなくなったの…?」

私を真っすぐな瞳で見つめてくる。

「…王様のご命令で…やむなく…」

「分かってるよ!だから、今私がここにいるんですけど?!

父上に言われたから黙っていなくなったの?!」

目に涙を溜めながら食い気味に姫様は反論してきた。

これはきっと…王様にも食って掛かったんだろうなぁ。

容易に想像がついた。

「無茶を言わないでください姫様…私はあくまでも一冒険者です。

貴方にとって王様は父上かもしれませんが

私にとっては逆らう事など許されない雲の上のお人なのです…

姫様は私にとっても大切な人です。

それは最後の日お花畑で私が涙した理由、聡明な姫さまなら理解できませんか?」

私も誠心誠意、姫様の瞳をじっと見つめ答えた。

そうすると姫様はハッとした顔をして鹽ららしく

「…わかった…じゃあ週に一回は、遊びに来て。」

「それは王様がきっと…」

今度は私が被せ気味に言う。

「父上には絶対に邪魔させないわ!」

姫はきっぱりという。間違いないだろう。

姫様は有言実行だ。

「分かりました。私も姫様と、また御一緒できるのなら

それはとても嬉しい事です。」

目を細めながら私はそう言うと姫様の背中に手を回し

私も抱きしめ返した。

「絶対ですからね!」

そう言うと閉じた姫様の目から涙がこぼれた。

「約束します。ですから泣かないで、姫様。」

私はそう言いながら姫様の涙を指で優しく拭う。

「ぐすっ…じゃあ待ってるから…」

そういうと姫様は私のエプロンで涙の後を拭った。

そして私の手を引っ張り先ほどの場所へ戻る

姫様の指には私のお貸ししたマジック指輪と

首にはレッドスピネルのペンダントが輝いていた

「皆の者もうよい、おもてを上げよ、話は済んだ。健やかに暮らすがよい。」

そう言うと姫様は村を後にする。

騎士2人は私に向かい右拳を胸に当て、短く会釈をすると

姫様と共に村を後にした。

村は暫くの間、姫様の話題でもちきりだった。

私は父と母に姫様との関係は

家庭教師よりも信頼感のある仲である事を伝え

何故今日姫様がこの村を訪れたのかも話した。

やはり父と母は私と姫様が密談している間

私が城で姫様に無礼を働き

手打ちになるかと思い冷や冷やしていたそうだ。

まぁ姫様のあの口ぶりでは

そう思ってしまうよねと私は改めて思った。

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