#6 こういうので極振りは最早嗜みだよね
「パラメーターはどうする?」とマナちゃんは私に問うた。
このゲームにおいてパラメーターはレベル、体力、魔力、筋力値、生命値、精神値、敏捷値、器用値、幸運値の九種類がある。この内、レベルと体力と魔力以外のパラメーターはキャラ作成時とレベルアップ時に与えられるポイントを振る事で数値を上げられる。
「精神値って?」
「魔術の威力やレベルアップ時の魔力の上昇具合を決めるパラメーターだよ。他のゲームで言う所の知性値みたいなのと思って貰えれば良いかな」
「成程……」
この世界では知力ではなく精神力が魔法の優劣を左右するのか。確かに知性999でありながらお馬鹿な行動するRPGのキャラクターとかに「何やねんお前」って思った事、何度かあるしな。精神力の方がまだ説得力があるかな。
いずれにしてもプレイヤーである私の知性も精神力も影響しないのだけど。
「あの……極振りってネタになると思いますか?」
おずおずと手を上げてマナちゃんに問う。
極振り。それはプレイヤーがパラメーターの数値を自分で振り分けられるゲームの場合に、一つのパラメーターにポイントを全部注ぎ込むスタイルの事だ。これによってPCはかなりピーキーな性能になり、普通のプレイでは味わえない面白さが生まれる。その分、扱いはかなり難しくなるのだけれど。
「ほーん、すのこちゃんも極振り勢? なるにはなるけど、ネタ被りはするかな。もう既に幸運値極振りとか器用値極振りとかいるし」
「そ、そうですか……」
ネタ被りしちゃってるかあ。皆、考える事は同じなんだな。いやでも、だからといって薄味のキャラを作っても刺激が足りないしなあ。どうせやるんならインパクトが欲しい。
「じゃあ、その、敏捷値にポイント全部でお願いします!」
「すのこちゃんも好き者だねぇ。止めないけど。そういう一見お馬鹿な……ゲフンゲフン。思い切った事する人、好きだし。けれど、それでも弓使いで敏捷値極振りってのはなかなか見ない組み合わせだねぇ」
普通はナイフ使いとか二刀流とか盗賊とかが敏捷値を求めるものだと思うけど、とマナちゃんが零す。私もそう思います。でも良いんです。弓でやりたい事があるのだから。
「はい、これがステータス画面ね」
そう言ってマナちゃんがどこからともなく取り出したのは一冊の本だった。
取扱説明書を読んだので知っている。この本の名前は『冒険者教典』――マナちゃんの言った通り、所有者のステータス画面を表示するアイテムだ。スキルの習得やアイテムの収納やプレイヤー同士の通話など他の機能も備わっている。
教典が宙に浮かび、ページが開かれる。表示されたのは私のパラメーターだ。