お茶漬け
路線バスの仕事は、一人一人出勤時間、休憩時間、退勤時間、それぞれが全て違っている。
その為、訪れる保険の外交員は、いつ来ても必ず誰かがいるために、結構頻繁に顔を出していた。
その中で、ほんわかした雰囲気の女性がいた。
どちらかというと美形の彼女は、知らないとクールなイメージもあるが、話してみると、ほんわかしているというか、抜けているというか、のんびりした感じの人だった。
ある時、休憩時間に同僚と三人で立ち話をしているとき、話の流れで彼女の旦那が浮気をしていたという話になった。
別に怒った風でもなく、
『参っちゃいましたよ~。』
と、のんびりとした口調で話していた。
俺達が、『そんなの許しちゃダメだよ、怒んなきゃ。』と言うと、
『でも~、もうしないって言うし~、旦那の話聞いてたら納得しちゃって~。』
『え?旦那なんだって?』
『お前だって分かるだろ?毎日お茶漬けばかり食べてたら、たまにはステーキ食いたくなるんだよ。って言うから~、それもそうかなって……。』
俺はズッコケそうになった。
『いや、それ逆だから!』
『逆~?』
『普通、言い訳するんなら、毎日旨いもん食ってたら、たまにはお茶漬け食べたくなる。って言うんだよ。○○ちゃん、お茶漬けって言われたんだよ。』
『え~、でも~、私ステーキじゃないし~、どっちかって言うとお茶漬けかなって……』
こんなんじゃきっと、また浮気されるだろうなと、他人事ながら心配になってしまったのであった。




