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#82 ゾヘドさんエッッッッ!

「次は俺と相撲だからな、巫女!」

「はいはい」


 吠えるラトを適当にいなして土俵の傍に立つ。すると、私の衣装が変わった。巫女服が取っ払われ、紅色の廻しと黒い全身タイツが装着される。タイツは顔と二の腕から先、太腿から先が露出していた。

 相撲といえば裸に廻し――(ふんどし)の一種のみを着けるのが基本スタイルだ。だけど、女の子を公衆の面前でほぼスッポンポンにさせられる訳がない。明治五年までは女相撲でも上半身裸だったらしいけど、今は今だ。なので、このミニゲームの間は廻しの下に黒タイツを着る事になっている。


「ふっふっふ、良くぞ来た、二倉すのこ!」


 土俵を挟んで対面からゾヘドさんが姿を現す。彼女も私と同じ、廻しに全身タイツ姿だ。ただし廻しの色は赤系ではなく薄い青系だ。

 はあああああ!? ナイスバディの全身タイツ、エッッッッ! エッチ! エロいッ! センシティブ!


「オイオイオイ、すのこ大丈夫か?」

「あ……うん! だ、大丈夫……!」


 鼻血が出そうになるのをどうにか抑える。危ない危ない、試合が始まる前にノックアウトされる所だった。

 というか、これからゾヘドさんのこの肢体と触れ合うのか。何それヤバい。エッッッどころじゃない。不敬だ不敬。あー駄目駄目エッチ過ぎます! マズいなこれミニゲームの選択ミスだったかな……?


「へえ。ゾヘド達、勝負の三本目を相撲にしたんだ」

「……だね。すのこ、頑張って」


 ロンちゃんとルトちゃんが観戦に来てくれた。嬉しい。気合も一層入るというものだ。


「二倉すのこ。貴女、レベルは?」

「20レベルになりました」

「へえ、そりゃ奇遇だね。私も今20レベルなんだ」


 不敵に笑うゾヘドさん。そうだ、確かゾヘドさんは、


「筋力値極振りでしたね、貴女のプレイは」


 今や数少なくなってしまった極振り継続勢、それがゾヘドさんだった。

 20レベルまで上げて手に入れたパラメーターポイントを全て筋力値に注ぎ込んだプレイヤー。私の知る限り、未だ筋力値で極振りを続けているのはゾヘドさんしかいない。まさに最強ならぬ最()の人間だ。


「成程ね。つまりこの戦いは……」

「……うん。この『旧支配者のシンフォニア』での人類最速と人類最剛(さいごう)の対決になるね」


 ロンちゃんとルトちゃんが私達を見てそう語る。人類最速なんて私には不釣り合いだけど、確かに私以上のレベルで敏捷値極振りを続けている人は知らない。だったら、その二つ名に恥じない戦いをしよう。

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