表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のほほん見聞録  作者: ヒロっぴ
劇団○○時代
85/136

子供じゃないんだから……






ここの会長さんは、長年芸能関係の仕事を牽引してきただけあって、とてもパワフル&アクティブな方だった。



なので、役員運転手の俺がいても、気が向くと、自分のベンツを運転して出勤したりもしていた。



その場合、帰りは劇団の女優や俳優、または政治家や著名な方達と飲みに行ったりすることも多く、自分で運転して帰れないので、昼間のうちに俺がベンツを運転してタワーマンションまで届けて、電車で戻る。というのも仕事のうちだった。




ただ、若い頃からずっとこの仕事を続けているだけあって、社会常識はあっても、一般常識の通じないようなところもあり、回りの人達は苦労しているようだった。



しかも、すでに70歳を越えているのに、子供のような所があり、だからこそ、演出や様々な面でプラスにはなっているのだろうが、周りで振り回される人間はたまったものではない。




秘書の方から、下らないことでクビになった方がたくさんいると聞いていたので、日々戦々恐々と過ごしていた。




とはいえ、本音は『早くクビにしてくれ!』だったが……




日々の仕事は、朝、港区の自宅まで迎えに行き、横浜の事務所まで送ったあとは、いつでも出られるように待機しているのが常だった。



いきなり秘書や総務から電話がかかってきて、『何時までにどこどこに行くそうなので、出発時間を教えてください。』と、連絡が入ったりするのだ。



週のうち半分以上が誰かと寿司屋に行くというパターンになっていた。



それ以外は、自宅に戻ることが多い。




ある時、待機していると夕方くらいに秘書から電話がかかってきた。




『先生(会長)、降りていきましたか?』




『いえ、来てませんけど。』




『えー?どこ行っちゃったんだろ?』





話を聞くと、ここ1週間何故だかヘソを曲げていて、秘書室の誰とも口をきいていないらしかった。



なので、その日の予定なども全く伝えられず、みんな困っているということだった。



運転手は総務部所属になるので、上司に確認してみても、予定は伝わっていないという。



当然である。




普段は秘書から総務部に予定が伝えられるのだから。




劇団事務所は会長の行方をめぐって大騒ぎになった。





朝は、俺が自宅から事務所まで送っているので、マイカーで帰るということはあり得ない。




黙って帰るとしたら、駅まで歩いて電車で帰るしかないのだ。




しかし、会長室から出たのを誰も見ていない。




騒然とする中、とある俳優の方が、玄関にある靴箱で会長に会ったという事が分かった。




帰ろうと思って靴を履き替えていると、会長が来て挨拶をしたが、歩いて出ていったというのだ。




そこでみんなが推察するには、どうやら会長室の裏口から出て、わざわざ地下へ降りてから、玄関へ行ったのではないかという結論に至った。



それなら秘書室を通らずに玄関へ行けるのだ。




『あきれた……。』





秘書室の人達は口を揃えてそう言っていた。




次に出たのは、





『子供じゃないんだから……』




だった(笑)




傍観者として聞くには面白いが、回りにいる人間は苦労しているのが良く分かる一件だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ