表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のほほん見聞録  作者: ヒロっぴ
劇団○○時代
84/136

お持ち帰り






他の二人の運転手がいなくなると、必然的に俺が会長付きの運転手をすることになった。




とはいえ、バスやトラックの運転経験は長いものの、役員運転手の仕事は初めてだ。



その為、最初のうちは外部の役員運転手専門の仕事をしている人(その会社の社長)から指導を受けることになった。




前述のように、運転手を雇ってもすぐにクビにするので、自社の運転手がいない間はそこに外注しているらしい。


その馴染みの会社の運転手(社長)が役員運転手のノウハウを教えてくれたのだ。




とはいえ、その人いわく、劇団○○の会長はかなり特殊な人で、通常の役員運転手の仕事とは異なるということだった。



『こんなに威張っている人は見たことがない』というような話を各方面から聞いているという。




通常の役員運転手は、降りていってドアの開け閉めも行うが、ここの会長はせっかちで、自分で勝手に乗り降りするので、ドアの開け閉めは必要ないということだった。




その代わり、仕事を終えて帰るときには、後部座席でビールを飲むので、常にコップを用意するように言われた。




専用の袋に入れて、後部座席の後ろに置いておけば、勝手に取り出して使うとのことだが、走行中の車で缶ビールをわざわざコップに注いで飲むということは、いくら高級車で揺れの少ないセンチュリーとはいえ、相当運転に気を使わなければならない。




また、演出家という仕事柄、後部座席で執筆していることも多く、やはり運転に気を使う。





そして、一番特殊なのは、会長が道マニアだということだ。




長年役員運転手をしているその外注の運転手(社長)よりも道に詳しいらしかった。




その為、どこどこを通れとか、こっちだと遠回りだとか、かなり注文が多いということだった。




また、せっかちなのと、若い頃からその業界のトップを走り続けてきたこともあり、時間を無駄にはしたくないらしく、到着が遅れることはもとより、早く着いても文句を言われる。




『こんなに(10分ほど)早く着くんだったら、その分事務所で仕事出来たのに。』




ということになるのだ。





それは何故か。





運転手に対して求めるのは、正確な時間だからだ。



『どこどこに○○時に着きたいんだけど、何時に出ればいい?』




と聞かれる訳だ。




渋滞などを考慮して出発時間を伝えなければならないが、遅れないためには10分位速く着いてしまうこともあるのだが、それが許せないらしい。




遅れたらもっと大変な事になるのだろうが…




運転手が長く居着かない理由の一つだ。





とはいえ、会社側がしばらくクビになりそうもないと判断したのか、上司からセンチュリーを持ち帰る許可が出た。




基本的な仕事は、朝会長の自宅がある港区のタワーマンションに迎えに行き、横浜の劇団事務所に送ることから始まる。




その為、横浜の事務所に出勤してからセンチュリーに乗って港区のタワーマンションに迎えに行っていたのだが、それでは大変だろうということで、センチュリーを持ち帰って直行直帰出来るように計らってくれたのだ。




上司が同行して、俺の地元の駅前にある立体駐車場を借り受けてくれた。




当初はそこにセンチュリーを停めて、自分の車で出向き、乗り換えてから出勤する予定だったが、それでは大変なので休みの日だけそこにはセンチュリーを停め、普段は自分の車をそこに停めて、センチュリーはアパートの駐車場に持ち帰ることにした。



かなりデカイ車なので、アパートの駐車場に停めるには切り返しが必要だったが、時間短縮にはなった。




当時の俺が住んでいたアパートは横浜とはいえ、『横浜のチベット』と揶揄されるほど郊外だったので、超高級車のセンチュリーを停めるとかなり目立ったが仕方ない。




今思えば、写真にでも撮っておけば良かったと思う次第である。




.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ