泊まりの時
当時勤めていた長距離トラックの会社は、元々は○濃運輸の貸切事業部。
売り上げが大きくなった為独立させた、100%資本の子会社だった。
そのため、○濃運輸の各支店を拠点に間借りをして展開する形になっていたので、○濃運輸の支店に○濃エキスプレスの営業所があるような形になっていた。
それぞれがベースの拠点を定め、そこから全国に展開していく。
なので、ベースとなる拠点の他に、良く行く地域でも、帰り荷を積むためのサブ拠点のような支店があり、そこをベースに展開している人達とは頻繁に関わることになる。
俺が所属していた茅ヶ崎支店と北九州支店、苫小牧支店は、お互いに良く行く支店として関わっていた。
特に北九州支店の人とは密に関わっており、泊まりになった時などは、一緒に飲みに行ったり遊びに行ったりなどをするような関係になっていた。
俺が九州に行くときには、地元の人間が遊びに連れていってくれるし、逆に地方の人間がこちらに来た時には、俺が案内するような形になっていた。
当時、俺が案内する遊びで好評だったのが、横浜のストリップに行ってから、飲みに行くコースだった。
みんなまだ20代~30代のトラックドライバーだ。
スケベな遊びは大好きなのである。
中でも横浜の野毛にあったストリップ劇場は馴染みになり、中でもそこの劇場所属のAちゃんとは顔馴染みになっていた。
売り出し中のアイドル系ストリッパーだった。
ある時、一番仲の良かった北九州所属の友人と渋谷に飲みに行った時、たまたま通りがかった渋谷のストリップ劇場で、そのAちゃんが出演しているポスターを見かけ、『あ、Aちゃんじゃん。』と、時間的にも早かったこともあり、入ることになった。
さすがに渋谷の劇場。
すごく混雑していて、席が全て埋まっていたため、後ろの方で立ち見をする形になってしまった。
まぁ、仕方ない。
そして、メインのAちゃんの出番になり、後ろから見ていると、舞台の上から俺を見付けたAちゃんが、『あ!』と言って嬉しそうに手を降ってきた。
そのとたん、客席の男たちが一斉に振り返り、かなりばつの悪い思いをした。
それにしても、明るい舞台の上から、真っ暗な客席の俺をよく見付けたなと、冷や汗ものだった。
その後、渋谷センター街から少し外れたバーに行き、ボトルを入れた。
長距離トラックで全国を走る俺たちは、行く先々でボトルを入れる。
自分の名前ではなく、○濃エキスプレスの名前でボトルを入れ、仲間たちには『どこどこにボトル入れてあるから、行ったら飲んでいいよ。』というやり取りをしていた。
とはいえ、二度と行かない店も多く、どれだけのボトルを流してしまったことか。
ただ、そんなやり取りをして全国で飲み歩けるのも、長距離トラックの仕事ならではだなと、懐かしく思う。
.




