フェリーの蚊
当時俺がいた会社では、関東からだと本州は翌日降ろし、九州や北海道だと翌翌日降ろしが定番だった。
とはいえ、下関までの翌日降ろしというのはかなりキツイ。
午後の早い時間に出られればまだいいが、夕方以降に出るとなると、朝イチ着だと寝ないで走らないと着かないのだ。
九州行きの荷物と一緒に、関西や山陰の荷物を積むと行程的にきつくなるが、九州だけだと神戸や大阪からフェリーに乗ることが許可されていた。
そうなると俄然楽になる。
なぜなら積んだ翌日の午後四時までに神戸港や大阪港へ行けばいい訳だから、途中でゆっくり寝られるし、フェリーに乗ってしまえば到着までの10時間は仲間たちと酒盛りが始まるのだ。
途中の荷物をかますのとかまさないのとでは、天国と地獄ほどの差があった。
運賃的にも九州の荷物を何件か積んだ方がいいのだ。
そんなフェリーで仲間と酒盛り後、船のデッキで海を見ながら涼んでいると、船から飛んでいったであろう蚊が、手の届きそうな所を飛んでいた。
やがて、その蚊は船に置いていかれて、海上に取り残される。
ポツリと仲間が行った。
『あいつ、一生飛びっぱなしだな。』
た、確かに!
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