表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/123

#78 ホーンテッドハウス・シューティングゲーム

 瞼を開けた時に見えたのは、古びた洋館だった。

 築何十年――否、様式の古風さからして既に何百年は経っていそうだ。崩れかけた壁には蔦が茂り、新たなオブジェと化している。窓ガラスはひび割れていて、屋内は吹き曝しになっているだろう。明らかに人が住んでいないと確信させる寂れっぷりだ。

 下に視線を向ければ、私達が乗っているトロッコとレールが見えた。あのレールに従ってステージの中を巡るシステムなのだろう。


「ていうか、これって……」


 空は真っ暗だ。時刻はまだ正午を過ぎた辺りの筈だけど、ここだけ夜だ。

 蝙蝠が夜空を飛び交い、梟の声が静かに響く。屋敷の窓には白い煙のような人影がこちらを見ていた。玄関の扉に設置された髑髏のオブジェがカタカタと嗤い、どこからともなく子供の笑い声が聞こえてくる。

 これって、お化け屋敷(ホーンテッドハウス)という奴では?


「……まあシューティングにお化けは定番か」


 某バイオ災害ゲームもゾンビがいっぱい出てくるし。あれは正確には死者(ゾンビ)じゃなくて生きた感染者だけど。

 ……あれ? でもゾヘドさんってホラーが苦手だった筈だけど。良いのかな、こんなステージに連れて来ちゃって。

 そう思ってゾヘドさんに目を向けると、案の定、彼女は大慌てだった。


「ちょっと待って待って待ってちょっと待って。私、知らない。こんな場所があるなんて知らない。打ち合わせにはなかったよ、こんなの! ちょっとマナ様! ねえ、聞いてない!」


 説明を求めてマナちゃんの名前を叫ぶ。姿はここになくともこちらをモニタリングしているのだろう、虚空からマナちゃんの返答があった。


『言ってない! その反応が見たくて黙っていた!』

「マナ様ぁあああああっ!?」


 ゾヘドさんの愕然が響き渡る。やっぱり何も知らされていなかったようだ。ゾヘドさんには可哀想だけど、同時にマナちゃんはグッジョブだ。ゾヘドさんは本当に良い悲鳴を聞かせてくれる。


『はい、それじゃあゲームスタート!』

「あああああマナ様待って帰らせてああああああああああ!」


 ゾヘドさんの懇願も虚しくトロッコは動き出した。亡者溢るる廃洋館へと無慈悲に近付いていく。

 ……彼女には悪いけど、これはチャンスだ。彼女が怯えている内に(エネミー)を倒しまくって得点を稼がなくては。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ