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のほほん見聞録  作者: ヒロっぴ
市営バス時代
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お祓い?






長距離トラックの仕事を始めてから二年も過ぎた頃、夜の運行に支障が出てきた。


極端に視力が落ちてきたことと乱視が相まって、夜間の走行中、目がもたなくなってきたのだ。



特に雨の日などは本当に危なかった。



元々本を作る為の費用を稼ぐために始めた仕事であり、その意味も喪失していたことと、例のお祓いの件で親戚からも、事故が心配と言われていた事などもあり、約二年半勤めた運送会社を退職することにした。



その後また古巣に戻り、引越屋のアルバイトをしながら二年ほど過ごした頃、『ちゃんとした仕事をしよう』と思い、路線バスの仕事を探し始めた。



運転手仲間の情報によると、当時は地元の鉄道会社の路線バスが待遇面でも給料でもいいと聞いていたので、募集をしていないか確認したが、その時はしていなかった。



噂によるとその会社は一度試験に落ちたら、次は受けられないと言われていたので、だったら試しに市営バスの試験を受けてみようと思い、こちらは何度でも受けられると聞いていたので気軽に挑んだら受かってしまった。



地方公務員だし、これこそちゃんとした仕事だと思い、入局することにした。


入社日は数ヶ月先だったので、それまでは引き続き引越のアルバイトをして過ごしていた。




ただ気になるのは、お祓いの件。




人の命を預かる仕事をするのだから、スッキリさせたいとは思うが、有効な手段も無いまま、日々が過ぎていく。





ある時、何かを買おうと思って立ち寄った本屋で不思議な体験をした。




本棚にあった本が光って見えたので不思議に思って手に取り、パラパラとめくってみた。気が付くとその本を買い、店を出ていた。




自宅に向けて歩きながら、


『あれ?俺何買おうと思ってたんだっけ?』



と何か目的があって本屋に行ったことを思い出した。




しかし、その目的は今でも思い出せないのだ。




手にした本は『強運』というタイトルで、著者は深○東○という人だった。



聞いたこともない名前だ。



でも、そこに書かれていることは全て府に落ちた。



除霊についても書いてあり、単なる除霊では霊を祓うだけなので、祓われた霊はしばらくすると余計に恨みを募らせて帰ってくると書かれてあった。



それに対してその人が提唱する『救霊』というものは文字通り霊を救うものであり、霊に対して何で恨んでいるのか、恨みの根本はなんなのか、その原因までをも霊に諭して聞かせ、納得させた上で霊界に帰すのだと書かれていた。




そして、納得して霊界に帰った霊は、二度と戻って来ることはないという。




もしかしたら、この人は本物かもしれない。




そう思った俺は、その人の活動している所の資料を請求してみた。




届いた資料には多くの活動内容が紹介されていた。


福祉活動。芸術活動。経済活動。宗教活動。



どこに出しても恥ずかしくないような活動内容だった。



そして一際目を引いたのは、その人の姿だった。


多くの会員さん達と一緒に楽しそうに写真に写っている。



それがただ単に写真に写っているのでは無かった。



遠山の金さんだったり、月光仮面だったり、タイガーマスクだったりと『コスプレイヤーか!』と突っ込みを入れたくなるような姿で写っていたのだ。




俺はそれを見て『この人は本物だ!』と思った(笑)




霊能力者であり、宗教グループのリーダーという立場にありながら、威張ることなく、回りの方々と接している。しかもユーモアもある。



こういう人こそ本物なんだろうと言う確信が、なぜだかあったのだ。



会費も2500円と安いし、それらは団体の御殿や豪華な建物(そんなものは無い)などを建設する為に使われることなく、カンボジアなどの24時間緊急救急無料病院などの福祉活動や、芸術活動、教育、サミットなどに使われているという事だったので、とりあえず会員登録してから、後日その『救霊』というのを受けてみることにした。



その人本人は世界的に活動していて様々な公務があり忙しいため、お弟子の方が『救霊』をしてくれるということだった。


そのお玉串は、以前他の霊能者に見てもらっただけの時の料金や、お寺の祈祷料と同じ三万円だった。





それを電話で申し込んだ時に言われたのが『万障やり過ごしてお越しください』というようなものだった。



初めて受けるときは特に、邪魔が入るという事だった。



『救霊』を受けさせまいという力が働いて、その時間に間に合わなかったり、急な予定が入って行けなくなったり、事故にあったりなど、様々な可能性があるので、油断せずに注意してくださいということだった。




それを聞いて多少ビクビクしながらも用心深く日々を過ごして迎えた当日。



出掛けようとすると、長距離トラックの頃から飼っているインコのペケが巣箱から出てきていないことに気付いた。



心配になって巣箱を開けてみると、巣をかじっていたのか、ほつれた糸に絡まり、グッタリしていた。




俺は絡まった糸をほどいてやり、寝かしてやったが、元気がない。



今日は行くのを止めよう。



そう思ったとき、『万障やり過ごしてお越しください』という言葉が浮かび、『邪魔ってこういうことか!』と思った。




ペケは心配だったが、邪魔に屈してはいけないと思い直し、行くことにした。




救霊には二時間ほどの時間がかかり、お弟子の方が丁寧に取り次ぎをしてくれた。



テレビなどで見るそら恐ろしい除霊などとは違い、多くの和歌や呪などを駆使して霊を切々と諭していくもので、その内容に感動すら覚えた。




そして、終わったときはこれで大丈夫だという安心感があったので、バスの仕事をすることに対する不安は無くなった。




ただ、残念なのは、インコがそのまま亡くなってしまったことだ。




『身代わりになってくれたのかもしれませんね。』と言われ、全国を一緒に旅した仲間に『ありがとう』という思いで、弔ったのだった。




後日談。




市営バスの試験を受ける際に受けた視力検査では0.3まで落ちていたので、メガネを作ったのだが、いつの間にか1.5まで回復して、折角作ったメガネが不要になってしまったという嬉しい落ち(証)もついた。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 視力の悪化が「憑き物」による影響だとすると、いったい何がしたかったのだろう。 [一言] こればっかりは体験した本人でないと分からないなぁ。 でも日常の裏に「目に見えない世界」があると…
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