すすきの
その日、北海道で荷物を降ろし終わった俺は、同僚と一緒にすすきのへ遊びに行った。
北海道で荷物を降ろした日に帰り荷を積めることはまずなく、大体二泊して荷物を待つのが基本だった。
すすきのに着いた俺たちは旨いラーメンを求めて、歩いた。
観光客向けのラーメン横丁より、街中にあるラーメン屋の方が旨いのだ。
当時は川崎の南町のソープ街にいたポン引きが大挙してすすきのにやって来ていたため、歩いていると必ず声がかかる。
『お兄さん、お遊びの方はいかがですか?』
『まずは腹ごしらえしたいから、旨いラーメン屋教えてよ。』
すると、50メートルほど先のラーメン屋を教えてくれた。
『ありがとう。』
そう言って、そのラーメン屋に向かうと、また別のポン引きから声がかかる。
『お兄さんたち、お店は決まってますか?』
『決まってるよ。』
ポン引きは歩きながら声をかけてくるので、歩いてるうちに目当てのラーメン屋に近付いていた。
『どちらのお店ですか?』
ちょうどラーメン屋の前に来ていたので、その店を指差しながら言った。
『ラーメン!』
『えー?ザーメンはー?』
おどけた感じで残念そうにそう言うポン引きに、思わず笑いながら、
『ザーメンはいいよ。』
といった。
ラーメンを食べ終えて店を出ると、先ほどこの店を教えてくれたポン引きが待っていた。
『さぁ、食欲が満たされて、つぎは性欲ですね。』
と、揉み手で俺たちを案内しようとする。
『ごめん、実はさっき行ってきちゃったんだよね。』
『えー!そりゃないよー!』
彼らは、しつこく声をかけてくるし、無視して歩いていると怒り出したりと、慣れていないと厄介だが、美味しい店は知っているし、からかっていると面白いので、俺たちは嫌いじゃなかった。
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