穴だらけ
当時高校生だった俺は、いつものように教室で友達と無駄話をしていた。
すると、なにやら教室の一角で盛り上がってるグループが。
その話の中心にいるのは、俺も仲の良い奴だった。
だから俺も、そいつの話に耳を傾けていた。
話の内容は、高層ビルの工事現場等から、過ってビスとかを落としたら、車のボンネット位は、簡単に貫通してしまう。
というような話だった。
『へえ~!そうなんだ!』
観衆の声につられて、奴の話は益々盛り上がっていく。
俺も『へー。』と思いながら聞いていた。
更に話は続く。
『だから、パチンコ玉なんか落としたら、人間の体なんか簡単に穴があいちゃうんだぞ!』
『うわ~、恐いなぁ~。』
『やっぱ、それだけ高いトコから落ちると、スピードも凄いからなんだろうね。』
『なんか前にテレビで見たけど、水でも凄いスピードで噴出させると、石でも切れるらしいよ。』
そんなギャラリーの声を聞いて、奴の話は更にエスカレート。
『だから、水を一滴落としただけでも、人間なんか、簡単に穴あいちゃうんだぞ。』
ギャラリー『へぇ~!』
その時、教室の片隅でそれとなく話を聞いていた奴がボソッと言った。
『…じゃあ…雨降ったら、人間穴だらけだ…』
ナイス!
ナイス突っ込み!
俺は心の中で拍手を送った。
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