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#16 逆転

「M?」

「ブッ殺す!」


 マイが吠え、次の瞬間には剣を振るっていた。剣が筋肉男の顔面を殴打する。文字通り面食らった筋肉男だが、しかしすぐに気を取り直して拳撃を返した。槍をマイに捕らえられている為、拳しかないからだ。槍を捨てれば両手が空くが、その発想は筋肉男にはなかった。

 マイと筋肉男が幾度も殴り合う。肉を叩く音が響き、しばし私もラトも戦いの手を止めて彼女達を注視してしまう。


「オレはな、すのこから『このゲームを一緒にやろう』って言われた時に決めたんだ。『こいつは妙な所で無茶する奴だから、オレはこいつを守る盾になろう』ってな」


 殴り合いの最中にマイが言う。


「だからオレは生命値に一番ポイントを振った。体力と防御力に一番影響するって聞いたこのパラメーターにな。根競べなら負けねえぞ!」


 そう言ってマイは更に殴り合いを加速させた。


 ……そうだったのか。私に付き合ってこのゲームを始めてくれただけじゃなくて、私を守ろうとしてくれていたなんて。配信の事だけじゃなく、そんな事まで。マイがそんなに私を気に掛けてくれていたなんて気付けなかった。知らなかった。


『――頑張れ』


 ふと視界の端に文字が見えた。チャット欄だ。送信者は知らない名前だった。恐らくはたまたま私の配信を見つけて来た人が送ってくれたのだろう。


『頑張れ。負けるな』

『人を傷付けて喜ぶ奴なんかに負けるな』


 チャットに送信されたコメントは三行。短い文章だ。だけど、その三行だけで充分だった。私が気合を入れるのには十二分過ぎた。

 マイの友誼にチャットからの応援。今、私が戦うのにそれ以上の理由は必要ない。


「貴方――ラトさんでしたっけ。さっき、『極振りする程の馬鹿じゃない』って言っていましたよね」

「あ? おう」


 ラトが私の態度の変化に僅かに戸惑いつつも頷く。


「その敏捷値極振りプレイヤーが今、貴方の目の前にいるんだ!」

「は? はぁあああああ!?」


 素っ頓狂な声を上げるラトに今度は私から急接近する。手の中の弓には既に矢を番えていた。

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