おかしなカップル
それは、夜も遅くなり、乗降客も少ない路線を走っていた時のことだ。
とあるバス停に差し掛かると、暗闇の中にうごめく影が見えた。
近づいてみると二人の男女がバスを待っていた。
バス停に付けると、二十代前半に見えるそのカップルは乗り込んできた。
彼等は無言で誰もいない車内を進むと、一番後ろの席の真ん中に、二人揃って座った。
俺は二人が座るのを車内ミラーで確認すると、バスを発車させた。
時折ミラーで確認すると、二人は会話するでもなく、黙って二人そろって膝に手を置き、チョコンと座っていた。
『なんか変なカップルだな』
とは思ったものの、特に気にも止めず、バスを走らせていた。
しばらくして、車内ミラーに目をやった俺は、危うく吹き出しそうになった。
そのカップルは、先程同様車内後方ど真ん中の席に二人揃って腰掛け、膝に手を置いたまま黙って座っているのだが、その二人の鼻にはティッシュが詰められていた。
しかも、二人揃って同じ側の鼻の穴。
それでも、普通に
『鼻血出ちゃったよ~』
とか言っていれば、さしておかしくもないのだが……
二人揃って鼻に詰め物したまま、ジッとしてるのが妙におかしくて。
『見ちゃダメだ。見たら笑っちゃう。』
そう自分に言い聞かせ、肩を震わせながら笑いをこらえていた。
そして暫くバスを走らせると、大分落ち着いてきたので、
『もう大丈夫だろう』
と思い、再び車内ミラーに目を移した。
すると、
今度は二人揃って鼻に詰め物をしたまま、顔を上げて天井を向いていたので、小さく吹いてしまった。
あれで、首をトントンしてたら、まさしくコントだ。
それにしても、彼らはなんだったんだろう?
未だに謎である。
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