び、びびらせないでくれる?
配属当初は全く休憩も出来ないほど追い込まれていた俺も、慣れてくるにしたがい、昼食は取れるようになっていった。
が、それもつかの間。
繁忙期がいよいよ本格的になってくると、また休憩する余裕がなくなってきた。
配送業界は、9月~12月にかけてが繁忙期になる。
9月より10月。10月より11月。11月より12月と、年末が押し迫ってくるに従い、より忙しくなってくる。
当時の○川急便は企業がメインで宅配は少なかったが、それでも十数件は個人宅の配達もあった。
俺の担当コースは比較的エリアも広い上に、配達も集荷も異常に多かった。
なので、集荷が始まる前に配達が終わることは無かった。
配達しながらの集荷になる訳だ。
しかも、俺の担当車両は通常の○川急便の3トン車ではなく、2トン車なので、荷台も狭く、配達と集荷の荷物を完全に分けるのは至難の技だった。
集荷に関しては百数十件の定期集荷の他に、臨時の集荷依頼がかかる。
当時の○川急便では、その臨時集荷は車内に取り付けられたプリンターにより指示がされていた。
スーパーやコンビニなどのレシートを想像してもらえばわかるだろう。
あんな感じのサイズで集荷依頼や様々な指示がプリントアウトされるわけだ。
その日、俺は多くの宅配に悩まされていた。
ただでさえ忙しいのに、いつもより宅配件数が多かった。しかも日中だと留守宅が多い。
不在票を作りながら、他の配達や集荷に終われている中、臨時集荷の依頼レシートもどんどん出てくる。
もう気が狂いそうな忙しさだった。
そんな中、日も暮れて電柱や表札などの住所が見えにくい中、車を停めて宅配先を探して走り回っていると、結構時間がかかってしまった。
やっとの思いで配達先を見つけ、トラックに戻ってくると、運転席では集荷依頼のレシートがとぐろを巻いていた。
一体何件あるんだ!
あわてて確認すると、
1.
大田区大森東○丁目○番地○号 ○○製作所 集荷依頼
2.
大田区大森東○丁目○番地○号 ○○製作所 集荷 確認
3.
道が混んでいます。
安全運転でお願いします。
4.
大田区大森東○丁目○番地○号 ○○製作所 集荷 確認
5.
大田区大森東○丁目○番地○号 ○○製作所 集荷 確認
6.
大田区大森東○丁目○番地○号 ○○製作所 集荷 キャンセル
…………って、こんだけとぐろ巻いてたのに、プラマイゼロかーい!
と、突っ込みつつみも、
『あー、よかった』
と胸を撫で下ろして、トラックを発車させたのだった。




