派遣先は問題あり?
引越専門協同組合の運送会社では、日払いのアルバイト待遇だったので、月によって収入は大幅に前後した。
特に引越の仕事は月によって全く仕事量が違うため、引越だけをしていたら生活出来ないところだったが、俺はドライバー経験も豊富だったので、引越が無いときはスポットの配送をすることにより、なんとか食いつないでいるような状況だった。
しかし、配送部門の社員が増えてからは仕事にあぶれることも多くなり、転職先を探し始めた。
当時はまだそれほどメジャーではなかったが、ドライバー派遣の募集に目が止まり、新宿の一角にあるビルに面接に出向いた。
経歴と取得している免許から、トレーラー以外は何でも乗れるので、すぐに採用となった。
しかし、その時は多少の不安もあった。
新宿という場所柄もあり、面接を担当してくれた男性が、いわゆるいかついタイプであり、さらに顔に大きな傷があったので、その人には悪いが、『この会社大丈夫か?』という思いが頭をよぎる。
まあ、それは杞憂に終わるのだが、そんな感じで、ドライバー派遣の仕事をすることになったのである。
仕事の依頼は、登録したメールアドレスへの配信と、直接電話による案内と二通りあるとのことだったので、先ずは登録して仕事の依頼を待っていた。
最初に来たのは、電話による案内で、地方都市にある旅館に住み込みで、お客さんの送迎をするという業務だった。
バスの経験者ということで依頼がかかったのだが、住み込みということになると、その時住んでいたアパートをどうするかという問題もあり、保留にしているうちに人員が決まったらしく、次の依頼を待っていたら、今度は比較的近くの職場を紹介された。
パッカー車によるプラスチックゴミ回収との事だったが、担当者いわく『実は……一つ問題がありまして……』とのこと。
話を聞いてみると、その会社のワンマン社長はかなり強烈な人らしく、派遣された人間はことごとく怒鳴られて帰されるという状況が続いているという。
よくよく話を聞いてみると、登録している人は免許を持ってはいても経験が浅かったり、またトラック経験があっても、初めて乗る車だとクラッチの感覚や、シフトの位置も違うため、最初の発進で手間取り、『お前、本当に運転したことあんのか!』と、怒鳴られて帰されるらしかった。
『そんな感じの社長さんなんですが、大丈夫ですか?』
と、紹介してくれる担当者も不安な様子だったが、俺が昔勤めていた引越屋もそうだが、引越業界では、その都度その時の仕事にあったトラックを運転することが多い。
単身者の引越なら1トン車や2トン車が多いし、学生なんかだと軽トラックの事もある。
家族単位の引越なら四トン車を使ったり、補助車で3トン車を使ったりもするし、車両ごとにパワーゲート付きとかウイング車だったりとか、ほぼ毎日違う車に乗っていたため、クラッチのクセや車両感覚などもすぐにつかめたので、心配はしていなかった。
パッカー車に乗った事は無かったが、それは聞きながら操作を覚えるしかないので、あとは、元気に挨拶をしていれば、大丈夫だろうと思って、その仕事の依頼を受けることにしたのだ。
かくして、初めてのゴミ回収業務に突入していくことになったのである。
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