姫様初の課外授業の引率
「クラリサさん、ダンジョンを照らす光の魔法はありますか?」
「はい、少々お待ちくださいね。
聖なる光よ、その輝きをもって暗闇を退けよ ホーリー・ルクス 」
小さい光の玉がダンジョンを明るく照らし出す。
「いかがでしょうか?」とクラリサさん
「ありがとうございます。」私は答える
「いいですか姫様、罠というのは広い所にも狭い所にもあります。
しかし共通して特徴があるのですが、想像がつきますか?」
気軽に聞いてみたけれど姫様はとても真剣な顔で悩んでいる。
暫く考えられたのちに答えられた。
「冒険者が…引っ掛かり易そうなところ?」自信がなさそうだ。
「正解です。姫様は賢いですね!罠を仕掛けるほうとしては
引っかからなかったら罠を作成する意味がないですからね。
広い部屋なら出入口。狭い通路なら冒険者が通る可能性が高いので
そう言った場所に仕掛けられていることが多いです。」
私は姫様を褒めながら、トラップ初歩を説明した。
「先生に褒められちゃった!」そう言いながら姫様は
右手を上に突きあげ、やったー!を表現をしている。
「それでは実践しましょうか、少し進みましょう。」
私が先頭、次いで姫様、しんがりはクラリサさん。
進んでいくと広間が見えた、通路で私は制止する。
「はい、それでは姫様に問題です。この先どこに罠が
潜んでいる可能性がありますか?」と私は聞く。
「はい!入り口と出口です!」今度は自信ありげに言う。
「正解です!姫様は呑み込みが早いですね!」褒めてあげると
「やったー!」と言ってまた右手を上に突きあげる。
「ふふふ、それでは具体的に解除についてですが
恐らく入り口は落とし罠です。
恐らく右手の壁に解除の石壁があります。
探してみてください。」私はヒントを与える。
姫様は右の石壁を触り探りつつ壁を押している。
すると、突然ガコンと壁の一部が押し込まれ
入り口の石畳からも同様の音が聞こえた。
「姫様お見事です!姫様は素質がありますね!」
私は褒める。人に物を教える時は褒めるのが一番良い
モチベーションが上がるからね。
「できましたっ!」キラキラした目で私を見る
何この可愛い生き物(相当失礼な思考だ)
私は念の為入り口に向かい、足元の石畳を叩く。
「姫様、先ずそこの足元の石畳を短剣の柄で叩いてみてください。」
私がそう言うと姫様は言う通り短剣の柄で床を叩くゴンゴン!
石がしっかり詰まっている音がする。
「それではこちらへお越しください。そして同じようにしてみてください。」
姫様はトコトコと歩いてきて、しゃがんでいる私の横に一緒にしゃがみ
足元の石畳を叩くコンコン!空間があるため音が違う。
「音が違いますね!」姫様は新発見宜しく軽く驚いている。
「そうですね、今ここは解除された落とし穴の罠の上です。
なので空洞がある音がします。確かめたい時はやってみるといいですよ。」
「はい!分かりました先生!」右手を上げて元気に答える姫様。
元気があってよろしい!
「広い間では片方に罠があると、概ね片方には罠がありません
入り口解除されれば出口は警戒され
入り口に罠がないと出口は気を抜いているという心理を
ついていると思います。
ですがセオリー通りではない事もあります。
一応出口も調べてみましょう。」私は説明する。
「はい!」姫様は元気に真剣な返事をする。
「それでは出口手前の広間の左右の壁面を調べてみてください。」
姫様は石壁を触り探りつつ壁を押している。
「ありませんでした!」一通り確認した姫様は私に言った。
「そうですね、それでは私が先頭でまた進んでいきましょう。」
「はい!」
三人は進んでいく。罠のレクチャーをしながら姫様は上手に罠を解除してゆく。
ある部屋に入ると宝箱があった。
「さぁ姫様今度は開錠の実践です。」
「姫様はマジックアイテムを身に着けていますか?」私は聞く
「何もつけてないです。」姫様は答える
「分かりました、罠解除には器用さが必要となりますので
恐れながら私のAランクの器用さの上がるエメラルドの指輪を
御装着いただいても宜しいですか?」
「えっ?!先生の指輪!いいのですか?」
「はい、使い古しで誠に申し訳ないのですが
器用さを上げておいた方が鍵の開錠成功率が上がります。
それでは、失礼ながらお手を…。」そう言うと私は自分の指から
指輪を抜き取り、差し出された姫様の指に指輪を通す。
「あっ…ありがとうございます…」
姫様は、なんか顔を真っ赤にして愛らしく照れている。
「えーとピッキングツールはお持ちになっていますか?」私が聞くと
「すみません先生…持ってきませんでした…。」
それはそうだ私が言ってなかったので私のミスだ。
「申し訳ありません、それでは私のピッキングツールを
お使いいただいてもいいでしょうか?」私は姫様に聞く。
「え?!先生のツール貸してもらえるんですか?!」姫様は驚く
「安物で申し訳ないですが、ご辛抱ください。」
私はバックパックからピッキングツールを出す。
「ちょっと待ってくだいね、まず構造を把握します。」
姫様に罠が発動したらとんでもない事だ。
鍵穴にピッキングツールを差し込むカリカリ…カリ…
「分かりました。この形状は右側にあるスイッチを
ピッキングツールで押した後、左側にある短い引っかかりを下から上へ弾いて
奥の凹みをピッキングツールで押してみてください。
姫様、くれぐれも順番を間違えないでくださいね。」
私はそう言うとピッキングツールの柄の方を姫様に差し出した。
姫様は柄の部分を両手で優しく持ち
「先生のピッキングツール!」と言いながらウットリしている。
「安物で申し訳ないのですが、解除に支障はないはずです。」私は言う。
「先生はいつもこれでピッキングされるんですか?」姫様は聞く。
「そうですね、駆け出しの頃からずっと使ってます。」そう言うと
「俄然やる気が出てきました!」フンスと鼻息荒く意気込んでいる。
姫様は鍵穴にピッキングツールを差し込む
「先ずは右のボタンね。」カチッと音がする。
「次は左の引っ掛かりを下から上に…と。」カシャッと音がする。
「最後は奥の凹みを押し込むと…。」カチリと罠解除の音がする。
「お見事!見事な手際でした!さぁ宝箱を開けてください。」
「私が開けていいのですか?」姫様は聞く。
「勿論です。姫様が姫様ご自身で開錠した宝箱です。
他の誰に開ける権利がありましょうか?」私は言った。
ギィィ姫様は宝箱を開ける。
「わぁ!」姫様は真剣な表情から一転してパァッと顔を明るくする。
少量の宝石とアクセ系マジックアイテムが入っているGランクだけどね。
「姫様初の戦利品ですね、どうぞ姫様がお持ちになってください。」
私がそう言うと姫様は私に抱きついてきた。
「先生!ありがとうございます!」私は一瞬焦ったが直ぐに冷静さを取り戻す。
恐らく今まで与えられた物ばかりで
自らの手で何かを勝ち取って得たという経験は初めてなのではないだろうか?
感極まってしまったのだろう。
私は恐れ多くも、そのまま姫様の髪を撫で
「よくできましたね、姫様はとても優秀です。」
そう言うと背中に回っている姫様の手に
一層ぎゅっと強く力が入ったのを感じた。
「あらあら、まぁまぁ♪」と後ろでクラリサさんが呟く
姫様の肩に手を置き、優しく引き離すと
「それでは続き行きましょうか。」と私がいうと
「はい!」とまだ顔を赤らめたままの姫様が返事をした。
その日はそのまま罠解除も鍵開けも順調に事が運び
姫様も初めてにしては、かなり上達なされたと思う。
「そろそろ外は夕方と思います。帰還しましょう。」クラリサさんが言う。
「えー!調子出てきたのに!」姫様は腕組みをして、ふくれっ面だ。
「姫様、今日は初日です。これからも繰り返しこれが続きます。
姫様が飽きた!つまらない!と言っても続きますから
今日はクラリサさんの言われる通り、この辺りにしましょう。」
私が言うと。
「分かりました!明日からも一緒にダンジョンに来れるのですね!」
興奮気味に姫様は言う。
「そうですよ、ですから本日はこの辺りで戻りましょう
お父上も心配為されていると思いますよ?」私が言うと
「それもそうね!先生今日は有難う御座いました!
また明日からもお願いします!」姫様は元気いっぱいにお辞儀をしながら言う。
「はい、こちらこそをよろしくお願いします姫様。」同じくお辞儀をする。
「それでは帰還のスクロールを使います。
姫様も、アリシアさんも私に触れてください。」クラリサさんが言う。
2人してクラリサさんに触れる。
クラリサさんのバックパックから出されたスクロールで
3人とも王城に帰還した。
王様への報告だ。私は緊張するので遠慮しておいた。
玉座の前で待機している。
姫様とクラリサさんは玉座の間へ赴き
外まで丸聞こえで姫様は興奮した様子で本日の
行動を王様に熱く語っていた。途中で王様の笑い声も聞こえてくる。
一時間ほどしただろうか。
2人は玉座の間から出てきた。
「ご報告は終わりましたか?」私が問うと
「もっちろん!」姫様が返す。
「聞いて下さいアリシアさん、王様がSSRランクの器用さ指輪を
付けなさいと姫様に言ったのですが、姫様お断りされたんですよ
先生からお借りした指輪でないと嫌だ!と言われていまして、ふふふ」
クラリサさんは言う。
「ちょっとクラリサ!先生に何言ってんの!!」
姫様は顔を紅潮させクラリサさんに食って掛かっている。
「大丈夫ですよ姫様、ちゃんと私にも聞こえてましたから。」
大声で報告しているから聞こえちゃったんだよね。
「そ…そうなのですね…まだお借りしていてもいいでしょうか?」
鹽らしく姫様は聞いてくる
「勿論、お気に召しましたら差し上げても宜しいですよ?」
私がそう言うと姫様は喜びつつ顔を赤らめ少し考えて
「先生にSSRランクの指輪を贈ります!」と申し出てきた。
「いえいえ、それは流石に。」私は苦笑いして辞退すると
姫様は残念そうにする。
それでは本日はこれにて、また明日に備え皆さん体を休めてくださいね。
「それではお疲れ様でした。」
「お疲れさまでした!」「お疲れ様でした♪」
三人は互いに挨拶をすると各々の部屋へ戻る。
私と姫様は途中まで同じ方向だ。
2人して横並びで歩く。
私は一歩下がって歩いていたのだけれど
姫様が並んでくる。
部屋の分かれ道へ来ると
「先生!また明日もよろしくお願いします!」
姫様はとびっきりの笑顔をした後
ぺこりと頭を下げると部屋の方へ戻って行かれた。
一時はどうなる事かと思ったけど、楽しくやっていけそう。
私も部屋へ戻った。




