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のほほん見聞録  作者: ヒロっぴ
ドライバー派遣
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挨拶





出勤初日。




俺は約一時間かけて派遣先の会社へと向かった。




事務所に着くと、




『おはようございます!○○から来ました○○です。よろしくお願いします。』





と、元気に挨拶した。





『おー、元気いいなぁ!みんなも見習わないと。』




そう言って迎えてくれたのは、ちょっととっぽい感じのする30代半ばの社長だった。


その後、朝礼で紹介をしてもらい、仕事開始となった。




プラスチックゴミ回収は二人一組で行うらしく、コンビになる助手の人を紹介され、トラックに乗り込む。




クラッチやブレーキの感触を確かめ、ハザードランプのスイッチを確認する。



これは車種によってかなり違うから確認しておかないと戸惑うことになる。





回りのトラックが次々と出庫していく中、社長がドア越しに聞いてきた。



『大丈夫か?』




『はい。』





俺はMAXタイプの大型トラックやバスも運転してきたので、2トン車レベルではなんの不安もない。




クラッチが近すぎると慣れるまではエンストする可能性もあるが、そんなに極端に近くないのは確認済みだ。




『行ってきまーす!』





と挨拶すると、問題なく出庫する。




直接雇用している社員よりも高い金を払って派遣ドライバーを依頼しているのだから、まともに運転できないのでは、社長が怒るのも無理はない。



ただ、ここの社長の沸点が低いだけなのだ。




最初の発進でモタモタすると、『こいつはダメだ。』と決めつけてしまう。




そこをクリアすれば、なんということはない。




勿論、その後の運行に不備が無ければということだが、運転手としての経験だけは長いので、侮らずに取り組めば問題ないことは分かっていた。




ここの社長は、ハッキリと挨拶や受け答えが出来ない人間も嫌いなようなので、その辺も注意して取り組んで行った。




すると、朝元気に『おはようございます!』と挨拶して事務所に入ると、『腹立つな~。爽やかすぎて……』と笑いながら言われたりもした。




この会社の従業員はほとんどが定年退職したあとの高齢者だった。




そんな年上の人達を相手に、30代半ばの社長が怒鳴り飛ばす光景は、日常茶飯事のようで、社長から怒鳴られて出入り禁止になった派遣ドライバーの他にも、日々繰り返される異様な光景に耐えられずに、辞退するドライバーも多くて、派遣先の担当者も困っていたようだった。




しかし、シッカリとした挨拶と、確実な運転業務をこなしていれば、常に笑顔で接してくれる社長だったので、俺は働きにくいと感じることは無かった。





ただ、社員の人達と話をするうちに、定年退職後ということもあり、かなり賃金も安いようで、しかもここをやめさせられたら、他に中々行くところもないとのことで、日々のパワハラまがいの言動にも耐えるしかないとの事だった。




ハローワークに通っても中々再就職先が決まらずに困っていた人達が、この会社の面接を受けたら一発OKだったというのだから、そういう意味では助かっているのだろう。




話すうちに、高校の同級生と知り合いだと判明した同い年の社員もいたが、彼がここで働いているのが、不思議だった。




他の社員達と比べたらかなり若いので、探せばもっと待遇のいい会社があるのてはないかと、余計な心配をしてしまった程だ。



同じ仕事をしていても、派遣ドライバーの俺の方が遥かに給料はいいようだった。




とはいえ、当時の俺の日当は9000円程だったので、社員だといかに安いかがうかがえる。




半年ほど働いた時に、社員の忘年会に招待され、社長から直接雇用を勧められたが、他の社員から実情は聞いていたので、なんとなくごまかしながらやり過ごしていた。




正社員と、社長の父親である会長や秘書が集まる忘年会に、俺一人だけ派遣ドライバーとして参加したので、居心地が悪かったのはいうまでもない……



しかもビンゴで社員を差し置いて、景品をGETしてしまったのだから(笑)


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