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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編ホラー

ベランダ

作者: 壱原 一

突然、恐れ入りますが、お宅様のベランダに、日ごと、朝から晩に掛け、ほっそりした小さなお□様が、座ってお出でですね。


硬く空ろな鋼の柵と、黄変したポリカーボネートの塀、それらの合間に開いている、掌ほどの隙間から、コンクリートの床に座る、こちら向きの山折りの両脚が、両腕にぎゅっと抱えられ、ちんまり並んでいる様が、日ごと、お宅様のベランダに見受けられ、どうにも気になっております。


余所のお宅様のベランダに、差し出がましく恐縮ですが、いかなる季節や天気でも、姿勢を楽に崩しやせず、開けてと窓を叩きもせず、お利口さんに、行儀よく、ずっと座ってお出でなので、どうにも気になってしまって、こうして伺った次第です。


いつも、この位の時分は、お勤めに出てらっしゃるのですか。


度々、伺ってまいりましたが、今日、初めてお目に掛かれ、こうして、お声を掛けられて、大変、ほっとしております。


もし、ご気分を害されたら、本当に、心苦しいのですが、お宅様のベランダに、座ってお出でのお□様を、お家へ入れてあげる事は、お出来になりませんでしょうか。


これから外で過ごすには、厳しい季節になりますし、ずっとお利口に、行儀よく、座っていられるお□様ですから、お家へ入れてあげたって、そう、大層なご面倒は、掛からないかと思うのです。


もちろん、お宅様にも、色々ご事情はあるでしょう。けれど、日ごと、お宅様のベランダに、ほっそりした小さなお□様が、ちんまり座っている様を、柵と塀の合間から、そっと、見守っておりますと、何ともいじらしく、可哀そうに思われて、差し出がましく存じつつ、居ても立ってもいられずに、こうして、伺っております。


こんな時分、余所のお宅様のベランダに、突然、恐れ入りますが、どうか、ほら、其処の、お足元に、座ってお出でのお□様を、お家へ入れてあげてください。


ずっと、良い子にしてるのにね。いつまでもお外じゃ、寂しいよね。


お宅様にお□様は居られない?


警察をお呼びになるって?


何とまあ、この期に及んで…それはちょっと余りにも、話がお分かりでないのでは。


こちら、申し上げました通り、初めてお目に掛かりますが、今までいかなる季節や天気でも、日ごと、朝から晩に掛けて、お宅様のベランダのお□様を、見守っておりましたものですよ。


警察?ははは…


あ。待って、お話がまだ…


ああ、でも、よろしいでしょう。


さ、そら、今の隙に。


入っておしまいなさい。



終.

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