怪獣映画
○川急便での激動の四ヶ月間を終えた俺は、また引越業に専念することになった。
元々働いていた大手引越センターの支店長を勤めていた人が退職し、別の大手運送会社で引越部門を立ち上げることになったので、そこを手伝うことになった。
その会社では、現場での引越経験者はゼロに等しく、見切り発車的な感も拭えなかった。
引越屋というのは不思議なもので、名前の売れていない業者はあまり期待がされない。
なので、普通にやっていれば評価される。
大手であれば、求められるものも大きいから、10やるところを10やったのでは評価されない。
ところが、名も知れてないところだと、10やるところを8位やっただけでも、すごく評価される。
新しく始めたアルバイト達に指示を出しながら、問題なく作業を進めるだけでも喜んでもらえるのは新鮮だった。
そのアルバイトには、近くの大学の学生が仲間内で何人か来ていた。
彼らは飲み込みも早く、重い荷物を持つコツもつかんでくれたので、問題なく業務をこなすことができるようになっていった。
そんなある日、とある会社が廃業するにあたり、事務所の事務机等を廃棄処分するための作業が入ってきた。
荷物を搬出するビルでは壁や入り口などに傷を付けないための養生をし、トラックに運び入れる。
廃棄する机なので、トラックの中では毛布などを当てることもなく積み上げていく。
そして、産廃業者に到着すると、ゴミの山に投げ捨ててくれればいいということだったので、トラックをバックでつけると、荷台から放り投げる作業に入った。
アルバイトの大学生達は二人で机を持つと、『せーの!』と掛け声をかけてゴミの山に投げ捨てていった。
その横で俺は一人で机を抱えあげると、『おりゃ~!』とか、『にゃろー!』とか言いながら放り投げていく。
すると、隣にいた大学生が苦笑いしながら、
『なんか、……怪獣映画みたいっスね。』
というので、
『○○君だって一人で持てるだろ。』
と言うと、
『持てるっスけど、さすがに投げれないっスよ。』
と、怪獣を見るような目で言われてしまったのだった。
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