次の職場
当時仲の良かった年下の同僚がいた。
彼と良く話していたのは、『いつまでも運転手のバイトじゃ駄目だよね』ということ。
『何か手に職着けたいよね。』
ということ。
世はバブル絶頂期。
景気のいい話しは、いくらでも転がっていた中、運送業界は完全に蚊帳の外だった。
後にバブルが崩壊してから、『え?世の中ってそんなに景気良かったの?』と知った位だ。
引越の繁忙期が終わって暇になり始めた頃、彼と二人で電気工事会社の面接に行った。
一人立ちするようになれば、かなり稼げると言う話を聞いたからだ。
面接先の会社は伸び盛りで、人手が欲しいらしく、いつからでも歓迎すると言ってくれた。
俺達は『よろしくお願いします。』と言って、その会社をあとにした。
『いつから行く?』とその同僚に聞くと、『おれ、やっぱやめとくわ。』
えー!
俺は二人で行く気満々だったのに……
さっき、『よろしくお願いします』って言ってたじゃん!
と、思いながらも、突っ込みはしなかった。
しかし、俺は人の良さそうな笑顔の社長に断ること等出来るわけもなく、後に一人で入社することになったのだった。
……一人は結構不安なんだよ……




