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私は最強

「それじゃ、寝ましょうね」


そう言って私はベットの上に置かれる。

そして、私以外のみんなは部屋から出ていく。

赤子ということもあり、スヤーと寝る……はずがなかった。


前にも言ったが私は世界最強レベルになる。

当たり前だが、赤子の今の時点でも私は化け物クラスの実力を誇っている。

当然、各国はこんな化け物がいると分かっているのであれば、まだ幼くて力をそこまで持っていないうちに処分しておきたいと思っている。なので私は赤子のころから暗殺者に命を狙われるのだ。


「なん……うぐぅ」


外で私の部屋の見張りをしていた騎士がやられる声がする。

そら、おいでなさったようだ。


キィー。

扉が開く音がする。

足音を立てずに相手は侵入してくる。

そして、私の方を見て驚いたような表情を見せる。


そりゃあ、そうだろう。

赤子が胡坐をかいてベットの上で自分の方を見ているのだから。

それもすべてを見透かしたような視線を送りながら、だ。

これは私が勝手にやっているわけではなく原作にあったシーンだ。


「なっ、貴様、偽物か!」


そう言って相手は戦闘態勢になる。

そして、短い短剣を持ち私の方に投げつける。

何から何まで原作通りだなぁ。

改めてここが『どこいせ』の中であると認識する。


「錬成」


その瞬間、投げつけられた短剣は私の直前でただの金属の塊に変わる。

そう、これがワイズル・クルーゼの能力。

『金属錬成』だ。

既存の金属の形を変形させたり、新たな金属を作ることも可能だ。


この世界には魔術と呼ばれるものがある。

魔術は、魔力に流し込むことによって非科学的な現象を起こす技術だ。

では、術式さえ覚えれば誰だって発動できるのか?と言われるとそうではない。

教科によって得意不得意があるように、属性が人によって得意不得意があるのだ。

だから、人が使えるのはその系統の魔術だけだ。それは私も同じだ。


ワイズル・クルーゼならば『金属錬成』がメインになるということだ。

他には金属の性質を変える『性質変化』や体を金属のように固くする『金剛』などが使える。


様々な理論があるそうだが、ワイズル・クルーゼは想像して魔力を使えば魔術を発動できる。

つまり、術式を使う工程を省くことができるのだ。

私の脳みそでもきちんとイメージして発動できるか不安だったが、どうやらうまくいったようだ。



「な、な」


相手は驚いている。

そりゃあ、そうだろう。


先ほども言ったが本来魔術は厳密な理論で構成されている。

それ故に、その理論を理解できるような年、つまりある程度発達してからでないと本来魔術は使えないのだ。

にもかかわらず、生まれたばかりの赤子がその魔術を使っているのだ。

驚くのも無理はないだろう。


だが、さすがは一流の暗殺者。

すぐに気持ちを切り変えたのか、冷静な顔つきに戻る。

そして、私相手に金属系の武器は無理だと判断したのか直接殴りに来る。


「馬鹿が」


私は先ほど金属の塊に変えた金属を再構築して長い剣に変える。

相手はすでに射程の中に来ていたので、ぶすりとその剣は相手の体を貫く。


「ごはっ」


相手は血を吐く。

だが、まだその眼には意思がある。

そして、剣が突き刺さったまま、こちらのほうに歩いてくる。


「錬成」


剣が花のようにブワッと広がる。

当然、彼の体の中で突き刺さっていた金属が広がり、一気に血があふれだす。


「ごはっ、ごへっ」


相手は先ほどまでとは段違いの量の血を流しその場に倒れこみ、動くのをやめる。

そして相手が死亡したことをしっかり確認した俺はベットの上にの転がり寝始める。

ちゃんとストーリー道理にふるまえたので我ながら満足である。

それにしても、両親は息子が襲われていることに全く気が付かないんだな。

確か、この部屋は外部の音が入らないように防音性になっていたから仕方ないとはいえ、外で騎士が倒れた音には全く気が付かないのはいささかどうかとも思う。


まぁ、そんなことを考えても仕方がない。

ひとまず、寝よう。

赤子なので、たまらなく眠いのだ。

ストーリーではこの後に襲われる展開はなかったはずだ。

私はひとまず、眠りにつく。


しばらくして周りがうるさくなっていたので目を覚ます。

周りには私の両親がいた。


「まぁ、どういうこと。なんで、人が血まみれで倒れているの?」


「落ち着きなさい。ひとまずは、この子が無事でよかったじゃないか」


「そうね。あなた、こんなショッキングな様子をこの子が見る前にこの人を片付けましょう」


「そうだな。おい、こいつをうちの息子が見る前に片づけておいてくれ」


父親は部下に命じ暗殺者の死体を片付けさせる。

やれやれ、息子はもう見たているんだがな。

そんなことを思いつつ私は寝たふりを続ける。




時は経ち、私は8歳になった。

あれからも様々な敵が来た。

だが、両親が私の身の回りの警戒を強めてくれたおかげで襲われることはなかった。


ちなみに、私、ワイズル・クルーゼは王族だったりする。

父親がこの国、マジカル王国の王を務めているのだ。

そしてワイズル・クルーゼは王位継承権第一位の王子様である。

それゆえに他国だけでなく自国の他派閥からも命を狙われることがある。


「さて、今日はお前の魔術がどれほどのものなのかを見せてもらおう」


父が私に言った。

この国では術式をある程度理解できる年、8歳になったら魔術の素養があるのかどうかを調べるのである。


そして、今日がその日なのだ。

原作でもあったこの回はワイズル・クルーゼの実力を示す回である。

ちゃんと、演じなければならないだろう。


私達は広々とした庭に出る。

そして、父は一冊の分厚い魔導書を私に渡す。

その魔導書の題名には『初級魔術一覧』と書かれている。


確か、この本にはすべての魔術の初級魔法がのっているんだっけ。

そして、これらすべてを試してどれを発動できるのかを見るということだ。

原作では……


「父上、俺は自分の適性をすでに分かっています。すべてを試すのは時間の無駄でしょうし、その適正のものを発動するだけではだめでしょうか?」


「おお、すでに分かっているとな。ちなみに大まかな適正はなんだ?」


「『金属錬成』です」


「ふむ、『金属錬成』か。おい、使って見せてくれ」


父はどれぐらいが平均なのかを知るために従者に声をかける。

後ろに控えていた従者の一人が出てきて、手を構えて一番簡単な術式を唱える。


『金属錬成』


魔力を術式に流し込んでいるのだろう。

金属が実際に出来上がるまでに数秒のタイムラグが発生する。

そして、実際にドッチボールぐらいの金属が出来上がり、地面に落ちる。


かれもかわいそうだな。

彼は私のすごさを見せるための嚙ませに過ぎない。


「ふむ、これぐらいが普通なのか。下がってよい。次に我が息子よ、実際に発動してみてくれ」


そう言われたので、従者は下がり、私は前に出る。そして、手を構える。


『生成』


そういうとタイムラグなしで目の前に金属が現れる。

ワイズル・クルーゼのすごいところは魔術の発動速度ではなく、その魔力総量だ。


ただでさえ、王族は魔力総量が多い。

その中でもワイズル・クルーゼは歴代で一番魔力総量が多いのだ。

そんな私が発動したのだから、どうなるかは想像にたやすいだろう。


「お、おお。何という大きさだ……」


父は驚いている。まぁ、無理もない。

自分の息子が王宮を覆うほどの金属を一瞬で生成したのだから。


だが、わたしはまだ子供。

成長とともに魔力量は増えていくので、将来的な魔力総量はいまの比ではない。

そのことをわかっているのだろうか?


「も、もうこの金属をなくしてくれてよいぞ」


父は王の威厳を保とうとしながら俺にそう命じる。

そういうが本来金属をしまうことなんてできない。

先ほどの従者が作り出した金属だって、規模こそ違うものの消すことはできないしね。


だが、別の金属をこの金属に与えることで酸素などに変えることは可能だ。

私は作り出した金属に別の金属を混ぜ合わせることで、すべての金属を酸素に変え、消し去る。


「さ、さすがわが息子だな」


父は俺にそういう。

おお、原作のまんまだ。

そして、ここで原作だと私は……


「何を言っているんですか、父上。俺であればこのぐらいのことは普通ですよ」


ここで普通の人であればデキナイが俺であれば普通にできるということで、圧倒的な自分の個としての実力を強調しているセリフなのだ。


「そ、そうか。優秀な息子を持ったものだ」


父親は顔を引きつらせながらそう言う。

優秀な息子を持っても苦労するものだなぁ。

私はそう思って父親を見ていたのだった。

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