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はた迷惑
自費出版の為に新しい仕事を始め、その矢先に母親が倒れ、やがて亡くなり、悲しみに暮れながらも、日々を過ごしていくうちに、当初の目的はフェイドアウトしていくことになったが、折角書いた1800枚の原稿と、想いは諦めたとはいえ、せめてけじめはつけたいという思いから、当時の俺はとんでもない暴挙に出た。
初めて書いた原稿用紙1800枚もの大作(!?)
それを手元に残すことなく、彼女に郵送してしまったのだ。
今なら、『キモッ!』という言葉で表される感情で受け取り、即日ゴミ箱行きになったであろう迷惑な郵送物も、俺にとっては宝物だった。
その宝物を手放すことで、彼女に対するけじめをつけたのだ。
受け取った側の視点で見ると、はた迷惑な話だとは思うが、そう思えるのも30年ほどたった今だからこそだと思う。
若気の至りと言うか、若ハゲの至りと言うか……
誰が若ハゲじゃい!
と突っ込むことも出来ない古ハゲの自分にため息をつくのであった。
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