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のほほん見聞録  作者: ヒロっぴ
劇団○○時代
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世界一の寿司






日常的な仕事で、会長を自宅に送る前に寿司屋に行くことが多かった。




勿論、著名な方々との会食や、劇団のメイン俳優を連れての会食もあったが、会長自体が大の寿司好きで、一人で行くことも多かった。




当然回転寿司な訳がなく、普通の人では入るのもためらわれるような高級寿司店だ。




その中でも会長お気に入りの寿司店があり、足を運ぶ頻度も多かった。




その信頼ぶりは絶大で、某有名元総理の米寿か何かの演出を手掛けたらしく、その会場のホテルでは、そこの板前を呼んで腕前を奮わせていた。




その寿司屋に初めて連れていく俳優等には、




『ここの寿司は日本一だぞ。分かるか?日本一ってことは世界一だぞ。』



と力説していた。




また、江戸前寿司の腕はかんぴょう巻きで分かるといい、その味も絶賛していた。





俺はいつも聞き耳を立てて、フムフムと納得していた。




そんな俺は会長達を降ろした後、近くの100円ローソンで菓子パンを買い、車内で食べながら待つのが常だった。




勿論臭いの残るようなものは食べられないから、食べるパンも限られてくる。






ある時、寿司屋の前に車を停めて待っていると、会長が上機嫌で戻ってきた。




きっと何かいいことがあったのだろう。





子供のような人なので、ヘソを曲げると厄介だが、機嫌がいい時の笑顔は、可愛らしくも思える。



20歳以上も歳の離れた奥さんは、きっとこんな笑顔にも魅かれたのだろう。




戻ってきた会長は寿司折りをぶら下げていて、




『君、帰ったら奥さんと食べなさい。』




と、渡してくれた。





『いえ、僕は独身なので……』





『そうかそうか、まあいい。うまいぞ。』





『ありがとうございます。いただきます。』





俺は心の中でガッツポーズを取っていた。





食通の会長が世界一と太鼓判を押す高級寿司♪





会長を自宅へ送り届けた俺は、帰り際にコンビニに寄り、ビールを買っていそいそと帰宅した。




『あなた。お帰りなさい。先にお風呂にする?ご飯にする?それとも……わ・た・し・?』





なんていうシチュエーションを経験したことは無いが、基本的に俺は風呂が先だ。




楽しみは後に取っておくタイプでもある。





風呂に浸かりながらもよだれが出てくる。





風呂上がりの至福の一杯。



俺はまずビールをあおると、いそいそと折り詰めの蓋を開けた。





ごたいめーん♪






……全部かんぴょう巻きだった(泣)





俺の期待を返せ……





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