禁酒解除
俺は25歳の時に長距離トラックの仕事を始めた。
始めた当初は母親の入院等もあり、地場仕事しかしなかったが、26歳になる頃から長距離を走るようになった。
地方に行くと、到着日に荷物が積めることは少なく、九州なら一泊。北海道なら二泊して荷物を待つのが通例だった。
そして荷物を積み込むのは午後から夕方にかけてなので、泊まりの時は仲間内で飲みに行くことが多かった。
俺はこれがきっかけで酒を飲むようになった。
つまり26歳まで一滴も飲まなかったのだ。
青春時代に影響を受けた空手バカ一代の主人公である先生が、修行のために酒もタバコもやらないと言っていたのに触発されて、俺も生涯酒とタバコはやらないと思っていた。
しかし、内弟子になったときに、先生も付き合いで酒は飲むと知り、飲んでもいいかなと思い始めてはいたが、26歳のこの時まで、飲まなかったのだ。
当時一番仲の良かった男が元極道で、格闘技にも興味があることから意気投合し、飲み歩くようになった。
特に彼の地元の北九州の黒崎には良く飲みに行った。
そして、飲みに行くと、必ずすることがあった。
飲んだ瓶ビールの王冠を4つにちぎって遊んでいたのだ。いくつもの王冠をちぎってカウンターの上に置いておくと、みんな驚いていた。
また、酔った勢いで店にあったザボンを指で貫こうとして弾き飛ばしたりしていた。
そんな俺をその友達は、『こいつ、大山○○の元内弟子。』
と宣伝して回ったから、なんとなく噂になり、『そんなに強そうに見えないけど、喧嘩売ったらヤバい。』みたいな感じになっていたらしい。
ある時、その店に本物の空手家が飲みに来たらしく、その流れで俺の話になったという。
すると、その空手家は、『ふーん……俺、こんな事出来るけどね。』
と言って、指でガラスのコップを突くと、ポッカリと穴が空いたというのだ。
そんな人間に対抗意識持たれたら、怖くて飲みに行けやしない(・・;)))
俺がいないとこで話を広げるのは勘弁してほしいと、思うのだった。
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