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3話 赤髪のレックス

 



 ――キーンコーンカーンコーン


 授業が終わるチャイムが鳴った。


 初めての授業は、終始隣の席のシルヴァに気を取られてしまって、授業の内容は何も頭に入ってこなかったが問題はない。

 この世界の歴史のテストなら、百点満点は確実に取れる自信がある。


 どうして、好きなゲームの歴史は覚えようとしていなくても覚えられるのに、現実の歴史だと点数が悪いのか、ボクは不思議でならなかった。


 授業が終わると同時に、ボクに話しかけてきたのは意外な人物だった。


 燃えるような赤い髪に、ルビーのような瞳。明るくて活発な主人公といった風貌の彼は、二人目の攻略対象のレックス・フローレンスだ。


「よう! 入学式に一日間に合わなかっただけで、編入生扱いだなんて災難だったな!」


「うん。貴族の人が多い学校なんて、ドキドキしちゃってたけど、意外と気さくな人が多くて良かったよ」


 ボクがそう答えると、レックスは少し困ったような表情でポリポリと頬をかいた。


「あー、お前ってさ。そんなに名のある家紋……じゃなさそうだよな。だから、王子に向かってあんな命知らずなことが出来たのか……」


「何をブツブツ言ってるの?」


「いや、お前の隣の人が誰だか分かってるのか?」


「シルヴァだろ?」


 聞かれている意味が分からなくて、ボクはそのままシルヴァの名前を答えると、レックスは呆れたように頭を抱えながら唸り出す。


「あぁ……呼び捨てかよ……。あのなぁ、あの人はこの国の王子様なんだぞ! 本来、俺らみたいな奴が話せるような人じゃないし、いきなり呼び捨てとか握手とか、本当にお前はとんでもない奴だな」


 そうか。

 中身が日本人のボクにとっては、ただの握手だったけど、この国の人達にとっては相当命知らずな行動に見えていたのか。


 きょとん、と驚いた表情でボクを見つめていたシルヴァの顔を思い出す。あれは初めての反応に戸惑っていたのか……。

 元々いた世界とは常識が違うんだって、もっと意識しなくちゃ駄目だったな。ボクはシルヴァが寛大であったことに心から感謝した。


「そう言われてみれば、そうかも。同じクラスの隣の席ってだけで、なんかただのクラスメイトとして見ちゃっていたみたい」


「お前、大物だな……」


「……っていうか、お前じゃなくて、リーリオ! ちゃんと名前で呼んでよ!」


 ボクの抗議に、レックスは悪かった、と片手で謝るジェスチャーをしてみせた。


「悪い悪い! そういえば、俺も名乗ってなかったよな。俺はレックス・フローレンス。レックスでいいぜ、リーリオ」


「うん。宜しくね、レックス」


 レックスと軽く握手を交わして、他愛のない会話から、この国の常識なんかを教えて貰っていたら、あっという間に休み時間が終わってしまった。


「お、もう次の授業か。リーリオは昼飯はどうするんだ?」


「うーん。まずは食堂を見に行ってみたいから、食堂に行こうかな」


「よし! 俺が案内してやるよ!」


「いいの? ありがとう!」


「っていっても、俺も昨日入学したばっかなんだけどな!」


 あはは、と声を上げて笑っていると、いつの間にか入ってきた先生に丸めた資料でポコンと頭を叩かれた。


「こら、いつまで話しているつもりですか。授業を始めますよ」


 勢いよく声のした方を振り返ってみると、その先生はボクもよく知っている姿をしていた。

 腰まで伸びた紺色の長い髪を後ろで一つに束ねており、くるっと踵をかえすとサラサラとした髪がシャンプーのCMのようになびいていた。




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