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のほほん見聞録  作者: ヒロっぴ
市営バス時代
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福祉パス






市営パスの運転手をしていると、結構種々な福祉パスを目にする。


お年寄りの持つ敬老パスや、母子家庭の人が持つ福祉パス。後は障害者の方が持つ障害者パスなど、様々な形態のパスを目にする。



中でも良く目にするのが、障害者パスであり、身体障害者の方よりも精神薄弱などの方の方が多かった。何故なら他のパスの方は通勤や通学などの往復で一日二回乗る方が多いが、精神薄弱の方の中でもバスマニアの方は一日中あちこちのバスを乗って歩いたりしているからだ。




また、軽い精神障害を持っている方でも、作業所などに通っている方は、往復で一日二回乗ることが多い。




そんな中、とあるバス停から毎日乗車し、おそらく作業所に通っているであろう若い女性がいた。




彼女はひっきりなしに体を動かし、誰それ構わず、『おはよー、おはよー、行ってきます、行ってきます……』または『こんにちは、こんにちは、今帰り、今帰り……』と、ひたすら繰り返していた。



彼女はバスを待っている間は、足踏みして頭を上下に揺すりながらその言葉を繰り返しているのだが、乗車すると何故か手すりを指でひたすら突つきながら言葉を発していた。




そんな彼女を目にした同僚達は『今日も元気に手すりの秘孔突いてたよ。』等と言っていた。



出勤時間の朝は、大体同じ時間なので、乗り合わせる人もほぼ同じだから、みんな慣れっこで、特に問題はないが、帰りは違う顔ぶれなので、あからさまに驚いた顔をしている人も見受けられた。





運転手は毎日違うダイヤに乗車するので、同じ時間帯の乗務が回ってくるのは数ヵ月に一度位になる。その為、帰りの時間帯に見かけない限りはしばらく会わないことになるのだ。




それでも一年以上見かけないと、『最近見ないけど、どうしたのかな?』と気にはなる。





俺もその女性を一年以上見かけなかったので、他の作業所かなんかに移ったか、病気が悪化して外出できなくなったのかな?と思っていた。




そんなある日、帰りの時間帯に駅のバスターミナルで客扱いをしていると、久しぶりにその女性が乗ってきた。




『あ、久しぶりだな。』





と思っていると、その女性はいつものように、乗車しても席には座らず、ひたすら手すりの秘孔を突いていた。



しかも以前乗せていた時よりもやたら元気に。





俺はチラッとミラーで確認しながら、『うわー、久々だと強烈……』等と思って、笑いをこらえていた。




その子の行動だけなら、我慢できたのだろうが、回りにいる他のお客さんが、必死に肩を震わせながら笑いをこらえてるのを目にしたら、我慢できずに軽く吹いてしまった。





なんで、人が笑いをこらえてるのって、あんなに可笑しいんだろう?





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